松本幸四郎、初役で菅丞相「これ以上の幸せはない」 市川染五郎は「役者としてのスタートライン」と決意表明
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「秀山祭九月大歌舞伎」『菅原伝授手習鑑』取材会より 左から)市川染五郎、松本幸四郎
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すべて見る松竹創業130周年を記念し、歌舞伎座では今年、三大名作を一挙上演している。三大名作とは、人形浄瑠璃の作品として書かれ、後に歌舞伎に移された「義太夫狂言」と呼ばれる作品のなかでも屈指の人気を誇る3演目だ。大盛況のうちに幕を閉じた3月の『仮名手本忠臣蔵』に続き、9月には『菅原伝授手習鑑』、10月には『義経千本桜』と続き、記念の年を寿ぐ。
このたび、9月2日(火)開幕の「秀山祭九月大歌舞伎」で上演される『菅原伝授手習鑑』に出演する松本幸四郎、市川染五郎が取材会に出席し、作品や役に込める思いを語った。
同作は「学問の神様」として親しまれる菅原道真公(菅丞相)の悲劇を軸に、運命に翻弄される菅丞相を取り巻く人間模様がドラマチックに描かれる壮大な歴史絵巻。歌舞伎の様式美をたたえた、洗練された名作で、通し狂言としての上演は、「松竹創業120年」と銘打たれた平成27(2015)年の公演以来10年ぶりとなる。
Aプロ、Bプロの二通りの配役にて、世代を超えた豪華競演が実現。昼の部(Bプロ)では『筆法伝授』『道明寺』において、幸四郎が菅丞相を初役で勤める。
初世中村吉右衛門、七世松本幸四郎、初世松本白鸚もたびたび演じた縁ある役で、「祖父、叔父、父も受け継いできたお役。正直、自分が菅丞相を演じるとは思っていなかったのですごく驚いたが、これ以上の幸せはない。喜びでいっぱい」と率直な感想を語る。自身も次世代にバトンを渡す役割を果たすことになり「責任あるお役目だなと思う」と表情を引き締めた。
一方、染五郎は昼の部(Bプロ)『筆法伝授』、夜の部(Bプロ)『寺小屋』では武部源蔵を、そして夜の部(Aプロ)『車引』の梅王丸を、どちらも初役で勤めることに。
「身に余る大役。お話をうかがい、『嘘でしょ』とビックリしましたし、何かの間違いかと思いました」と振り返り、「今の自分を100%注ぎ込んで、精一杯をぶつけて勤めたい。自分の覚悟が、源蔵の覚悟に重なって見えればいいなと。台詞、動き、表情といった表面的なことはもちろん、しっかり心の部分の表現したい」と意気込んだ。

さらに「先人たちが磨き上げ、一切の無駄がそぎ落とされた作品。役者としてのスタートラインにきっちり立ちたい」と決意表明すると、幸四郎も「これが始まりになってほしい」と目を細めた。
また、染五郎は松王丸、桜丸に続き「これで三つ子コンプリート」と胸を張る場面も。

「僕は桜丸、やっていない」(幸四郎)、「すみません、父親より先に」(染五郎)と微笑ましいやり取りも繰り広げられた。
解禁されたビジュアルの撮影について問われると、幸四郎は「こしらえが素晴らしく、涙が止まらなかったですね。演じられる感動だけではなく、台詞を頭の中で言いながら写真を撮っていただいた。不思議な時間でしたね」と感無量の面持ち。

染五郎も「特に源蔵の撮影は、心臓がバクバクするくらい緊張し、背筋が伸びる感覚になりました。鬼になって、何を守り、何を犠牲にするのか。複雑な気持ちを、心まで感じられるような時間だった」と思いをはせた。
映画『国宝』が興収110億円を突破する大ヒットを記録しており、歌舞伎に対する注目度も急上昇中だ。幸四郎は「ドラマ、色彩、音楽、すべてがある。これぞ歌舞伎という演目なので、『国宝』で歌舞伎を知った方にも初めて見ていただくのに最適だと思います」とアピールしていた。

取材・文:内田涼
<公演情報>
松竹創業百三十周年
「秀山祭九月大歌舞伎」
【昼の部】11:00~
菅原伝授手習鑑
序 幕 加茂堤
二幕目 筆法伝授
三幕目 道明寺
【夜の部】16:30~
菅原伝授手習鑑
四幕目 車引
五幕目 賀の祝
六幕目 寺子屋
2025年9月2日(火)~24日(水) ※9日(火)、17日(水)休演
※昼の部:4日(木)、5日(金)、8日(月)、10日(水)、11日(木)、19日(金)貸切(幕見席は営業)
※昼の部:2日(火)、12日(金)、24日(水)は学校団体来観
会場:東京・歌舞伎座
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2528916
公式サイト:
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/937
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