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『モンゴル・ハーン』ウランバートル凱旋公演 観劇レポート

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(撮影・阿久津知宏)

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バブー・ルハグヴァスレンの戯曲『印章のない国家』(1998年)をスペクタクルに昇華させた舞台『モンゴル・ハーン』。2022年にモンゴルの首都ウランバートルで開幕するなり、大ヒット。ロンドン、シンガポールの観客も魅了した本作が、今秋ついに日本に上陸!

『モンゴル・ハーン』の凱旋公演が行われていたのは、TVドラマ『VIVANT』に“バルカ銀行”として登場したことでも知られている、モンゴルの首都ウランバートルにある1931年創設の老舗劇場、国立アカデミックドラマシアター(National Academic Drama Theatre)。

いにしえの帝国を舞台に、フィクションでありながら、モンゴルの起源であるフンヌ(匈奴)の歴史、伝説、文化をたっぷり内包した物語『モンゴル・ハーン』。 現代モンゴル演劇は、1921年の清からの独立以来、ロシア演劇の影響を受けてきました。その主流であるリアリズムを基本としながらも、本作ではギリシャ悲劇や、歌舞伎の時代物のようなたっぷりとしたせりふ回しも多用され、スケール感豊かな劇世界が構築されています。

50名を超えるダンサーによる身体表現を駆使して描かれる壮大な物語

登場人物の心情は、大勢のダンサーを使って拡大表現。この手法について、演出のヒーロー・バートルは、“モンゴル人は〈言葉〉より〈行動〉で自分を表現する傾向があるので、キャラクターの感情を目に見える形で表現したかった”と語っています。結果的に、動きの美しさや興味深さにとどまらず、(国を問わず)誰が見てもその人物の心情が分かりやすく伝わるという効果が生まれ、本作の普遍的な人気の理由の一つとなっています。

宰相、シャーマン(祈祷師)、ハーン(王)…。重要人物が姿を見せる度、オドバヤル・バトグトフによる音楽はがらりと趣を変え、民衆のフォーメーションも刻々と変化。99%はモンゴルの民俗舞踊をアレンジしたという振付は、鳥の羽ばたきや旋回などを思わせるプリミティブな動きが特徴的です。
とりわけ、ステージの端から端までを埋め尽くした彼らが、疾走感あふれる曲に乗り、いっせいに“乗馬”を模した動きを見せるくだりは壮観。かつてアイリッシュ・ダンスとケルト文化を一躍世界に知らしめた『リバーダンス』に匹敵する、伝統文化の底知れぬパワーに圧倒されます。

精緻な細工を施した舞台衣装、パペット

白鳥の首を思わせる細く優美な帽子や、羽根さながらのマントなど、精緻な細工を施した民族衣装が目を奪いますが、これらは実際、遺跡で発掘された匈奴の衣服を極力再現したもの。赤や金が基調の華やかな色合いや生地の重厚な質感は、遠目からも充分見て取れますが、オペラグラスを持参し、細部を観察する価値も大いにありそうです。

さらに、天の怒りが表現される2幕序盤には、ニック・バーンズ(『ライフ・オブ・パイ』)が手掛けた匈奴のシンボル、ドラゴンのパペットが登場。
終盤にはダイナミックな合戦シーンもあり、最後までスペクタクルとしての見応えは持続。
スペクタクルとしても、演劇としても見ごたえのある――そして何より、悠久の時を超えて鮮やかに現れる王国のドラマを通して、モンゴルの魅力に開眼できる作品です。

『モンゴル・ハーン』製作・演出 ヒーロー・バートル インタビュー

本作はモンゴルの著名な作家、バブー・ルハグヴァスレンが書いた戯曲(原題『印章の無い国家』)です。フィクションでありながら、モンゴルの起源であるフンヌ(匈奴)の歴史、伝説、文化をたっぷり内包した物語で、1998年に初演。その後も一度再演され、上演の度に高い評価を受けてきました。

モンゴルでは〈言葉〉よりも〈行動〉で自分を表現する傾向が、他の国より強いので、『モンゴル・ハーン』では芝居に加えて、ダンス、殺陣、パペットや映像、フライング演出など、様々な表現を駆使しています。特に、数十名のダンサーの身体表現を通して、メインキャラクターの心情を可視化する手法が新鮮だと好評をいただいています。

13世紀にモンゴルが(ユーラシア大陸を横断する)大帝国を築いたとき、日本は唯一、モンゴルが戦で勝てなかった国です。そのため、私たちモンゴル人のなかには常に、日本人とはどういう民族なのだろうという興味があります。
その(日本では元寇と言われる)出来事の際には、神風が吹いてモンゴル軍を撃退したと言われますが、それは日本人の信仰心のおかげなのか。もしかしたら、日頃の地道な努力によるものではないのか。今回、日本で本作を上演できることになり、皆さんのリアクションから私たちの日本理解もいっそう深まるのではないかと期待しています。

また、皆さんご存じの通り、日本の皆さんには私たちと同じ“蒙古斑”がありますよね。ということは私たちの起源はもとをたどれば、同じなのかもしれません。 モンゴルの起源と言われるフンヌの物語を観ながら、アジアの悠久の歴史、その文化の広がりについて思いを馳せていただければ幸いです。

『モンゴル・ハーン』主演女優/プロデューサー バイラ・ベラ インタビュー

私はロンドンで演技を学び、現地をベースに10年間、映画俳優として活動していました。数年前、モンゴルに一時帰国した際、ロンドンに戻る前日に観たのが、本作。それまで、ウランバートルでは演劇の最長公演は27日間だったのですが、この作品は口コミで芸術に関心のある層にどんどん広まり、千穐楽が何度も先延ばしになっていると話題でした(注・最終的には120日間のロングランを達成)。実際に観て、一緒に観た友人ともども、大変感銘を受けました。

私自身が本作を観てまず感じたのが、“シネマ的”であるということ。ヒーロー・バートルさんが主に映像分野で活躍していることが影響しているのか、とてもヴィジュアル的に作りこまれた舞台だと思います。
シェイクスピア劇的な演技をする俳優の周りでは、数十人ものアンサンブルが身体表現を行い、映像も効果的に使われます。古代遺跡の出土品をもとにした衣裳も目を奪いますし、小道具も精緻に作られています。フンヌの王国がどんな世界だったかが一目瞭然で、まるでこの舞台自体がミュージアムのようです。

日本の方々にも興味を持っていただける要素は多いのではないでしょうか。モンゴルらしさの溢れた音楽や民族舞踊も魅力的ですし、本作にはパペットも登場します。日本の伝統的なパペット“文楽”は世界的にも群を抜いた芸術だと思いますが、東洋と西洋のフュージョン的な本作のパペットにも注目いただければと思います。

草原ツアー レポート

現代にいたるまで営々と続く遊牧民の暮らしを知ることで、作品理解もより深まるかもしれない…という期待のもと、取材チームは『モンゴル・ハーン』鑑賞の翌日、国立アカデミックドラマシアター(National Academic Drama Theatre)のあるウランバートルから西へ55キロのトゥブ(中央)県アルドラーンにあるリゾート“モンゴル・ノマディック”へ向かいました。

ここでは、遊牧民たちが訪れる観光客に自らのライフスタイルを紹介してくれます。
羊から刈った毛を歌いながら棒でたたいてフェルトを作る過程や、ものの数分で家財道具一式を手際よくらくだに積み上げて隊列を組んで引っ越すデモンストレーションなど、長きにわたって自然と共生しながら彼らが生み出してきた“暮らしの流儀”は、“定住”や“物質的豊かさ”に慣れてきたビジターたちにとっては新鮮そのもの。

羊の骨を使った室内ゲーム「シャガイ」(羊の骨を指ではじき、的にあてる)や全力疾走の馬から身を乗り出して地面に置かれた帽子をとる遊び、スモーク中のビーフジャーキーの美味しそうな香り、実際に着てみると動けないほど重い毛皮のコート、生まれたばかりでも器用に柵の上に立つ愛らしい子ヤギなど、ゲルの周りでの様々な発見に対して歓声が起こり、しばらくあちこちからスマホのシャッター音が鳴りやみませんでした。

次に『モンゴル・ハーン』を観る時には、また新たな視点からこの人間ドラマを味わうことが出来るかもしれません。

文・松島まり乃
撮影・阿久津知宏

<公演情報>
『モンゴル・ハーン』

【東京公演】
日程:10月10日(金)~20日(月)
会場:東京国際フォーラム ホールC

【名古屋公演】
日程:10月24日(金)~26日(日)
会場:愛知県芸術劇場 大ホール

チケット情報
https://w.pia.jp/t/mongol-khan/

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