名前のつけられない関係を描く。いいへんじ『われわれなりのロマンティック』
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いいへんじ『われわれなりのロマンティック』チラシ
2025年8月29日(金)〜9月7日(日)、東京・三鷹市芸術文化センター 星のホールにて、いいへんじ『われわれなりのロマンティック』が上演される。
2016年に結成された演劇団体、いいへんじ。2023年には『薬をもらいにいく薬』で第67回岸田國士戯曲賞最終候補にも選出された彼女たちは「答えを出すことよりも、わたしとあなたの間にある応えを大切に、ともに考える『機会』としての演劇作品の上演」を目指しているという。
今回の新作は、主宰で作・演出を務める中島梓織がこれまでずっと感じてきた“ハードル”についての物語。自分と相手との名付け得ぬ関係の話だ。
大学のフェミニズムサークルで出会ったクワロマンティックの茉莉と蒼。恋人とも友人とも名付け難い親密な関係を築いていたが、卒業後は自分たちの関係について言葉を尽くさなくなっていた。編集者となった茉莉は、パートナーシップをテーマにしたインタビューを企画し、仕事では周囲の人々の悩みに向き合っている。
そしてふたりの「好き」の形がある出会いをきっかけに問い直されていく……というもの。
クワロマンティックとは自分が他者に抱く好意が恋愛感情か友情か判断できない/しない恋愛的指向(romantic orientation)のこと。恋人や友人というラベリングは、外側から見たときにとてもわかりやすい。けれども、抱える感情は簡単に区切れるものではない。中島は「クワロマンティックという言葉と出会ったとき、この感覚に『名前』があったことに、判断しないという選択肢があったことに、救われた気持ちになりました」といい、しかしながら「相手に合意と確認を取るための、第三者に説明や証明をするための、関係性の『名前』がないことは、それなりに不安なままです」と続ける。
「『名前』は、ときに救いとなり、ときに呪いとなる」というこれまで彼女が作品の中で何度も扱ってきたテーマに、今回も真正面から取り組む。
出演はいいへんじの小澤南穂子、飯尾朋花に加え、小見朋生(譜面絵画)、川村瑞樹(果てとチーク)、藤家矢麻刀、百瀬葉、冨岡英香(もちもち / マチルダアパルトマン)、谷川清夏、奥山樹生。
『われわれなりのロマンティック』というタイトルの通り、人と人との関係は、一つひとつ違うはずだ。わかりやすい言葉に安易に逃げて思考停止をするのではなく、「われわれなり」を見つめ、お互いの「われわれなり」を尊重したい。
「シンプルに名前をつける代わりに、問いに向き合い対話を繰り返すことは、苦しいことでもあるけれど、幸せなことでもあると、わたしは信じています」と語る中島。彼女たちがみせてくれる、彼女たちなりの関係を受け止め、自分と周りとの関係を見つめ直したい。
<公演情報>
MITAKA “Next”Selection 26th
いいへんじ『われわれなりのロマンティック』
作・演出:中島梓織
出演:
小澤南穂子(いいへんじ) 小見朋生(譜面絵画)
川村瑞樹(果てとチーク) 藤家矢麻刀 百瀬葉 冨岡英香(マチルダアパルトマン/もちもち) 谷川清夏 奥山樹生
飯尾朋花(いいへんじ)
【アフタートークあり(下記公演後)】
・8月30日(土)18:00公演
ゲスト:清田隆之(文筆家)
・9月3日(水)14:00公演
ゲスト:大前粟生(小説家)
・9月4日(木)14:00公演
ゲスト:石黒麻衣(「劇団普通」主宰)
【オープニングアクトあり】
9月3日(水)14:00公演 開演前(13:30~13:50予定)
演奏:野木青依
2025年8月29日(金)~9月7日(日)
会場:東京・三鷹市芸術文化センター 星のホール
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2560767
公演特設サイト:
https://wareroma.studio.site/