ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』多角的鑑賞サポートで感動を届けた手話付き公演のレポートが到着
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青山メインランドファンタジースペシャル ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』アフタートークでの手話通訳
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すべて見る2025年7月28日から8月6日に東京・東京国際フォーラム ホールCで上演されたブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』。8月1日11時30分、8月3日16時30分公演は、きこえない・きこえにくい方も舞台を楽しめるよう、手話エンターテイナーでもあり俳優の那須映里による舞台本編の手話表現をはじめとして、字幕タブレットの貸し出し、台本の提供、そしてキャストによるアフタートークの際にも、手話通訳やリアルタイム文字起こしでトーク内容を届ける多角的な鑑賞サポートが提供された。このたび、手話付き公演のレポートが到着した。
本作は、サー・J・M・バリの原作を元に、キャロリン・リー作詞、モリス・チャーラップ作曲、福田響志翻訳・訳詞、長谷川寧演出・振付で上演。山﨑玲奈がピーター・パン、石井一孝がフック船長、山口乃々華がウェンディ、七瀬恋彩がタイガー・リリー、太田緑ロランスがダーリング夫人を演じた。
鑑賞サポートは、UDCast LIVE(Palabra株式会社提供)の協力のもと実施。手話の見やすい座席エリアを販売する専用受付窓口が設置され、メール等でのチケット申し込みに対応した。当日受付や客席内には手話通訳スタッフが配置され、開演前や幕間の場内アナウンスも手話・字幕によるサポートが行われた。

舞台本編では、手話演者の那須が舞台向かって右手の客席前方に立ち、台詞や歌など音の情報を手話で表現。また、日本語字幕タブレットの貸し出しも行われた。8月3日公演では、キャストによるアフタートークでの手話通訳実施とリアルタイム文字起こしも提供された。
特筆すべきは、上演中に使用される「ピーター・パン」「フック船長」などの主な登場人物の手話ネーム(サインネーム)が事前に発表され、鑑賞サポート席の利用者に周知された点だ。手話付き公演を体験した鑑賞者からは、手話表現について「歌通りの手話だと思っていたが、そうではなく、気持ちのこもった手話表現になっていました。“♪羊を数えて”という歌詞で、羊が1匹、2匹と飛ぶ様子が手話で表現されていたことにとても感動した」「これまで手話付きの公演はいくつか見たことがありますが、一番好きだった」といった声があった。
また、「“通訳”としてではなく、“演者”としてやっていただいたのがとてもよかった」「ティンカーベルの声は音だけの情報だが、那須さんの表情から感情が伝わってきた」という感想も。「ピーターパンの舞台はテレビでも紹介されているくらい有名で、私が小さいときから知っていましたが、ストーリーは分かっていても話す内容などが分からないものだからと縁の無いものだと思っていました。こうして手話付き公演があり、聴こえる子供と一緒に見ているうちに感無量になってしまい、浄化された気分です」という深い感動を伝える声もあった。
字幕タブレットについては、「誰がどんなふうに言っているという状況が凄く伝わって、字も大きく見やすかったです」「手話演者のいるスポットの照明が暗くなって見えないときに流れる音が、なんの音かタブレットで見れた」という好評の声があった一方、「タブレットをずっと手に持っていないといけないのが少しつらかった。固定する場所や器具があると助かります」という改善点も指摘された。
手話と字幕タブレットを併用した鑑賞者からは、「字幕も常に見ていて、台詞通りの内容も分かるが、手話のいいところは、イメージ、状況・様子・気持ちがすごく伝わるところ」「タブレットを見ると一瞬で言葉を見てとれるので、手話と両方で調整をしながら見る方法が私にはよかった」という感想があった。
那須は、「かの有名な舞台『ピーター・パン』に手話演者として出演するにあたり、多くの方々にご尽力いただきました。手話監修の佐沢静枝さんとともに、手話表現の細部を観客からの見え方も踏まえて修正しながら練習を重ねました」と手話付き公演の準備過程を振り返り、「手話付き公演をよりスムーズに楽しんでいただけるよう、登場人物の手話ネームづくりや照明の調整、衣装など、手話演者がピーター・パンの世界に自然に溶け込めるよう長谷川寧さんをはじめスタッフの皆様が一緒となって取り組んでくださいました。やはり手話付き公演の実現には制作陣の協力が不可欠であることを改めて感じました」とプロダクション全体の協力体制について言及した。
演出の長谷川寧は、「鑑賞サポート付公演の実施にあたり、ご提案いただいたサインネームの相談からUDCastの字幕、手話パフォーマンス時の照明の光量まで、関係者一同とコミュニケーションを取りどうやったらその場にいた方が楽しめる環境を提供できるのかを各クリエイティブスタッフとともに考え、各部署のスタッフ陣と連携させていただいた」と作品全体に情報保障を組み込む難しさと工夫についてコメント。
「情報を保障するということは難しい。字幕という点においてだけ見ても台本をただ貼れば良い訳ではなく、どう視認性を上げるか、その臨場感を如何に途切らせないか、ライブパフォーマンスとしてのテキストとしてあるため、さまざまな制限の中で如何なる表現を提供できるか」と課題を挙げながらも、「今後もこの取り組みが続くよう尽力したい」と今後への意欲を示した。
■那須映里 コメント全文
このたび、かの有名な舞台『ピーター・パン』に手話演者として出演するにあたり、多くの方々にご尽力いただきました。手話監修の佐沢静枝さんとともに、手話表現の細部を観客からの見え方も踏まえて修正しながら練習を重ねました。また、手話付き公演をよりスムーズに楽しんでいただけるよう、登場人物の手話ネームづくりや照明の調整、衣装など、手話演者がピーター・パンの世界に自然に溶け込めるよう長谷川寧さんをはじめスタッフの皆様が一緒となって取り組んでくださいました。やはり手話付き公演の実現には制作陣の協力が不可欠であることを改めて感じました。
耳の聞こえる方の中には、ピーター・パンの舞台を見て俳優を志した方や、舞台の魅力を知って新たな世界を広げた方が数多くいらっしゃいます。今回の手話付き公演や鑑賞サポートのおかげで、ろう者の皆様にもピーター・パンの世界を楽しんでいただけるようになりました。本公演をご覧になった方々に、新たな世界が広がりますように。そしてこの取り組みが継続し、さらに多くの方々に舞台を楽しんでいただけることを心より願っております。
■演出:長谷川寧 コメント全文
今回鑑賞サポート付公演の実施にあたり、ご提案いただいたサインネームの相談からUDCastの字幕、手話パフォーマンス時の照明の光量まで、関係者一同とコミュニケーションを取りどうやったらその場にいた方が楽しめる環境を提供できるのかを各クリエイティブスタッフとともに考え、各部署のスタッフ陣と連携させていただいた。過去手話と字幕付の作品を当事者と作ったことはあったが、今回の様にもとから対応が無かった作品にどう情報を付与するかという点はまた別の観点の経験だった。
情報を保障するということは難しい。字幕という点においてだけ見ても台本をただ貼れば良い訳ではなく、どう視認性を上げるか、その臨場感を如何に途切らせないか、ライブパフォーマンスとしてのテキストとしてあるため、さまざまな制限の中で如何なる表現を提供できるか。
結果、体験いただけた方がどう感じたかは各々に委ねるしか無い訳ですし、至らないこともまだまだあるのですが、今後もこの取り組みが続くよう尽力したい。
関係者一同、今回の体験で楽しんでいただける方がいたなら幸甚です。
ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』手話ネーム(サインネーム)動画
ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』手話付き公演 舞台本編の様子
<公演情報>
青山メインランドファンタジースペシャル
ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』

原作:サー・J・M・バリによる作品を元にしたミュージカル
作詞:キャロリン・リー
作曲:モリス(ムース)・チャーラップ
翻訳・訳詞:福田響志
演出・振付:長谷川寧
ピーター・パン:山﨑玲奈
フック船長:石井一孝
ウェンディ:山口乃々華
タイガー・リリー:七瀬恋彩
ダーリング夫人:太田緑ロランス
ロストボーイズ※:飯田汐音、小野寺夏音、梶みなみ、富田明里、宮島優心(ORβIT)
パイレーツ※:今村洋一、黒沼亮、佐藤大、七味まゆ味、武井雷俊、馬場礼可
モリビト※:ASUKA、奥富夕渚、住玲衣奈、高中梨生、堤はんと、中川友里江、西垣秀隆、森田駿介
ジョン※(Wキャスト):白石ひまり/三浦あかり
マイケル※(Wキャスト):小林愛佳/柳生有咲
スウィング:三井夕萌、大賀辰次朗
※五十音順
【東京公演】
日程:2025年7月28日(月)~8月6日(水)
会場:東京国際フォーラム ホールC
※公演終了
【群馬公演】
日程:2025年8月10日(日)・11日(月・祝)
会場:高崎芸術劇場 大劇場
※公演終了
【大阪公演】
日程:2025年8月17日(日)
会場:梅田芸術劇場メインホール
※公演終了
【福岡公演】
日程:2025年8月22日(金)~8月24日(日)
会場:博多座
※公演終了
公式サイト:
https://horipro-stage.jp/stage/peterpan/
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