舞台『ヘヴンアイズ』で共演、石田亜佑美×渡辺碧斗が語る素直でいることの大切さ
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インタビュー

左から)渡辺碧斗、石田亜佑美 (撮影:藤田亜弓)
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すべて見る国際アンデルセン賞を受賞したデイヴィッド・アーモンドの小説を著者自らが戯曲化した『ヘヴンアイズ』が日本初演を迎える。養護施設で育った子どもたちが自由を求め、いかだで冒険へと漕ぎ出した先で“ヘヴンアイズ(=天国をみいだす目)”と呼ばれる不思議な少女と出会うさまを描く本作。今回、舞台初主演を務める元「モーニング娘。」の石田亜佑美、石田が演じる主人公・エリンと共に旅に出る少年・ジャニュアリーを演じる渡辺碧斗が本作への思いを語ってくれた。
みんなで探しながら、つくりあげる作業が心地良い

――エリンとジャニュアリー、共に養護施設で育ち、いかだで旅に出るふたりを演じます。セリフやシーンなどで楽しみにしている部分、逆に難しさを感じているところはありますか?
石田 エリンとジャニュアリーが結構、近しい距離で戯れるところがあるんですけど、その戯れ方ですかね(笑)。
渡辺 戯れ方ね(笑)。
石田 「冒険に行こう!」と踏み出すシーンなんですけど、子どもがはしゃぎ合って、戯れていると「セリフが流れてしまう」と演出の荒井(遼)さんに言われて……。でもあまり大事そうに言うと「大人っぽい」と(苦笑)。そこが難しいんですけど、気持ちよくハマればすごくワクワクする楽しいシーンになると思います。
渡辺 ここに出てくる子どもたちは、生まれた時からいろんな逆境があって、この物語でも冒険に出て、さまざまな逆境に遭遇するんですけど、その中でジャニュアリーは一番前を向いている人物だなと思います。「自分にもこんな時があったな……」と思わされました。いま僕は27歳なんですけど、25を超えたあたりから、ちょっとずついろんなことに期待をしなくなっている自分がいて……。
石田 わかる! すごくわかります……。
渡辺 でもこのジャニュアリーに限らず、ここに出てくる子どもたちの姿にすごく勇気づけられて、読み終わって温かい気持ちにもなったし、懐かしい気持ちにも、「こうありたい」という気持ちにもなりました。僕から見たら、ジャニュアリーは太陽のような存在なので、その気持ちを思い出しながら、エネルギッシュに演じられたらと思っています。
――今回、石田さんは、グループでの作品以外では舞台初主演となりますが、“座長”として現場に入ってみて気持ちの変化はありますか?

石田 全然意識してなくて(笑)、いま、ご質問をいただいて「あ、そういうものなんだ?」という感じで……。座長がどうのって全く考えてませんでした(笑)。特にこの作品、この現場が「みんなでつくっている」という感じが強いので、普通にみんなが提案し合っているこの空気が心地良いし、そうやってつくっていけたらと思っています。
――そういうスタンスは普段から? それとも今回の作品だからこそ、強く感じますか?
石田 グループでの公演で、こういう取材をしていただいて、ニュース記事で「座長・石田亜佑美が……」みたいに出てるのを見て「あ、座長なんだ!」と思うくらいだったので、普段から意識してないんでしょうね。役や作品と向き合うという意識のほうが強いんだと思います。グループ時代は後輩に対しても事細かに何かを教えるというよりも「背中を見て学びなさい!」というタイプだったので、舞台でも「まずは私が頑張ればいいか」という気持ちなんですよね。逆にいま、こんなふうにみんなで何かを探すというのは初めての経験ですごく楽しいです。
――いま、舞台に出演することの面白さをどんな部分に感じていますか?

渡辺 作品をつくっていく過程はどの作品も異なるんですけど、特に舞台だと、自分にとって初めての経験、初めての役の組み立て方に1か月みっちりと触れらながらお芝居ができるので、非常に学びや発見が多くて、そこに魅力を感じています。
石田 自分が演じていても、観る立場でも、セリフがない人たちがどう動いているのか? という部分まで見られるのが舞台の楽しさだなと感じています。映像でセリフを言う人がカメラでカット割されるのと違って、セリフのない人が意外な動きをしていたり、「え? これは伏線かな?」みたいなことをしているのが楽しいなと思います。だから、自分もセリフがないところでも「何かしなきゃ!」と思っているんですけど、そこはまだまだ自分は得意ではないので、毎回、探りながらやっています。
失っていた“期待する気持ち”を取り戻して
――ここまで稽古をしてきて、お互いの印象を教えてください。エリンとジャニュアリーの関係性は物語の中でも非常に重要な部分ですが、特にコミュニケーションで意識していることはありますか?
渡辺 僕は普段、あまり自分から話しかけるタイプではないんですけど、今回は、何となくどうでもいいことを口に出すようにしてますね。とりあえず「今日も暑いですね」とか話しかけたり(笑)。
石田 たしかによく話しかけてくれますよね。
渡辺 あんまり考えずに話しているなと思います。普段は、会話の前にシミュレーションするんですよね「こう言ったら、こういう返しがきて……」とか。でも、今回はあんまりあれこれ想像しないで、変な言い方ですけど、頭を使わないで石田さんとしゃべってるなと思いますね。石田さんは……話しかけやすいですね(笑)。懐が広いです。それはたぶん、グループでやってきたからなのかな?
石田 私も誰かと話す時、シミュレーションしたり、組み立てないと話すのが怖いタイプなんです。だからさっき言ってたこと、すごくわかります(笑)。(渡辺は)毎回、稽古場に着くと荒井さんに「ここ読んでみて、こう思ったんですけど」ということを提案されるんですよ。その姿勢が素晴らしいなと思っていて、そばで見ていて「一緒につくっていくってこういうことなんだな」というのを教えてもらっていますし、そのおかげで私も荒井さんやみなさんに「これってこういうことですかね?」と聞きやすいんですよね。本当に壁をつくらずに話しかけてくださるのでありがたいです。
――エリンやジャニュアリーが自由を求めて外の世界に飛び出す姿に共感するところはありますか?

石田 さっき(渡辺が)言っていた「期待をしなくなった」ってちょっとわかるんです。私もグループを13年やってきて、大人になるにつれて、どうしても少しずつ「うんうん、そうだよね……」といろんなものが削ぎ落とされていく感じがあって。今回、子どもの目線で見たものにそのまま素直に反応するのが楽しいですし、それって大事だなって改めて思わされます。
渡辺 最近は家から外に出るにも、ひとつ気持ちをつくらないとできないくらい(苦笑)、年々インドアになっているんですけど……。そんな僕でも「こんな時あったな」、「素敵だな」、「自分もこうありたいな」と思える登場人物たちで、僕に限らず誰しもが共感できると思います。
取材・文:黒豆直樹 撮影:藤田亜弓
<公演情報>
舞台『ヘヴンアイズ』
作:デイヴィッド・アーモンド
翻訳:髙田曜子
演出:荒井遼
出演:石田亜佑美 渡辺碧斗 湯川ひな 野口詩央 里内伽奈 岡島洸心 大谷亮介
2025年9月12日(金)~17日(水)
会場:東京・すみだパークシアター倉
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