末満健一TRUMPシリーズ最新作ミュージカル「キルバーン」にSOPHIA・松岡充と小林亮太が降臨!
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インタビュー

(左から)SOPHIA・松岡充、小林亮太 (撮影/石阪大輔)
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すべて見る吸血種と人間が共存する社会を舞台に、永遠の命を持つと言われる吸血種“トランプ”の不死伝説に翻弄される者たちを描く「TRUMPシリーズ」。このたび上演されるシリーズ最新作、ミュージカル「キルバーン」(作・演出:末満健一)は2020年に上演が発表されるも、コロナ禍の影響で中止となり、長らく復活が待たれていた作品。“不死卿”と呼ばれる吸血種ドナテルロとして主演を飾る松岡充と、ドナテルロに忠誠を尽くす美少年グスタフを演じる小林亮太が本作への思いを語ってくれた。
――脚本を読まれての印象を教えてください。
松岡 これまでのシリーズとも共通するダークサイドのファンタジーであり、一見、僕たちが生きる現実とはまったく別の世界という構図になっているようで、実は直結してる部分が多々あるという印象でした。ファンタジーの装いでありつつ、現代を生きる人たちへのメッセージとなっている、というところがすごいなと。ただ、これまでと比べて、かなりぶっ飛んでいて、逆療法というか、正面からではなく正反対の表現をすることで、逆にメッセージを発しているのかなと感じました。
小林 僕も同じくファンタジー色が強いなと思いました。今回、シリーズへ初めて参加させていただきますが、末満さんが十数年をかけて作られてきた世界があって、例えば人間でいう思春期を“繭期”と表現していますけど、ファンタジーでありつつ、僕ら人間が現実とリンクをさせながら演じるという部分、“ヒャッハーミュージカル”と謳っていますが、そのぶっ飛んだところを僕らの体を通して表現しようとしているのかなと脚本を読んで感じました。
――松岡さんは、先ほどおっしゃった本作が訴える“メッセージ”について、具体的にどんなことを感じていますか?
松岡 僕が演じるドナテルロは“不死卿”と呼ばれていますが、このドナテルロと亮太くんが演じるグスタフが、実は誰よりも命というもの、生きることに向き合っている物語だと思います。おそらく世界的に見て、先進国の中でも日本は一番、自殺者、しかも若い世代で多く、その原因は様々ではあると思うんですが、そういう世代の人たちにダイレクトに繋がることのできるエンタメとしての役割を、末満さんは感じていらっしゃるのではないかと思います。日常を生きていて、現実と向き合った時に「明日がつらい」「生きるのがつらい」と感じている人たちもいる。その人たちと繋がるためにファンタジーが有効なんじゃないか? 現実の世界で何か役に立てるものがあるんじゃないか? そこまで考えてるんじゃないかなと。勝手な解釈ですが、そんな想いが基本のところに流れているエンタメ作品だと思います。
――ドナテルロとグスタフ、それぞれの役柄の印象について教えてください。
小林 肩書きに“美少年”と付いているので、本読みの時から「美少年グスタフさん」と言われて、みんながクスっとなるみたいな(苦笑)。そういう役を僕はこれまであまり経験していませんので、塩梅といいますか、「美少年でなくちゃいけない」という末満さんからの課題――はたして、これは意地悪なのか? 遊びなのか(笑)?――そこに難しさを感じています。末満さんとは過去に3作品でご一緒させていただいていて、その関係値が自分の中に流れているのを感じつつ“美少年”をどう構築するのか? 特にドナテルロとの関係を踏まえて、心の面から丁寧に作っていきたいと思います。
――実際、ドナテルロとの関係は現時点でどのように見せられたらと考えていますか?
小林 セリフにも「執事であり下僕だ」とありますが、不死卿がこの世界で過ごすために側近に徹している印象が強いです。ですが、物語の流れとして、ドナテルロとの関係はもちろん、お客さまとの接点も作っていかなくてはいけないと思っていて、主従関係でありつつも“裏の顔”というか、少しずつ明らかになっていく部分をどう見せていくのかは、俳優としてこれからさらに探求していきたいです。
松岡 僕は以前、末満さんと『黑世界 ~リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々たる考察について~』という作品をやらせていただいたんですが、それはこの『キルバーン』がコロナ禍でできなくなって、何とかできる最大限の形式として生み出された音楽朗読劇でした。そこでシュカという役をやったんですが、僕の中でドナテルロは「シュカじゃん!」と思っています(笑)。
命を燃やして生きているというさまを、この不死卿ドナテルロを通して見せたい。“不死卿”と呼ばれつつ、どこかで自分の命に疑いを持っていたり、子どもの頃の体験が人生に大きく作用していたりしている。現実世界でも幼少期の体験がその後の人格形成に影響を及ぼすことはあると思いますが、その後出会った人や愛した人によって、少しずつ変わっていくということもまた人生なのかなと思います。そういう意味で、ドナテルロとグスタフの関係性にはポジティブな要素もネガティブな要素も孕(はら)んでいますが、最終的にこの出会いがふたりを救うという部分を見せられたらと思っています。

――そんな重要な関係のふたりを演じるわけですが、お互いの印象について教えてください。
松岡 僕、おかげさまで役者としてステージに立つ活動を20数年、長くやらせていただいているので、舞台に限らずいろんなタイプの方と出会ってきましたが、どちらかと言うと“男性チーム”が多いんです。あまりLOVEなものはやらない体質なので(笑)。オラオラ系のチームもあれば、縦社会の関係の強いチームも見てきたし、先輩も若い人もいろんな人を見てきましたけど、亮太くんは新しいタイプですね。
小林 そうなんですか?
松岡 なかなかいないタイプというか、僕の個人的な感想ですが人との距離感がイイ感じで。ちょっと女性的な面も感じて、例えば素直さや透明感。とにかく “圧”がない。すごく自然に、気づいたらスーッといる感じ。そういう魅力があるから美少年グスタフにキャスティングされたんだと思います。
――小林さんから見た松岡さんの印象は?
小林 現場に入るまで僕は「松岡さんとご一緒するんだ。しっかりしなきゃ!」と思っていたんですが、お会いすると物腰がすごく柔らかくて、俳優・スタッフ関係なく、普段から関係性をみんなで作っていこうとされている方だなと感じました。一方で、やはり“作品ファースト”で考えていてくださっているので、しっかりと意見を発信されるし、それでいて、自分の意見を押し付けるわけではなく、クリエイティブの中でどうお互いを活かし合い、化学反応を生んでより良くしていくか? を考えていらっしゃる。本当に素敵でかっこいいです。
――和田俊輔さんによる音楽に関して、どのような部分を魅力に感じていますか?
松岡 和田さんは、コンポーザーとして天才だと思っています。以前からご一緒させていただく機会もあり、ガッツリと話もしていますし、音楽性の部分での価値観を共有できていると思います。そういう意味で安心していますし、だからこそ丸投げではなく、素直に言いたいことを言わせてもらっています。これは、わからない人に言ったらただの“ワガママ”になっちゃうけど、和田さんも末満さんもきちんとわかってくれる方たちなので、末満さんの世界観を尊重しつつ、いろんな提案もさせていただいています。
楽曲は、メチャクチャかっこいいですけど、メチャメチャ難しいです。今回は生バンドがいるわけじゃないので、歌う人がグルーヴを作らなくてはいけない。しかも今回のような作品は、まっさらなところから生まれているので、クリエイターが創るものにちゃんと向き合っていかないと、なかなか同じ温度になれないんです。そこは本当に難しい。
小林 僕が和田さんと出会ったのは、10代の後半で、青春群像劇をやらせていただいたこともあって、僕にとって、和田さんの音楽が青春なんです。いまだに、ちょっと緊張する現場に行く日の朝は当時の曲を聴いたりするくらい、沸き立たせてくれるものがあるんです。今回、数年ぶりにご一緒することになって、楽曲が送られてきて「和田さんの曲って、こんなに難しかったっけ?」と思いました(苦笑)。ただ現場に入って松岡さんも「難しいよね」って言ってくださって「よかった、僕だけじゃなかったんだ!」と(笑)。これまでご一緒してきた作品ともテイストが違うし、すごく前のめりの楽曲に言葉が詰まっていたりもするので、歌唱指導の西野(誠)さんをはじめ、松岡さん、堂珍(嘉邦)さんの音楽観もうかがいながら、混ざり合えたら良いなと思っています。
――この作品に出演するにあたって、どんなことを楽しみにされていますか?
松岡 最初にオファーをいただいた時、もう5年ほど前になりますが、末満さんと居酒屋でふたりで話をして、作品のことではなく身の上話をずっとしていたんですけど「この人が創る世界観は大丈夫だな」って信頼できたんです。そうやって楽しみにしていた作品がコロナ禍でできなくなって、残念に思っていたのが満を持してできるわけで、楽しみでしかないです。
小林 楽しみにしていること……僕は、末満さんを通し稽古で立たせたいなと思っています。客席を巻き込んでいく作品なので、スタッフ陣が思わず立ち上がってしまうような作品にしたい。末満さんが立ち上がって、拳を突き上げるような作品にできるように頑張りたいです!
松岡 ブロードウェイやウエストエンドにはあるけど、日本の演劇がなかなか打ち破れなかった壁――客席と舞台が地続きで、観劇している方も一緒に参加するような、劇場全体がステージだという感覚になるような作品に、末満さんはこの「キルバーン」でチャレンジしているんだと思います。その壁をぶち破るのはすごく大変ですけど、末満さんも僕もそれを思い切りやりたいと思っていますので、劇場には覚悟しておいでください!!
取材・文/黒豆直樹
撮影/石阪大輔
<公演情報>
ミュージカル『キルバーン』

〈東京公演〉
日程:2025年9月13日(土)〜28日(日)
会場:サンシャイン劇場
〈大阪公演〉
日程:2025年10月2日(木)〜5日(日)
会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
[作・作詞・演出] 末満健一
[音楽] 和田俊輔
[出演] 松岡 充
小林亮太 内田未来 フランク莉奈 山崎樹範 倉持聖菜 池田晴香 宮川 浩
堂珍嘉邦 ほか
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/kill-burn/
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