かもめんたる・岩崎う大が語る、コントと演劇の狭間で見つけた創作の本質
ステージ
インタビュー

お笑いコンビ"かもめんたる"として、そして"劇団かもめんたる"の主宰として、コントと演劇というふたつの世界で創作を続けている岩崎う大。う大が、なぜ今再びコンビでのライブに臨んだのか、そして演劇での経験がコント作りにもたらした変化、創作に対する考えを語る。
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やるコントが、もうなくなっちゃったんですよ
――2024年に実施した、かもめんたる7年ぶりの新作コントかもめんたる×劇団かもめんたるライブ『アックメ』ですが、まずはコントライブ復活のきっかけを教えてください。
久しぶりにコンビでコントライブをやろうと思ったきっかけは、すごく単純な話で、テレビでやってほしいと言われたときに披露できるコントが、もうなくなってきてしまったんです。テレビのネタ番組では、まだそこでやっていないネタを求められることが多いのですが、そのストックが尽きてきてしまって。
それと同時に、久しぶりにコンビでやるのも面白そうだなという気持ちもありました。"劇団かもめんたる"とコンビの"かもめんたる"の両方をやっている存在はあまりいないので、そのふたつを掛け合わせることで面白いことができるんじゃないかと思ったんです。
前回のライブは、笑いの密度がいつもの劇団公演より多くて、どこか懐かしい感じがしました。お客さんも楽しみにしてくれていたようで、すごく盛り上がって、ライブっていう感じが強かったですね。
演劇の経験がもたらした、コント演出への新たな発想

――演劇の経験がネタ作りにどう活きてきましたか?
コントと演劇には、明確な差があると思っています。演劇の場合、たとえコメディであっても、笑いが必ずしも一番上に来るわけではありません。お客さんにいろんな感情を抱いてもらうことが目的になります。一方でコントは、とにかく笑いが1番。そこはもう、違うゲームをやっているという感覚ですね。
コンビで単独ライブをやっていた昔は、ネタとネタの間の幕間をどうするかというのが意外と大変でした。当時は映像を作るにしてもクオリティは出せないし、やはりステージ上で人間が生で動くことの愛おしさを大事にしたいという思いがありました。だから、映像を使わずに人間を使って繋いだり、あるいは繋ぎがなくても成立するような構成を考えていました。
前回のライブでは、幕間の演出が良かったと言ってくださる方がいて、とても嬉しかったです。これもなんだかんだで、劇団で演劇をやっていたからこそ出てきた発想だったりするのかなと感じています。ネタ数を多くするためにも、時間を有効に使うという意識から生まれたものでした。
消耗して85点よりは、気持ちよくやった83点がいい

最近は、ネタを作る時間が昔に比べてめちゃめちゃ短くなりました。昔だったらもっと時間がかかっていたような作業も、今は「これ以上叩いてもしょうがないな」という判断が、より早く、正確にできるようになった気がします。これは、ずっとネタ作りを続けてきたからこその変化かもしれません。筋トレのように、ずっと続けてきたことが生きているんだと思います。
もちろん、いろんなことを完璧にやりたいという理想はあります。でも、そこに囚われて消耗し、疲弊して85点のものを出すよりは、気持ちよくやって83点のものを出す方がいいんじゃないかと考えるようになりました。少し残酷な話かもしれませんが、その方が結果的に90点以上のものが出たりすることもあるんです。
だから僕は、結構"量"を大事にしています。自己採点が高くても、いざ評価されたらこんなものかという経験はたくさんしてきました。他人の評価は自分ではコントロールできない。でも、年間にライブを何本やったとか、何個作品を書いたかというのは、数の勝負です。そこは頑張りたいなと前から思っています。スピードとクオリティは比例することもあるんじゃないか、と。もちろん、そんな簡単なものではないですけどね。
何が何に繋がっていくかわからないし、僕のことを特定の作品でしか見ない人もいる。そういうことへの恐怖心やストレスは常にあります。野球で言えば、その日の風向きや湿度でバットの調子が変わるように、自分ではコントロールできない要因で、たまたまその現場のコンディションがすごく良いこともある。そんな時に自分がどんな飛距離を出せるのか。そこに興味があるから、出し惜しみをしないで頑張ろうと思っています。
枯れたら最後。だから、日常の「くだらないこと」を作品にする

――ネタの発想や世界観はどこから得ていますか?
創作活動は、インプットにもすごく体力が必要です。結局、何からインプットしているかというと、自分の作品からなんです。書きながら、自分の栄養で生きているような状態。もしかしたら、そのせいでガリガリに痩せ細っているかもしれない。でも、そのガリガリさが異様で、それ自体が見せ物になれている可能性もあるな、なんて思っています。
いずれ落ち着いたらアウトプットに専念すればいいやと思ってやってきましたが、その状態が続きすぎているので、今後はインプットも課題ですね。ただ、年々「なぜ俺が今これを、この瞬間に目撃したんだろう」ということに対して、自分の中でミラクル的に価値を高めているところはあると思います。
僕がやっていることはお笑いですから、くだらないことが素敵に感じられる世界です。歴史に残るような出来事を目撃した人が「これを記さなければ」と思うのと同じように、「なんで今、俺はこんな馬鹿馬鹿しいことを目撃したんだろう」「こんな些細な人間関係のもつれを目の当たりにしたんだろう」と感じた瞬間、それを作品にしたいという衝動に駆られます。大げさに言えば、それは同じくらい尊いことなんじゃないか、と。それがお笑いだから、という場所に、僕は今いるのかもしれません。
現実世界で起きていることは、リアルだからこそ惚れ惚れするくらい完璧な状態です。この性質の人間とこの性質の人間が、このタイミングで出会うから、こういうことが起きる。それをそのまま舞台上でコピーしても面白いはずですが、それでは芸がありません。
シチュエーションを変えたり、僕と相方の槙尾で表現できる人間に置き換えたり、いろんなことを変えていく。その上で、僕が目撃した関係性の面白さが、ちゃんと表現できているか。できれば、元々の面白さを上回るものになっているか。その地点に持っていけるかどうかが、楽しくてやっているところですね。
枯れたら最後だし、枯れるまでやり続けられたら、そんなに幸せなことはない。そんな気持ちで、毎回作品作りに臨んでいます。
取材:粟野亜美 文:稲葉光治
<公演情報>
かもめんたる×劇団かもめんたるライブ「でっかい部屋」
※詳細は各プラットフォームの購入サイトでも確認可能。
【配信期間】
2025年9月6日(土) 12:00 ~ 2025年9月20日(土) 23:59
※配信期間内は何度でも視聴可能。
【配信プラットフォーム】
PIA LIVE STREAM、ZAIKO、FANY Online Ticket、Rakuten TV、Streaming+、お笑いTV
【視聴チケット料金】
2,500円(税込)
【販売期間】
2025年8月20日(水) 昼12:00 ~ 2025年9月20日(土) 21:00
【配信情報サイト】
オフィシャルサイト 配信公演詳細ページ:
https://gekidankamomental.com/contents/972338
チケットぴあ 視聴券購入ページ:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2560136