舞台『忠臣蔵』大石内蔵助役 上川隆也に出演への思いをきく

――既に今回の戯曲はお読みになっているんでしょうか？

上川　いえ、まだ僕の手元には届いていません。堤さんとお話はさせていただきましたが、具体的に「こうしたものを打ち出していこう」というようなことをまで話がおよびませんでした。僕自身も心待ちにしている段階です。

――これまで『忠臣蔵〜決断の時』（テレビ東京・2003年）で浅野内匠頭を、『最後の忠臣蔵』（NHK金曜時代劇・2004年）で寺坂吉右衛門を演じられていますが、今回、「ついに大石内蔵助か」といった感慨はありますか？

上川　これまで携わってきた「忠臣蔵」作品の中で、僕の役柄はそれぞれに大石内蔵助を違った目線で見ていたわけですが、そのことが今回へ繋がる意識はまったくありませんから、「ついに」とは正直、思っていません。自分がやらせて頂けるとは思ってもいなかったですし、いつかはという期待も、僕はあまりキャラクターに対して持つことがないものですから、オファーをいただいたときは、「大石内蔵助をやるのか」と、ただ新鮮な気持ちでした。

――過去に「忠臣蔵」で違う登場人物を演じてきた経験が、今回、内蔵助という役をつくり上げていく上で影響を及ぼすと思いますか？ それとも、今回の脚本だけにまっさらな気持ちで向き合うという思いでしょうか？

上川　これから携わる作品ですので、あくまで想像でしか申し上げられないことですが、まったく影響を及ぼさないことはないと思います。ですが、それを骨子として（内蔵助像を）つくり上げることはありません。骨子は、あくまでも今回の脚本、堤さんの演出の中から作り上げていくべきもの。ただ、どこかでこれまでの経験がスパイス的に振りかけられたりするようなことがあるなら、それは僕だけのある種の持ち味にもしていけると思います。でも、それを使えるか使えないかも含めて、すべてはお稽古が始まってからの話になると思います。

――現時点で、大石内蔵助について、どういう人物だというイメージを抱いていますか？

上川　それについては、お客様も含めて、みなさんが持っていらっしゃる一般的なイメージと大きくは変わらないと思います。ただ一方で、いま抱いている思い、漠然とした予感として、高橋克典さんが吉良上野介に入られたということは、これまでの作品とは大きくその色合いを異にすると思うんです。高橋さんの持つ公明正大なイメージが吉良上野介と出会うことで何が生まれるのか。それを考えると、その対極にいる大石内蔵助はどうなっていくのだろう？ というほのかながらの思いはあります。
高橋さんとは今回、初めてご一緒させていただくので、どのような形で吉良を作られるのかはわかりませんが、高橋さんが携わられて、これまでの吉良と同じようになるはずはないという、裏付けのない期待感があります。その上で今回のクライマックスにおける描かれようがどうなっていくのか？ いまの時点で僕自身、想像もつきませんが、一方でまったく新しい「忠臣蔵」のクライマックスがお届けできるのではないかという期待に満ちています。

――これまでも堤さんとご一緒されてきて、堤さんならではの演出の特徴として感じる部分はありますか？

上川　『魔界転生』でもそうでしたが、映像とお芝居を実際に劇場に乗せた時の最終的なイメージは堤さんの中にしかなく、僕らも舞台の上に乗って初めて「これが今回、みなさまにお届けすることになる作品か」とわかることがあり、そういった部分は、堤さんならではの作品づくりだと感じています。もちろん、堤さんはきちんと事前にひとつひとつ説明してくださいますが、そのときのイメージを超えたもの、僕らの想像の一枚も二枚も上手をいくものが舞台に表出するんです。今回もそんな堤さんの「企み」のようなものがあるのだろうと、僕も楽しみにしているところです。

取材・文／黒豆直樹

＜公演情報＞
『忠臣蔵』

【東京公演】
日程：2025年12月12日（金）〜28日（日）
会場：明治座

【名古屋公演】
日程：2026年1月3日（土）〜6日（火）
会場：御園座

【高知公演】
日程：2026年1月10日（土）
会場：高知県立県民文化ホール

【富山公演】
日程：2026年1月17日（土）
会場：富山県民会館

【大阪公演】
日程：2026年1月24日（土）〜27日（火）
会場：梅田芸術劇場メインホール

【新潟（長岡）公演】
日程：2026年1月31日（土）
会場：長岡市立劇場

チケット情報：
https://w.pia.jp/t/chushingura/