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『ジャージー・ボーイズ』New Generation Team2日限りの公演が開幕! 主役に立った“縁の下の力持ち”たちの輝き

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ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』New Generation Team ゲネプロより

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現在、東京・シアタークリエで上演中のミュージカル『ジャージー・ボーイズ』。1960年代のアメリカで一世を風靡した4人組ボーカルグループ、ザ・フォー・シーズンズの栄光と影を、彼ら自身のヒットソングで描く人気ミュージカルで、2016年の日本初演からリードヴォーカルのフランキー・ヴァリを演じる中川晃教率いるTeam BLACKの研ぎ澄まされた歌声と充実の演技、今回初めてフランキーを演じる小林唯率いるTeam YELLOWのフレッシュな躍動感に、日々観客が熱狂している(花村想太が特別出演するTeam GREENもあったが、すでに全日程終了)。もともと人気の高い作品ではあるが、四演目となる今期は例年以上の熱狂で、開幕前にチケットは全日程完売。だが実は、どのチームよりチケット争奪戦となったのは、今回初の試みとして上演される〈New Generation Team〉公演だった。9月4日・5日、待望のNew Generation Team公演が開催。そのゲネプロの様子をレポートする。

“音楽で絆を結んだ4人”が生み出す多幸感

ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』は、ザ・フォー・シーズンズというグループの結成から離散、形を変えての復活、さらに「ロックンロールの殿堂入り」までを、春夏秋冬の4つの季節になぞらえて、メンバー4人――トミー・デヴィート、ボブ・ゴーディオ、ニック・マッシ、フランキー・ヴァリ自身がそれぞれの視点で語っていく物語だ。当然ながら主役はザ・フォー・シーズンズのメンバー4人。まったくタイプの異なる個性を持った4人が時に衝突しながらも、至高のハーモニーを作る――演じるには全米ナンバー1ヒットを連発したグループならではのスター性と歌声の確かさが必要で、これまでずっと日本ミュージカル界を牽引する人気俳優たちが演じてきた。同時に、作品自体の音楽性が非常に高いのだが、その音楽性を支えてきたのが、ザ・フォー・シーズンズを取り巻く人々を演じている俳優たちだ。長年そのポジションを務めてきた俳優たちが、満を持して主役のザ・フォー・シーズンズを演じるのが、New Generation Team公演である。キャストは、フランキー・ヴァリ=大音智海、トミー・デヴィート=加藤潤一、ボブ・ゴーディオ=石川新太、ニック・マッシ=山野靖博。大音、山野は日本初演から本作へは皆勤賞。石川は2016・18年に出演、今回久々のカムバックで、加藤は2020年のコンサート版から参加している。作品ファンにとってはおなじみの面々であり、その実力がよく知られているからこそ、New Generation Team公演が発表になった時、ファンは沸き立ち、チケットはプラチナとなったのだ。

フランキー・ヴァリ=大音智海

その期待を背負ったNew Generation Teamは、期待をさらに上回るクオリティと新鮮さを兼ね備えた、見事な公演を見せつけた。まず、何と言ってもフランキー役の大音が素晴らしい。“天使の歌声”と呼ばれるハイトーンボイスの持ち主で、この役だけは世界どこの公演でも、ブロードウェイオリジナル版のプロデューサーであるボブ・ゴーディオの承認がおりないと演じられないという難役だが、大音は歴代のフランキーに劣らぬ美声を安定して響かせる。特に前半の若き日の歌声は中川晃教の艶、花村想太の柔らかさのいいところ取りのよう。さらに全身からこの役を演じられる喜びが伝わってきて、観ていて自然と応援したくなるし、そのひたむきさがフランキー役に必要な“愛され力”へと転じているのも見事だ。

トミー・デヴィート=加藤潤一

トミー役の加藤は、ヤンチャな役柄に反し優しい歌声が今までのトミー俳優たちにない新鮮さ。グループ崩壊のきっかけを作ってしまうキャラクターだが、加藤のトミーはどこかロマンチシズムがあり、夢を追いかける男のあがきのような切なさがある。

ボブ・ゴーディオ=石川新太

ボブ・ゴーディオ役の石川は“一番の年下だが音楽の才能も商才も抜群”というボブにぴったり。童顔の彼が涼しい顔で厳しいことを言う姿は「これは言われた方はたまったものじゃないな……」と思わせられる説得力があるし、ほかの3人との出自の違いがわかる清潔感もいい。

ニック・マッシ=山野靖博

ニックを演じる山野は、ミュージカル界きっての低音ボイスの持ち主として知られ、ベースパート担当のニックはまさに満を持しての配役だ。驚くほどの美声を操ると同時に、ニックの疎外感や寂しさを救い上げ、さらにイタリア系らしい粋な雰囲気も醸し出していた。

そして4人の声が合わさる多幸感。実はこのミュージカルはザ・フォー・シーズンズの歌唱パートを別の俳優が“ダブルボーカル”として支える構造になっている。彼らはこれまで、その“ダブルボーカル”を担ってきた。作品を縁の下で支えてきた4人が、真ん中に立つ喜びを歌声に乗せる、その輝きよ。物語の彼らの上には生々しい諍いや辛い現実が圧し掛かるが、それでも常に音楽は美しい――彼らは何よりも音楽に魅せられ、音楽に対しては純粋で、音楽で絆を結んだ4人であるということがしみじみと伝わってくるチームだ。

縁の下から主役へ──演劇界に新たな扉を開いた夜

ザ・フォー・シーズンズは、劇中のセリフを借りて言うと、道端からスタートし、大衆の声に押され、トップへ駆け上がったグループだ。そのグループを演じるのに、長年作品を縁の下から支えていて、彼らの登板をファンが待ち望み、この度満を持しての抜擢となったNew Generation Teamほどふさわしいチームはあるだろうか。ゲネプロの客席は関係者が大勢詰めかけ、歓声と大きな拍手で祝福感いっぱいのうちに幕を閉じた(カーテンコールではサイリウムを振る人もあり、ボブ役の石川が「ゲネプロで!?」と驚いていたほどである)。

カーテンコールより

今回のNew Generation Teamに類する、比較的知名度の低いキャストを抜擢する新人公演のような公演はまったくないとは言わないし、『レ・ミゼラブル』のように知名度ではなく実力で選ぶ作品ももちろんある。だがやはり、普段はアンサンブルのポジションにいる俳優たちを抜擢し主演させるということはかなり異例なこと。大音、加藤、石川、山野は、その実力で、スター主義の業界に一石を投じた。彼らは過去の公演同様、2025年の他チームの公演ではアンサンブルとして出演している。明日以降の公演でもきっと粛々と、職人のようにそれぞれの役を地に足つけて演じていくのだろう。だがこの公演はきっと何かの扉を開いたであろうし、演劇界の歴史の1ページに刻まれたに違いない。

取材・文・撮影:平野祥恵

<公演情報>
ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』

脚本:マーシャル・ブリックマン&リック・エリス
音楽:ボブ・ゴーディオ
詞:ボブ・クルー
演出:藤田俊太郎

出演:
【Team BLACK】
中川晃教 藤岡正明 東啓介 大山真志
加藤潤一 阿部裕 戸井勝海 ダンドイ舞莉花 原田真絢 町屋美咲 柴田実奈 LEI’OH 山野靖博 杉浦奎介 石川新太

【Team YELLOW】
小林唯 spi 有澤樟太郎 飯田洋輔
原田優一 川口竜也 畠中洋 ダンドイ舞莉花 原田真絢 町屋美咲 柴田実奈 大音智海 山田元 伊藤広祥 若松渓太

【Team GREEN】※公演終了
花村想太 spi 有澤樟太郎 飯田洋輔
原田優一 川口竜也 畠中洋 ダンドイ舞莉花 原田真絢 町屋美咲 柴田実奈 大音智海 山田元 伊藤広祥 若松渓太

【New Generation Team】
大音智海 加藤潤一 石川新太 山野靖博
原田優一 川口竜也 畠中洋 ダンドイ舞莉花 原田真絢 町屋美咲 柴田実奈 LEI’OH 山田元 伊藤広祥 若松渓太

※ジップ・デカルロ役の川口竜也は体調不良のため、8月21日(木)夜、8月22日(金)昼、9月11日(木)夜、9月12日(金)昼の回を休演。
上記公演回のジップ・デカルロ役は、阿部裕が務める。

2025年8月10日(日)~9月30日(火)
会場:東京・シアタークリエ

公式サイト:
https://www.tohostage.com/jersey/

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