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村治佳織がスペインのADDA交響楽団と初共演

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村治佳織 🄫Kazumi Kiuchi

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今秋、クラシックギタリストの村治佳織が、初来日するスペインのオーケストラ、ADDA交響楽団(以下ADDA)と共演する。10月29日(水)の福岡を皮切りに、11月1日(土)・山口、3日(月・祝)・川崎、6日(木)~7日(金)・東京、8日(土)・大阪の予定で、村治は6日を除く日程で出演。

「このツアーに先駆けて、スペインでADDAとリハーサル&公演をします。スペインに行くのは2017年以来8年ぶりで、とても楽しみにしています」とやる気満々だ。

訪問先はADDAのホームタウン、アリカンテ。スペイン東南の地中海沿いにある町だ。公演は拠点のコンサートホール・ADDAオーディトリアムで、24日夜(現地日付)の予定。

「今年はこのツアーに向かって気持ちを盛り上げようと、自分のコンサートでもスペインの曲を多くして、心を整えてきました。アリカンテに行くのも、ADDAとの共演も初めてで、ワクワクしています」

演奏会の翌日には帰路に着き、帰国後、同楽団と国内ツアーというタイトなスケジュールだ。曲目は「アランフェス協奏曲」。スペインの盲目の作曲家、ホアキン・ロドリーゴ(1901~99)の傑作である。村治は、99年にマドリッドのロドリーゴの自宅を訪問したときのことを、今も鮮明に覚えている。

「ご高齢で耳が遠くなられてたので、スムーズな会話はかないませんでしたが、ネクタイを締めて迎えてくださって…。ロドリーゴさんの『小麦畑で』と『古風なティエント』をその場で演奏しました。毎日放送の『情熱大陸』の取材クルーも入ってて、ドキュメンタリー放送された貴重なひとときです。お目にかかったのが1月、悲しいことに約半年後の7月に亡くなられましたが、この1回の出会いは、私にとってとても大きな力になりました」

「アランフェス協奏曲」は、1933年に結婚したロドリーゴが、ピアニストの妻と新婚旅行で「アランフェス宮殿」に訪れたときの思い出をもとに、スペイン内戦(1936~39)の頃に作り上げた3楽章構成のギター協奏曲である。

王室の保養地に作られたこの歴史的建造物や庭園は、今や世界遺産として知られる。スペイン中央部にある首都マドリッドから電車で1時間ほど南下すれば行ける観光スポットとして人気を呼んでいる。

そよぐ風を感じ、鳥のさえずりや噴水の音、川のせせらぎなどを聞きながらの散策が目に浮かぶ曲調。愁いに満ちたロマンチックな旋律の第2楽章には、作曲当時、長子を流産した妻への慰めが込められている。

「2017年には、プライベートでアランフェス宮殿に行きました。春だったので、庭の青々とした緑を味わえて、演奏するときのイメージが膨らみました」

村治は「アランフェス協奏曲」をライヴはもとより、複数のCDやDVDに収めている。

「もう100回くらい演奏したかな、きちんと数えてはいませんけど(笑)。とにかく何度弾いても新たに弾きたくなる、奥深い曲です」

初来日のADDAは2018年に設立された若い楽団だが、潜在能力の大きさやチャレンジ精神を感じる前途有望なオーケストラだ。交響曲やオペラといったクラシック作品だけでなく、ジャズやポップス、タンゴなどもレパートリーに取り入れていて、味わい深い演奏をする。世界的な指揮者や演奏家との共演も多く、注目されている。

録音にも熱心で、すでに15枚以上のアルバムをリリース。21年に亡くなったジャズピアニスト、チック・コリアの楽曲をシンフォニックアレンジで演奏したライヴのアルバム「RITMO~チック・コリア・シンフォニー・トリビュート」は、24年にグラミー賞の「最優秀大規模ジャズ・アンサンブル・アルバム賞 (Best Large Jazz Ensemble Album)」にノミネートされた。

首席指揮者のジョセップ・ビセントは、楽団の創立者。

「マドリッドのオーケストラでヴァイオリンを弾いている友人によると、とてもエネルギッシュだそうで、テレビのオーディション番組の審査員もされてるようです。以前は、指揮者の方は年上のベテランが殆どでしたが、最近は同世代のマエストロと演奏することが増えてきて、ビセントさんも少しお兄さんだけど同世代。お会いするのを楽しみにしています」

ADDAは、ラヴェル(1875~1937)生誕150年に寄せて「ボレロ」や「亡き王女のためのパヴァーヌ」などを演奏する予定。ラヴェルの母はフランス領バスク出身で、マドリッド暮らしをしていたスペイン通だったと聞く。パリ育ちのラヴェルも、生まれは母の故郷・バスクで、バカンスをよくそこで過ごしたようだ。「ボレロ」のようなスペイン風の曲が生まれたのは自然なことと言えよう。

「ラヴェルのご両親は、アランフェス宮殿でデートされたことがあったようですよ。演奏曲とリンクしていて、親近感を感じます。スペイン人を一言で表現するのは困難ですが、軽やかでリズム感のあるスペイン語を話す人たちに、おおらかで明るいオーラを感じます。ステージで、底抜けに明るいエネルギーを感じながら演奏したいなと思っています」

取材・文 原納暢子

■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2557676

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