坂本昌行×海宝直人がたった二人で13役! オフ・ブロードウェイ・ミュージカル「MURDER for Two」が開幕
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(左から)坂本昌行、海宝直人 (撮影/関口佳代)
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すべて見る坂本昌行と海宝直人のふたりによるオフ・ブロードウェイ・ミュージカル「MURDER for Two」のプレビュー公演が9月6日に開幕。公演前には坂本と海宝、演出のスコット・シュワルツ、J・スコット・ラップによる会見が行われ、ゲネプロの模様も公開された。
2011年にシカゴで上演され、2013年にニューヨークのオフブロードウェイに進出したサスペンスコメディ。有名な作家アーサー・ホイットニーが自身の誕生パーティーの場で殺害され、マーカス巡査が容疑者たちを取り調べていく……。海宝がマーカスを演じ、坂本はホイットニー氏の妻、姪っ子、パーティーに招待された客など、個性豊かな容疑者たちをひとりで演じ分ける。日本では坂本と松尾貴史のコンビで2016年に初演され、坂本は第24回読売演劇大賞の優秀男優賞を受賞。2022年には坂本と海宝のコンビで再演された。
物語が展開されるのは、作家ホイットニー氏の邸宅。舞台の中央にはグランドピアノが置かれ、その周辺には古いトランクやイス、骨董品のような様々なものが置かれ、左右には少し古びたドアがある。
オープニングで坂本と海宝がそれぞれ左右のドアから登場! ふたりは互いの存在を意識し合い、ユーモアを交えつつ観客を笑いと共に物語へと引き込んでいく。
事件のはじまりは有名作家アーサー・ホイットニーの誕生日パーティー。妻のダーリアがアーサー氏のためのサプライズを企画し、招待客と共に部屋を暗くして夫の到着を待つが、帰宅してドアを開けた瞬間に銃声が響きわたり……。初動の捜査に当たるのは、刑事への昇進を熱望し、捜査マニュアルを何よりも大切にするマーカス巡査と寡黙な相棒のルー。マーカスはマニュアルに沿って、ダーリア夫人をはじめ、パーティーに招待された姪っ子のステファニー(ステフ)、近所の夫婦、精神科医、有名バレエダンサーらを取り調べはじめるのだが……。
坂本と海宝が、性別も年齢もバラバラの13人もの個性豊かなキャラクターをたったふたりで表現するのが、まず何よりも本作のみどころ。特に坂本は老婦人のダーリアを演じていたかと思えば、ドアをくぐった瞬間や振り向きざまなど、ほんのわずかなきっかけで瞬時に別の人物へと見事に変身し、それぞれのキャラクターを鮮やかに演じ分ける芸達者ぶりを見せてくれる。特に有名バレリーナのバレット、犯罪捜査をテーマにした論文を執筆中で、マーカスの“相棒”として振る舞おうとする大学院生のステフ、パーティーのために呼ばれた合唱団の少年たち(3名!)の演じ分けは圧巻!俳優としての才を遺憾なく発揮している。

一方、海宝が演じるマーカスは、次から次へとやってくる坂本による仕掛けを常に受け止め、物語を回していくという役どころだが、海宝の受けとツッコミがあってこそ、坂本のコミカルな演技、なんとも噛み合わないマーカスと容疑者たちのやりとりによる笑いが際立つ。そのマーカス巡査も、実は何か不穏な過去、トラウマを抱えているようで、その意外でぶっ飛んだ一面も徐々に見え隠れしてくる。
演出のスコット氏は会見で「パートナーシップ」が本作の重要なテーマ、と語ったが、まるで実写版の「トムとジェリー」を見ているかのようなコミカルで目まぐるしくも、ぴったりと息の合ったふたりのやりとりが展開する。坂本が、ときに物語から逸れるような遊び心を見せるなど即興的なふたりの掛け合いも魅力。坂本と海宝のふたりによる本作は3年半ぶりとなるが、ふたりの関係性のさらなる深まり、成熟を見せてくれる。
もうひとつ、本作で特筆すべきは坂本と海宝によるピアノの演奏。ほぼ全編にわたり、ふたりのどちらか、もしくは両方が歌っているが、その伴奏を自ら演奏。時には相手の伴奏をし、時には連弾での演奏を見せ、友情の歌を高らかに歌うなどそれは見事の一言。単なる引き語りにとどまらず、演奏しながらもコミカルな演技を見せるなど、ピアノ演奏は完全に、演技そしてシーンの一部となっている。
また、物語の終盤では、坂本が舞台を降りて客席へと足を運び、観客を巻き込んでのシーンもあり、文字通りステージと観客が一体となって笑いの空間が生み出されていく。
ゲネプロ前の会見では、坂本は海宝について「とにかく言われたことをすぐ自分のものにできる人」と称賛。3年半ぶりのタッグとなるが「(自身が)いろんなキャラクターを演じる中、セリフを忘れることもあるんですが(苦笑)、海宝くんが僕のセリフも覚えてくれているので非常に心強い。そういう意味でもパートナーです」と全幅の信頼を寄せる。
一方、海宝は、全体の稽古が終わってからも、坂本と共に自主的に残って稽古に励んできたことを明かしつつ「(坂本と)一緒に過ごさせていただいて、作品に対する献身的な姿に刺激をいただいています」と坂本が作品に対し真摯でストイックに向き合うさまを称える。
演出の二人も坂本と海宝の多才ぶりを絶賛。スコット・シュワルツ氏は「本作はたくさんのキャラクターがいて、セリフも多く、ピアノの演奏、歌も踊りもあって本当にいろいろなことを要求される役柄です」といかに本作の役柄が俳優にとって難易度が高いかを語り、J・スコット・ラップ氏も「演技力、歌、踊りの三拍子が揃った俳優を“Triple Threat(トリプル スレッド)”と言いますけど、彼らに関してはピアノ演奏という4つ目の才能までもが超一流です」と手放しで二人を称えていた。
この二人による上演は3年半ぶりとなるが、海宝は「前回よりもパートナーシップを感じてもらえると思います」と語り、坂本も「今回、より深く関係性を掘り下げられたと思います」と関係性の深まり、この二人ならではのやりとりに自信をのぞかせていた。

取材・文/黒豆直樹
撮影/関口佳代
<公演情報>
オフ・ブロードウェイ・ミュージカル 『MURDER for Two』
【プレビュー公演】
日程:2025年9月6日(土)・7日(日)
会場:パルテノン多摩 大ホール
【東京公演】
日程:2025年9月11日(木)〜22日(月)
会場:EX THEATER ROPPONGI
【宮城公演】
日程:2025年9月27日(土)・28日(日)
会場:多賀城市民会館 大ホール
【福岡公演】
日程:2025年10月4日(土)・5日(日)
会場:久留米シティプラザ ザ・グランドホール
【新潟公演】
日程:2025年10月10日(金)・11日(土)
会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
【大阪公演】
日程:2025年10月17日(金)〜22日(水)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
【愛知公演】
日程:2025年10月25日(土)・26日(日)
会場:東海市芸術劇場 大ホール
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/murderfortwo/
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