Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > まもなく開幕 東京バレエ団が上演する巨匠ベジャールの『M』公開リハーサルレポート

まもなく開幕 東京バレエ団が上演する巨匠ベジャールの『M』公開リハーサルレポート

ステージ

ニュース

ぴあ

東京バレエ団『M』公開リハーサルより (Photo:Shoko Matsuhashi)

続きを読む

フォトギャラリー(5件)

すべて見る

東京バレエ団が、20世紀の巨匠、モーリス・ベジャールによるバレエ『M』を上演する。ベジャールが三島由紀夫の人生、その芸術の世界をバレエ化したのは1993年のこと。東京での初演ののちヨーロッパの主要劇場でを巡るツアーを成功させ、その後も上演を重ねてきた東京バレエ団のオリジナル作品だ。開幕を約10日後に控えた東京バレエ団にて実施された公開リハーサルでは、初演時から本作に携わってきた芸術監督・佐野志織の陣頭指揮で、新キャストを含むダンサーたちがベジャールの振付に真摯に向き合う姿があった。

パワフルな男性群舞は東京バレエ団ならでは

三島由紀夫生誕100年の節目の年、5年ぶりの上演が実現する『M』は、『ザ・カブキ』とともにベジャールと作曲家の黛敏郎のコラボレーションにより創作された。潮騒の響きで踊られる女性群舞による海のシーンで幕を開けると、『仮面の告白』や『禁色』、『鹿鳴館』、『豊饒の海』といった三島の作品のイメージが次々と現れ、観る者を一気に三島の世界へと引き込んでゆく。能管や鼓などの和の楽器と、原田節の演奏によるオンド・マルトノを多用した黛のオリジナル曲のほか、ドビュッシー、J.シュトラウスII世、サティ、ワーグナーの音楽が用いられるさまざまな場面をリードしていくのは、三島の分身であるI-イチ、II-ニ、III-サン、IV-シ(死)に、聖セバスチャン。学習院初等科の制服に身を包んだ少年時代の三島の姿も強い印象を放つ。取材当日は、I-イチの柄本弾、Ⅱ-ニの宮川新大、Ⅲ-サンの生方隆之介、Ⅳ-シ(死)の池本祥真、また聖セバスチャンを演じる樋口祐輝(Wキャスト=大塚卓)らの場面を中心に稽古を展開。公開されたのは、まず「武士道」から「月」の場面、その後休憩を挟み「金閣寺」から「IV-シ」の場面と、舞台後半の数々のシーンのリハーサルだ。

東京バレエ団『M』公開リハーサルより(Photo:Shoko Matsuhashi)

鉄アレイで筋肉を鍛えるダンサー、また少年役が『葉隠』の一節「武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり」をそらんじる導入が印象的な「武士道」のシーンは、東京バレエ団ならではの男性群舞の見せ場でもある。邦楽の要素を取り入れた黛の楽曲の独特のリズムの中、じわじわと息を合わせながら踊るダンサーたちは、やがて自らの掛け声、息遣いとともにパワーを爆発させる。4人の三島の分身たちの踊りが加わると、さらに出力はアップ。『ボレロ』をはじめとするベジャール作品の経験を重ねる彼らだからこその迫力だが、ボクシングのパンチを打ったり、厳しいバレエのレッスンに勤しんだりと身体を酷使、彼らの険しい表情が、その運動量を物語る。が、佐野は「トレーニングで自分が変わっていくことに喜びがある。苦しいけれど、その中に喜びがあることを意識しないと、ただ動いているだけになってしまう」と、振付の意味をあらためて伝え、さらに上を求める。

三島の分身を演じるダンサーのうち、柄本、宮川、池本は、前回の上演時が初役での挑戦、今回は生方が初役だが、カンパニーの中核を担う男性ダンサーがこうして一場面に集結する機会は貴重。III-サンのオリジナルキャストでもあるバレエ・スタッフの木村和夫は、自身の経験を若い世代に伝えるべく、細やかなアドバイスを重ねる。

その後、ドビュッシーの「聖セバスチャンの殉教」の壮大なファンファーレが響きわたると、聖セバスチャンが弾むような跳躍としなやかな動きで、あっという間にその場の空気を掴む。2回目の挑戦となる樋口祐輝は、端正な踊りの中に艶やかさを滲ませ、魅力的。Wキャストの大塚卓は初役、ベジャール作品で個性の強い役柄を熱演し、注目される。

新世代の『M』の誕生

男性陣の激しい跳躍技の応酬の先に登場するのは、幻想的な旋律で踊られる海上の月のソロだ。二度目の取り組みとなる金子仁美は、静謐な動きの中に神秘的な美しさをたたえる。ダンサーとして海上の月を踊ってきた佐野が与える、一つひとつのフォルムを丁寧に解き明かすアドバイスに応え、ベジャール作品ならではの母のイメージを体現する。初役でこの役にのぞむWキャストの長谷川琴音は、近年次々と主要な役柄に挑戦し、この役で発揮される新たな一面に期待。

東京バレエ団『M』公開リハーサルより(Photo:Shoko Matsuhashi)

小休止の後は、「金閣寺」。オンド・マルトノの不穏な旋律が響く中、II-ニの宮川とIII-サンの生方によるデュエットが繰り広げられる。古典作品での精緻な踊りでそれぞれに客席を魅了するふたりが、ベジャールの振付をもって個性を発揮、緊張感漲る濃厚な場面に。
IV-シ(死)がその妖しげな力を放出するのは、その直後だ。モーリス・ベジャール・バレエ団(BBL)の小林十市が初演した役柄として知られる。5年前の初役時、小林の薫陶を受けて重責を果たした池本は、強靭なテクニックの持ち主であるとともに、多彩な役柄で強烈な個性を発揮するダンサーだが、集中力を途切れさせることなく、全力でベジャールの振付に向き合う。

東京バレエ団『M』公開リハーサルより、池本祥真(Photo:Shoko Matsuhashi)

舞台では、女を演じるゲスト・プリンシパルの・上野水香をはじめ、オレンジの沖香菜子、女およびヴィオレットの伝田陽美ら女性陣も随所で活躍。今回が初の取り組みとなるダンサーも少なくなく、新時代の『M』の誕生、また、新たな魅力発見の場を期待させる。公演は2025年9月20日(土)から9月23日(火・祝)、東京・東京文化会館にて。

取材・文:加藤智子

★【よくばり❣ぴあニスト限定】東京バレエ団『M』の招待券を2組4名様にプレゼント!

※お申込みページに行くためには「よくばり❣ぴあニスト」の登録が必要になります。
※「よくばり❣ぴあ二スト」とはぴあ(アプリ)を思う存分楽しめるプレミアムな会員です。
初めてご登録された方を対象に、1ヵ月の無料購読体験期間を提供します。
詳細はこちらをご確認ください。

<公演情報>
東京バレエ団『M』

振付・演出・衣裳コンセプト:モーリス・ベジャール
音楽:黛 敏郎、C.ドビュッシー、J.シュトラウス二世、E.サティ、R.ワーグナー

【予定される主な配役】
Ⅰ—イチ:柄本弾 Ⅱ—ニ:宮川新大 Ⅲ—サン:生方隆之介 Ⅳ—シ(死):池本祥真
聖セバスチャン:樋口祐輝/大塚卓 女:上野水香/伝田 陽美 海上の月:金子仁美/長谷川琴音
ヴィオレット:伝田陽美/榊優美枝 オレンジ:沖香菜子/三雲友里加 ローズ:政本絵美/二瓶加奈子

2025年
9月20日(土) 14:00
9月21日(日) 14:00
9月23日(火・祝) 13:00

会場:東京文化会館

公式サイト:
https://www.nbs.or.jp/stages/2025/m/

フォトギャラリー(5件)

すべて見る