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【展示レポート】「神戸六甲ミーツ・アート2025 beyond」 六甲山の自然のなかに61組の作品が点在

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奈良美智《Peace Head》

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兵庫県の六甲山を舞台にした芸術祭「神戸六甲ミーツ・アート2025 beyond」が11月30日まで開幕されている。六甲山の豊かな自然のなかで、奈良美智や岩崎貴宏、岡田裕子ら国内外から61組のアーティストの作品を見ることができる。

「神戸六甲ミーツ・アート」は、2010年からスタートし今年で16回目となる芸術祭。芸術祭にしては珍しく毎年開催され、総合ディレクターの高見澤清隆のもと、これまでに延べ580組以上のアーティストが参加している。今回の芸術祭のテーマは「環境への視座と思考」。一度は荒廃したものの、多くの先人たちの努力により豊かな自然を取り戻した六甲の歴史を踏まえ、参加アーティストたちがそれぞれの作品を発表している。

六甲ガーデンテラスエリアの白水ロコ《山の精霊たち》 

芸術祭の会場となる標高931メートルの六甲山一帯は、神戸市内中心部から公共交通機関で約50分。全9エリアに分かれて作品が展示されており、それぞれのエリアはバスで移動が可能だ。

六甲山の玄関口となるケーブルカーの駅、六甲山上駅、六甲ケーブル下駅も会場として駅舎に作品が展示されている。六甲山上の駅舎内には須田悦弘による彫刻作品3点が、注意して探さないと見つけられないほどにさりげなく展示されている。

須田悦弘《ササユリ、ノブドウ、リンドウ》(一部)

六甲山上駅からすぐ、眺望スポット「天覧台」にあるのは、インド系タイ人アーティスト、ナウィン・ラワンチャイクン+ナウィン・プロダクションの《神戸ワーラー》だ。アーティストは神戸市北野町での綿密なリサーチを行い、古くからさまざまな国を受け入れ、そして移民として旅立つ日本人を送り出してきた神戸の多文化性を描き出した絵画作品と映像作品、インスタレーションで構成した作品を作り出した。

ナウィン・ラワンチャイクン+ナウィン・プロダクションの《神戸ワーラー》

「兵庫県立六甲山ビジターセンター(記念碑台)」、「六甲サイレンスリゾート」は入場無料で作品を鑑賞できる会場だ。岡留優《別荘》は、かつて六甲山に数多く建設された別荘建築に着想を得たもの。6分の1スケールでつくられたドールハウスを舞台に、2週間に1度の割合でパフォーマンスのライブ配信が行われる。

岡留優《別荘》

「トレイルエリア」は、豊かな自然のなかでゆったりと作品を楽しめるエリア。ハイキングルートが長いため、荷物を軽めにし歩きやすい靴と服装で訪れたい。

林廻(rinne)《BED》

キリスト教への信仰心の厚い地元実業家が数世代にわたって避暑地として使用してきた山荘前に設置されているのは小谷元彦の《孤島の光 (仮設のモニュメント7)》 。老朽化が進み、使用に支障をきたしてきた山荘の前で、作者は信仰のかたちを表しているという。

小谷元彦《孤島の光 (仮設のモニュメント7)》 部分
小谷元彦の《孤島の光 (仮設のモニュメント7)》

「ミュージアムエリア」は、ROKKO森の音ミュージアム、六甲高山植物園、新池を展示会場とした、この芸術祭でも最も作品数が多いエリア。ROKKO森の音ミュージアムにはこの芸術祭のキービジュアルにもなり、常設展示も決定した奈良美智《Peace Head》が展示されている。阪神淡路大震災から30年となる節目のこの年に展示が決定された。自然災害や対立に対してどのように向き合うか、平和についてこの作品をきっかけに森の中で考えてみたい。

奈良美智《Peace Head》
遠山之寛《(semi)sphere》
中村萌《Silent Journey》

新池の中にテラス、そして橋を設置した川俣正《六甲の浮橋とテラス Extend 沈下橋2025》は、2023年に設置したテラスと浮橋の周りに、水中に沈んだ状態の沈下橋を設置したもの。9月27日、28日にはこの場所を舞台に、やなぎみわの舞台作品《大姥百合(オオウバユリ)》を上演するという。

川俣正《六甲の浮橋とテラス Extend 沈下橋2025》

山の中腹にある「みよし観音エリア」にあるのはマイケル・リンの《Tea House》。かつて、この場所にあり、地域の人々の記憶にしっかりと刻まれている小さな茶屋の間取りをなぞり、布で仕切りを作っている。

マイケル・リン《Tea House》

隣接する「風の教会エリア」では、安藤忠雄「風の教会」が展示会場となっている。通常は非公開のこの教会で展示されているのは岩崎貴宏の《Floating Lanterns》。あえて壊された状態の建築模型を提示することで、戦争や震災などで失われてしまった建築に思いを巡らすことができる。教会という祈りの場所、安藤建築の特長である頑丈な打ちっぱなしコンクリートという空間とのコントラストも興味深い。

岩崎貴宏《Floating Lanterns》

同エリア内では、営業を終了したホテル旧六甲スカイヴィラ、その離れの建物、六甲山芸術センターも会場となっている。旧六甲スカイヴィラで展示されている岡田裕子《井戸端で、その女たちは》は、かつてラウンジであった薄暗い空間のなかで、岡田が演じる女性作家9名の声を聞くインスタレーション。ときにはユーモラスな会話が挟まれているものの、この9名は、現在まで正当な評価がされていない女性作家であることを知り、そして合わせて展示された資料も見ていると、彼女たちの置かれた境遇に複雑な思いを抱かざるを得なくなる。

岡田裕子《井戸端で、その女たちは》

神戸六甲ミーツ・アートが開催されている六甲山はとても広大で、可能であれば数日をかけて鑑賞したい。チケットはパスポート制となっているので、自分のペースで少しずつ、見て歩き、広大な自然とともに満喫してほしい。

取材・文・撮影:浦島茂世


<開催概要>
『神戸六甲ミーツ・アート2025 beyond』

8月23日(土)~11月30日(日)、六甲山上9会場にて開催

公式サイト:
https://rokkomeetsart.jp/

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2509559

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