人間にとって言語とは何か──介護福祉士/劇作家による新作書き下ろし『砂漠のノーマ・ジーン』を上演 生田みゆきの演出で
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名取事務所公演『砂漠のノーマ・ジーン』チラシ
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すべて見る2025年9月26日(金) 、東京・下北沢の「劇」小劇場にて、名取事務所公演『砂漠のノーマ・ジーン』が開幕する。近年、名取事務所公演でたびたび演出を手がけている、文学座演出部の生田みゆきによる演出で上演するのは、劇作家・甲斐義隆による新作書き下ろし作品。オーストラリアの少数民族が話す、消滅の危機にある言語を覚えているたったひとりの生き残りと、その言語をなんとか採集しようとする言語学者のふたりが繰り広げる物語はサスペンス仕立て。濃密でスリリングな舞台が期待される。
内外の優れた戯曲の上演や、現代韓国演劇シリーズ、パレスチナ演劇上演シリーズなど多彩にプロデュースしてきた名取事務所。気鋭の作家の書き下ろし作品にも積極的で、2025年度はすでに内藤裕子、ピンク地底人3号の新作に取り組んでいる。神奈川県・相模原市在住。介護福祉士でもある甲斐が描き出すのは、“消滅言語”の話し手にまつわる物語。オーストラリアに限らず、消滅の危機に瀕している言語は少なくないと聞くが、自分たちの文明の根本であるひとつの言語が消えてしまうことの重さは、想像を絶する。
物語の舞台となるのは、2000年9月。オーストラリアのダーウィンで、四半世紀前に消滅したと考えられていた言語、ユーリア語の話者が発見される。その女性はある事件の被疑者であり、頑なに黙秘を貫いていた。ところがある日突然、堰を切ったように理解できない言葉を話し始める。言語学者が接触を試みると、知られざる殺戮と収奪と差別に満ちた歴史があらわにされ──。マリリン・モンローの本名をタイトルに掲げた本作で、ユーリア語を話すという女性は、どんな歴史を抱え、何を語るのだろう。物語の展開とともに、人間にとって言語とは何か、また言語と社会の関係について、思いを巡らせる機会となるに違いない。


演出の生田は、名取事務所公演『占領の囚人たち』『屠殺人ブッチャー』ほかにて第31回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞、また『占領の囚人たち』ほかで令和5年度芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞し、話題に。今年6月には名取事務所の舞台で、ピンク地底人3号の書き下ろし『燃える花嫁』を手がけ、架空の日本を舞台とする移民、難民の物語を立ち上がらせた。出演はベルリン在住の俳優、森尾舞と、劇団チョコレートケーキの西尾友樹。「劇」小劇場の空間での、ふたりの息を呑むような競演に注目を。
<公演情報>
名取事務所公演『砂漠のノーマ・ジーン』
作:甲斐義隆
演出:生田みゆき
出演:森尾舞、西尾友樹
2025年9月26日(金)~10月5日(日)
会場:東京・「劇」小劇場
公式サイト:
https://www.nato.jp/prof/prof_2025_noma.html
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