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プラハ・フィルハーモニア管弦楽団がまもなく来日。音楽大国チェコの音楽に浸れる10日間

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プラハ・フィルハーモニア管弦楽団の来日公演が10月4日(土)から始まる。優れた作曲家や演奏家を多数生み出した音楽大国チェコで、輝かしい躍進を続けるオーケストラの濃密かつ芳醇な響きを湛えた演奏に期待が高まっている。

■チェコの“今”を代表するプラハ・フィルハーモニア管弦楽団

東欧のオーケストラには独特の感触がある。それは柔らかくしなやかな弦楽器と瑞々しい管楽器が生み出す芳醇なサウンドだ。特にチェコの楽団は距離も近いウィーンに通じる温かみやまろやかさを有している。そこに清新な活力を加えたのがプラハ・フィルハーモニアである。

1994年に名匠イルジー・ビエロフラーヴェクによって創設され、彼の先導で礎を築いた同楽団は、2008〜15年の首席指揮者ヤクブ・フルシャのもとで大きく躍進。2010年には、「プラハの春」音楽祭において、それまで主にチェコ・フィルが担ってきた開幕日の「わが祖国」の演奏を受け持ち、90タイトル以上のCDも多くの賞を獲得するなど、短期間で同国のトップレベルにまで成長を遂げた。

指揮のレオシュ・スワロフスキーは、チェコの2大巨匠ノイマンとコシュラーの薫陶を受け、ヤナーチェク・フィル、ブルノ・フィル、プラハ国立歌劇場等の首席指揮者を歴任したベテラン。堅牢なアプローチや生気とニュアンスに富んだ音楽は高い支持を得ており、21年に続いてプラハ・フィルハーモニアと共に来日する今回は、なおいっそう緊密な名演を聴かせてくれるに違いない。

■いまや日本の“顔”ともいえるチェリスト、宮田大

今回の日本ツアーの看板曲のひとつ、ドヴォルザークのチェロ協奏曲のソロを弾く宮田大への期待も大きい。

スイスのジュネーヴ音楽院やドイツのクロンベルク・アカデミーで学び、2009年のロストロポーヴィチ国際チェロコンクールにおける日本人初優勝をはじめ、あらゆるコンクールで優勝を果たした彼は、世界的指揮者・小澤征爾にも絶賛された、日本を代表するチェリストである。これまでに、国内の主要オーケストラはもとより、パリ管、ロシア国立響、ハンガリー放送響、スロヴァキア・フィル等と共演。メディア出演も多く、サントリーホール等2000席以上のホールを満席にしたチェロ奏者として、異例の実績でも話題を呼んだ。

彼は豊麗で芯のある音を生かした、雄弁かつスケールの大きな演奏を聴かせる。しかも細部はこまやかでニュアンスに富んでいる。今回のドヴォルザークの協奏曲にも再三取り組み、豊潤かつ壮大な音楽を披露している。そのパフォーマンスはまさに世界レベル。彼のソロを体験するだけでも公演に足を運ぶ価値がある。

■当ジャンルの最高峰、ドヴォルザークの「チェロ協奏曲」の聴きどころ

ドヴォルザークのチェロ協奏曲は、同楽器を代表するだけでなく、古今の全協奏曲の中でも屈指の人気作。チェロの深く豊かな音色を満喫できる上に、哀愁に満ちたメロディを満載した雄大かつ情熱的な音楽を存分に堪能することができる。

すでに国際的な名声を得ていたドヴォルザークは、1892年に渡米し、当地で知った黒人霊歌や先住民の音楽の要素を、故郷ボヘミアの民俗色濃厚な作風に融合させた傑作を生み出した。しかし望郷の念が募り、帰国してしまう。

この曲は、ボヘミアのテイストにアメリカの地元色を加えた作品なのだが、渡米翌年の「新世界より」に比べると郷愁の度合いはグンと強まり、全3楽章・約40分の大規模な構成の中で、民俗的な情感がたっぷりと歌い上げられる。さらに特徴的なのが、協奏曲には稀なほどシンフォニックなオーケストラ。クラリネットが多くの主題を提示するなど、管楽器の活躍も目覚ましい。そして、チェロは朗々と歌い、技巧的な見せ場も多く、独奏者の名技からも当然目を離せない。

■実は「新世界より」以上に郷愁が漂う名曲、ドヴォルザークの「交響曲第8番」

今回の日本ツアーでさらに注目したいのが、ドヴォルザークの交響曲第8番だ。ドヴォルザークの9つの交響曲の内、第7番までの各曲はブラームスやワーグナー、第9番「新世界より」はアメリカの現地音楽の影響が反映されている。それゆえ地元ボヘミア色が全編を貫く交響曲は唯一この第8番のみ。ドヴォルザークの最大の魅力であるメランコリックな哀愁をたっぷりと味わえる。

大家になりつつあったドヴォルザークは、自然豊かなボヘミアに別荘を得たのを契機に、絶対音楽と民俗音楽が融け合った独自の作風を確立していく。その流れの中で生まれた本作は、1889年の秋に一気に作曲された。すなわち巨匠円熟期の音楽性がフルに発揮された充実作なのだ。

第1楽章の、冒頭の憂いに満ちたメロディにまず惹きつけられる。第2楽章は田園的で哀感を湛え、ボヘミアの森や高原等の自然を彷彿させる雰囲気が魅力的だ。第3楽章はスラヴ舞曲を思わせる音楽で、切なさを湛えた美しさが支配する。この楽章は全曲の中でも特に印象深い。第4楽章は華やかで愉しいフィナーレ。主題をもとに変化に富んだ変奏が展開される。

「自然交響曲」とも称されるこの曲を、第9番「新世界より」以上に好むファンも少なくない。未知の方は今回ぜひ耳にして欲しいし、聴けば好きになること間違いない。

 

■スラヴの名作が目白押し

今回の日本ツアーには、他にもスラヴ系の名曲がズラリと並んでいる。その中で目を向けたいのは、“チェコ国民楽派の祖”スメタナの歌劇「売られた花嫁」序曲だ。劇自体はチェコの国民オペラを代表する歴史的な名作。序曲は、細かな動きが絶え間なく続く、活気に充ちた舞曲風の音楽で、弦楽器の速弾きが耳を奪う。

ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は、ロシアン・ロマンに溢れた名作。ポピュラー音楽になったメロディを複数含む明快なロマンティシズムと、ピアノの名人芸を併せて楽しむことができる。今回ソロを弾く松田華音は、幼少期からモスクワで学んだ、ロシアの空気を肌で知る奏者。しかも、高度な技巧や力強い音色のみならず、自分の言葉で音楽を語る日本人離れした表現力の持ち主だ。ここは彼女が得意とするラフマニノフの代表作にぜひ触れたい。

ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」とスメタナの「モルダウ」は、言わずと知れたチェコの名刺代わり。前者の豊富なメロディ、後者の哀感漂う描写は、必ずや万人を魅了するだろう。

文:柴田克彦(音楽評論家)

「プラハ・フィルハーモニア管弦楽団」来日公演

■チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2558147

10月4日(土)~10月13日(月・祝)
東京オペラシティ、東京芸術劇場、横浜みなとみらいホール ほか
大阪、名古屋、浜松、栃木、香川で開催 全9公演

管弦楽:プラハ・フィルハーモニア管弦楽団 指揮:レオシュ・スワロフスキー
ソリスト:宮田大(チェロ)、松田華音(ピアノ)※ソリストは公演地別に1名が出演

予定曲目
ドヴォルザーク:チェロ協奏曲、交響曲第8番、交響曲第9番「新世界より」
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、スメタナ:交響詩「わが祖国」より≪モルダウ≫ ほか
(※公演地により曲目別)

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