独特な女性表現で知られる日本画家・北澤映月の回顧展が平塚市美術館で 初期から晩年まで約150点で画業の歩みをたどる
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北澤映月《祇園会》1936 年 京都国立近代美術館蔵
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すべて見る京都市に生まれ、昭和の時代に日本美術院で活躍した日本画家・北澤映月(きたざわ えいげつ、1907~1990)の33年ぶりとなる回顧展が、10月11日(土)から11月30日(日)まで、神奈川県の平塚市美術館で開催される。
上村松園(うえむら しょうえん)や土田麦僊(つちだ ばくせん)に師事した映月は、麦僊没後の1938年から再興院展に入選を重ね、1941年には小倉遊亀(おぐら ゆき)に続く女性二人目の日本美術院の同人に推挙された。一貫して女性像をテーマとし、当初は性格描写に優れた人物表現を行なっていたが、戦後は現代的な女性風俗を扱いながら、西洋絵画の影響を受けて重厚な色面表現へと移行した。1960年には、住み慣れた京都を離れて東京に移住。1970年代に入ると、細川ガラシャや淀君などの歴史上の人物に取材して、映月独自の女性観を加味した華麗かつ情感豊かな画境へと到達する。健康的で知的な女性像が、巧みな構成や艶やかな色彩によって表された清新な作品が高い評価を受けている。

今回の展覧会は、同館が映月の作品と下図、資料類の一括寄贈を受けたことをきっかけに企画されたもの。同館の所蔵作品に、戦前の代表作《祇園会》をはじめとした他館や所蔵家からの出品作も加え、初期から晩年に至る代表作と下図や写生、印章、書簡などの貴重な資料を含む約150点によって、映月の真摯な画業を振り返る大規模な展示となっている。
今回の見どころのひとつは、初公開作品が複数あること。松園の弟子として「桜園」の画号を用いていた画業初期の貴重な作品も初公開されるのが興味深いところだ。また今回は、日本画を制作するうえで重要な下図やスケッチを本画と並べて見比べることで、画家が制作において留意していた造形上の工夫にも迫れる展観となっている。

映月の回顧展としては、全国的には1992年の東京ステーションギャラリーと京都市美術館で開催された追悼展以来33年ぶり、神奈川県内では初の本格的な回顧展となる。装飾性と写実性がバランスよく共存した映月の魅力的な女性表現を、この機会にゆっくりと味わいたい。なお、同時開催の特集展『国立劇場の名品展―鏑木清方、小倉遊亀、東山魁夷、髙山辰雄、加山又造…』(こちらの会期は、2026年2月15日まで)では、現在閉場中の国立劇場を彩ってきた日本画を中心とした36点の作品も鑑賞できる。
<開催情報>
『没後35年 北澤映月展』
会期:2025年10月11日(土)〜2025年11月30日(日)
会場:平塚市美術館
時間:9:30~17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜(10月13日、11月3日、11月24日は開館)、10月14日(火)、11月4日(火)、11月25日(火)
料金:一般900円、大高500円 ※土曜は高校無料
公式サイト:
https://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/art-muse
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