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「何事にも執着したくない」俳優・豊田裕大が考える感情との向き合い方

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豊田裕大 (撮影/米玉利朋子)

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欲望が強くなりすぎた先にある感情、執着。

どうしてもマイナスなことに捉えられがちな言葉だが、何かを強く思うことはそんなに悪いことなのだろうか。

10月3日(金)に公開される映画『火喰鳥を、喰う』は、ミステリーサスペンスでありながらそんな“執着”についても考えさせられる作品。

そこで物語のキーパーソンとして出演する豊田裕大に“執着”について聞くと「生きていく上で何事にも執着したくない」と本音をこぼす。その理由や、それでも執着してしまいがちな物事、そして映画の見どころや俳優としてのキャリアについてインタビューを行った。

作品を通して感じた祖父の戦争での経験

本作は第40回横溝正史ミステリー&ホラー大賞で大賞を受賞した原浩の同名小説を映画化したもの。

物語の舞台は、信州のとある村。そこに暮らす久喜雄司(水上恒司)と夕里子(山下美月)夫婦のもとに、雄司の祖父の兄で、太平洋戦争末期に戦死したとされる久喜貞市(小野塚勇人)の遺品が届いたのをきっかけに、不可解な出来事が起こり始めるといった内容だ。

この物語について、豊田は「いや、僕ホラー、苦手なんだよなぁって思いながら、最初は原作を手に取りました」と意外な素顔を明かす。しかし、読んでいくうちに物語に引き込まれたようで「1回目は少し複雑で、これどういうことなんだろうっていう感想を抱いたんですけど、何回も読んでいくうちに、いろんな解釈がある本だなと思いました」とコメント。

さらに、繰り返し読み、徐々に理解が深まっていく中で「執着の話とか、世界線の話とかって、なかなか現実世界で起こり得ないような話だと思うんですけど、僕自身は強く演じることで、自分に暗示をかけるというか、そういう部分があるので。そことリンクしているのもおもしろいし、別世界って、もしかしたらあるのかもなと思いながら読み進めていきました」と豊田から見た、本作のおもしろみを語ってくれた。

また、ミステリー作品でありながら、戦時中というギリギリの極限状態の中で“火喰い鳥を見る”という人の心理も本作のカギとなる要素。これについて豊田は、自身の祖父との経験を思い出したと言う。

「綺麗事抜きじゃなく描かれているのが、僕自身はすごく好きでした。というのも、僕が大人になってから、戦争映画を見たときに、たまたま祖父に“当時はどうだったの?”って聞いたことがあるんですね。そのときに、祖父が涙を流しながら、満州の戦争に行って日本に戻るときに、いろんな金品を奪われて、人も殺されて……みたいな状況を経験しているという話をしてくれたことがあって。改めて戦争とか、そういうものが起こらないと良いなぁっていう風には思ったので。祖父がそれまで泣くところなんて、見たことがなかったので、そのときから強く思っています」

演じた亮は「物語の中で別のカギを握っている人物」

豊田が演じたのは、夕里子(山下美月)の弟で大学生の瀧田亮という役どころだ。

豊田自身は、この役の物語上での立場を「物語を別の形で導いていく、視聴者と同じ立場に立てる役でもあるし、物語の中で別のカギを握っている人物だなっていう印象を受けました」と分析する。

さらに、そんな亮というキャラクターについては「ちょっと冗談を言ったり、懐に入るのがうまかったりするので、軽薄に見られてしまう部分もあるんですけど、そうならないように作っていきました。僕自身、末っ子なので、役を通して自分の体験が重なるときって、意外とすんなり役に入れるときがあるなと思っていて。そこは楽しかったですね」と続けた。

そんな亮を演じる上で難しかった点については「最後のシーンが1番大変でした」とのこと。

「現実にいるのかいないのか、少し人間を逸脱したような存在だなって、脚本を読んだ時に思って。それが表現できれば良いなと思ったんですけど、やっぱ思いを伝えていくうちに、どんどん人間味が出ちゃうというか、ちょっと声も強くなっちゃって…」とラストの重要なシーンにおける、繊細なバランス感覚について話す。

さらに「日記を見て気が動転してしまうっていう状況や、もう1つの世界線に飲み込まれたのかわからないけど雄司に思いを託すシーンというのは、自分の中で初めてのシーンでした。そのタイミングで、心がキュッと緊張しないように、監督を始め現場の皆さんがフランクな空気作りをしてくれたおかげで挑戦できたので。本当にありがたかったです」と共演者・スタッフへの感謝も付け加えた。

「生きていく上で何事にも執着したくない」

この作品のテーマの1つに“執着”というワードがある。これについては「撮影中は、あんまり意識していなかったんですけど、僕、生きていく上で何事にも執着したくないなって思っているんです」と豊田。

その理由を「後悔を残したくない、みたいなことと一緒で、できる限りのことを尽くしていきたいんですよ。そういうふうに改めて思ったし、思いの強さみたいなところは、自分の背中を押してくれるようなところもあるものだなって再確認しました」と述べる。

では、“これまでの人生、豊田は何事にも執着してこなかったのか?執着してでも手に入れたいと思った経験はないのか?”――ふと浮かんだ疑問について、豊田にぶつけると「あります。最近で言うと“食”ですかね。食べたいものばかりに執着しています」とチャーミングに回答。

意外な答えだったため“職業柄、役や作品に対して執着をしてしまうことはないのか?”と聞くと少し考えて、豊田は話し出した。

「やってみたかった、とか、いいなぁって思っていた小説が映画化されていたりすると“あ、そうか”とは思います。でも、どこか少し、自分の力じゃどうにもできないところってあると思うんです。仕事も、生きていく上でも。だから、すっぱりと諦め切れると言うわけではないんですけど“次だよな”って思って、切り替えて次に向かうことで、その執着を沈めていますね」。

壁にぶつかった時の乗り越え方は「教えてほしいくらい」

芸能界入りのきっかけはメンズノンノ専属モデルオーディションだが、その一方で、近年は役者としても頭角を現し続けている豊田。

2025年の活躍ぶりを見ていると日曜劇場『御上先生』に始まり、金曜ドラマ『DOPE 麻薬取締部特捜課』などの話題作への出演が続いている印象だ。

そんな豊田について、俳優としてのキャリア初期を振り返ってもらうと「何もわからなかったので、辛いと思うことはありました。それは今でもそうなんですけどね」と一言。「わかっていても、表現できていないなみたいなときはとても苦しいんです」と役者としての苦悩をこぼす。

そのような壁にぶつかった時のことを問うと「誰かに話すときもあるし、作品を見るとか、マネてみるとか…。でも、やっぱり瞬間だけ切り取っても難しいよなとは思います。本当に“わかっていても、表現できていない”ときの乗り越え方は教えてほしいくらいです」と笑った。

しかし、お芝居については着実に楽しさも感じているとのこと。

「台本をだんだん読めるようになってきたり、あとは自分がやってることが社会にメッセージを届けられるみたいなところを、すごく楽しいのかもって思う瞬間があります。今も未来も過去も、全部存在した時間に飛んで、家で考えていたことが、作品になって届くっていうか、めっちゃカッコ良い言葉で言うと、個人と社会の対話みたいなことをできるのが、すごくおもしろいなって感じていますね。ちょっと壮大すぎるかもしれないんですけど」

さらに、豊田は次のように続ける。「特に『御上先生』や『コスメティック・プレイラバー』に出演した際に、そう感じたんですよね。SNSで盛り上がったり、メンズノンノの現場に行って“見たよ”って言ってもらえる作品って怖さもありますけど、社会に出ている感じがするんです。自分だけが作ったものではないものの、自分が作ったものが誰かに認められるって、嬉しいんだなって。それが楽しいんですよね」とまっすぐな目で話してくれた。

そんな豊田に最後、今後の役者としてのキャリアプランを聞いてみると「うわー、なんですかね…」と少し迷った後で「答えがないような作品をやってみたいなとは思います」と一言。

「どっちが悪なのか、どっちが悪じゃないのかとかを考えさせるような作品も、おもしろそうだし。恋愛ものも、やってみたい。作品ごとにブラッシュアップしていくことで、もっとお芝居が思うように表現できるようになれば嬉しいなって思います」と前のめりに話してくれた。

撮影/米玉利朋子、取材・文/於ありさ

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<作品情報>
『火喰鳥を、喰う』

10月3日(金)全国公開

(C)2025「火喰鳥を、喰う」製作委員会
配給:KADOKAWA、ギャガ

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