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【『ユイカ』ライブレポート】初の全国Zeppツアー『Tsukimisou』完走 二十歳の新たな幕開けと東京国際フォーラム公演発表

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『ユイカ』TOUR「Tsukimisou」 Photo:Viola Kam (V'z Twinkle)

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Text:沖さやこ Photo:Viola Kam (V'z Twinkle)

夏の夕方から朝にかけて白い花を咲かせ、翌朝のしぼむ頃には薄いピンク色に変わる植物である月見草(ツキミソウ)。そんな移ろう花の名前を掲げて開催された、シンガーソングライター『ユイカ』の初の全国Zeppツアー『Tsukimisou』は、彼女の歩んできた人生を投影した、非常にドラマチックなライブだった。

『ユイカ』は16歳で制作した初のオリジナル曲「好きだから。」や2024年リリースの「すないぱー。」などがバイラルヒットし、20歳の誕生日を迎えた今年1月には実写のアーティスト写真を初めて公開した。その後もメディアや夏フェスなどに多数出演し、ドラマタイアップ曲の書き下ろしを手掛けるなど、精力的な活動を続けている。東京初ワンマンであり今ツアーファイナルのZepp Haneda(TOKYO)公演もチケットはソールドアウトし、若者を中心に様々な世代の男女が集まったフロアからも彼女の音楽が広く愛されていることがうかがえた。

夕暮れから夜に移り変わる様子を想起させるSEが流れると、バックバンド4名に続いて『ユイカ』がステージに現れ、「一途な女の子。」でライブの幕を開ける。楽曲タイトルどおりのキュートなボーカルと、迫力あるバンド演奏のコントラストも小気味よい。続いての「わがまま。」ではギターを置いてハンドマイクに切り替え、ステージを歩いたりスキップしたりしながら笑顔で観客に手を振って歌唱する。ファルセットと地声を巧みに使い分ける歌声からは、愛嬌と切なさがダイレクトに伝わってきた。

再びギターを持って披露した「ひそかな願い。」では観客のクラップやシンガロングが華やぎ、バンドの導入からなだれ込んだ「嘘」はロックサウンドに乗せて苛立ちと悲しみがない交ぜになったボーカルを響かせる。冒頭4曲から『ユイカ』が多面性を持ち合わせたアーティストであることをあらためて思い知らされた。

MCでは、観客とコミュニケーションを取りながら、テンポよく関西弁のトークを展開する。バックバンドのメンバーと今年4月に開催したアジアツアーでのプチ心霊体験の話題に花を咲かせ、その話の流れから「ゆうれいになりたい」へ。ソフトなボーカルに加え、間奏で幽霊のポーズをしながらバンドメンバーに近づいたりと、茶目っ気溢れる和気あいあいとした空間を作り出す。すると「イマジナリーフレンド」からは一転、ポップでありながらもセンチメンタルなムードで包み込み、星屑のような照明とともに夜の要素を深めていった。バラード「17さいのうた。」の切実なボーカルは、彼女の胸の奥底に今も渦巻く当時の思いがありありと浮かび上がるようで、その迫力に息を呑んだ。

ライブ中盤ではアコースティックパートを設ける。『ユイカ』はスツールに腰掛けて、バンドメンバーもカホンやアップライトベースなどを持ち寄り、焚火を囲むようにステージ前方へ集った。バンドメンバー紹介を兼ねて、『ユイカ』は4人+ステージ裏のマニピュレーターに「演奏していて一番楽しい『ユイカ』の楽曲」を尋ねる。5人の回答が出揃った後にメンバーが『ユイカ』へ同じ質問を振ったところ、彼女は「自分の限界値で曲を作っているからどの曲も難しい」と苦笑いしつつ、「ギターも歌も楽しい」「ライブで歌っているとみんなと一緒になれている感覚がある」という理由で「ラストティーン」を挙げた。

「おくすり」のアコースティックアレンジで夢見心地のような甘い世界にいざなうと、次曲では観客に「「序章。」と「運命の人」のどちらかを選んでほしい」と呼びかける。フロアの意見が割れに割れて収拾がつかない状況に、『ユイカ』はその場を収めるように「運命の人」のサビを歌い出し、その後に「序章。」をフル尺で披露した。切なさとあたたかさを持ち合わせたサウンドに、観客はじっくりと耳を傾ける。夜が深くなるような雰囲気も相まって、一言一言が観客に向けたあたたかい子守歌のように優しく響いた。

するとバンドメンバーが袖に下がり、ギターを抱えた『ユイカ』のみがステージに残ると、シンガーソングライターとして音楽を志すきっかけとなった弾き語りのパフォーマンスで、このツアーのために書き下ろした新曲「私が選んだもの」を披露する。彼女は同曲を歌う前に、この曲に対する思いをしたためた手紙を読み上げた。そこに綴られていたのは、自分の弱いところを見られたくなくて、いつも幸せな歌を書こうと頑張っていたこと、この新曲はそんなことを全部取っ払って今いちばん歌いたいことを書いたこと、生まれつきの弱視で左目がほとんど見えておらず、不都合は感じていないもののふとしたときに「この左目が見えたら、どんな世界が広がっているんだろう?」と思うこと、両目で世界を見られた人がとてもうらやましいと感じることなど、彼女が胸の奥に抱えていた本音だった。

その手紙は「何かを背負って生きることになった人は『なんでわたしだけ?』って思ったことがあると思います。わたしもです。でも生まれる前に、何かを自分自身に学ばせたくて敢えて自分でそういう人生を選んだと考えると、少しラクに生きられるなって思えたんです」「誰かの逃げ道を、わたしの逃げ道を作るために書いた曲です」と締めくくられた。とても素直な言葉たちを、ギターをかき鳴らしながら感情的に歌う彼女の歌も姿も、とても凛々しく美しい。『ユイカ』が表現者としてまたひとつ大きく花開いた瞬間を目の当たりにした。

空になったステージにフクロウの鳴き声が響き、そこにビートと幻想的な音が重なると小鳥の囀りが聴こえてくる。朝がやってきた。バンドメンバーがステージに戻り夜明けを彷彿とさせるインタールードを演奏すると、衣装とヘアチェンジをした『ユイカ』が再び観客の前に現れる。桜色の照明に照らされながらギターを抱えて「恋泥棒。」を歌い上げ、「みんなラストスパートです、いけるかー!」と笑顔で呼び掛けると、「紺色に憧れて」「ラストティーン」と会場をポジティブなムードに染め上げた。本編ラストは「すないぱー。」。ハンドマイクにチェンジし、ペンライトを持ってステージを闊歩したり、サビでワイパーを促したり、ジャンプで喜びをあらわにしたり、エアー式キャノン砲で自身のグッズを客席に投げ込んだりと、ヒットソングならではの祝祭感溢れるパフォーマンスを繰り広げた。

アンコールではエレキギターを肩に掛け、「新曲やります!」とリリースされたばかりの最新曲「ローズヒップティー」を披露する。硬質なバンドサウンドも影響してかちょっとひねくれたクールなアプローチが際立ち、スパイスの効いたニュータイプの『ユイカ』を爽やかに印象づけた。そしてMCにて「重大発表!」と前置きし、2026年9月21日(月・祝)に東京国際フォーラム ホールAにて『『ユイカ』LIVE「Sanvitalia」』を開催することを発表すると、客席からは大きな歓声と拍手が沸く。同会場は彼女が大好きなアーティストを初めて観に行った思い出の場所であり、いつかライブをしてみたいと夢見ていた目標のひとつだそうだ。「1日限りのライブとなるので、絶対絶対会いに来てください!」と気合いをのぞかせる彼女に、観客もフレッシュな声援を浴びせた。

ギターを抱えた『ユイカ』はあらためて観客に感謝を告げ、「たくさん愛をくれる人に、たくさん愛を返したい」「これからもいっぱい歌うし、いっぱい曲を書きます。みんなにたくさん聴いてもらえるアーティストになりたいと思っています」と言うと、「好きだから。」でツアーを締めくくる。ぬくもり溢れる等身大の歌声に観客も心地よく体を揺らし、それに合わせて『ユイカ』も感慨に満ちた笑顔で首を左右に動かす様子は、お互いがお互いにとってヒーローであることを十二分に物語っていた。

二十歳を迎えてさらに果敢にチャレンジを重ね、ファンとの信頼関係も深めた『ユイカ』は、この先もその光を絶やさずに育み、広げ続けていくだろう。ツアーファイナルでたどり着いた新しい朝の幕開けは、とても柔らかく可憐で眩しかった。

<公演概要>
『ユイカ』TOUR「Tsukimisou」
2025年9月26日 東京・Zepp Haneda(TOKYO)

【Setlist】

01. 一途な女の子。
02. わがまま。
03. ひそかな願い。
04. 嘘
05. ゆうれいになりたい
06. イマジナリーフレンド
07. 17さいのうた。
08. おくすり
09. 序章。
10. 私が選んだもの
11. 恋泥棒。
12. 紺色に憧れて
13. ラストティーン
14. すないぱー。
EN1. ローズヒップティー
EN2. 好きだから。

<リリース情報>
「ローズヒップティー」

配信中
配信リンク:https://yuika.lnk.to/rosehipteaPR

「ローズヒップティー」ジャケット

<ライブ情報>
『ユイカ』LIVE「Sanvitalia」

2026年9月21日(月・祝) 東京国際フォーラムホールA
開場 18:00 / 開演 19:00

【チケット情報】
指定席:7,700円(税込)
最速先行受付:10月13日(月・祝) 23:59まで
https://w.pia.jp/t/yuika-sanvitalia/

『ユイカ』オフィシャルサイト
https://www.universal-music.co.jp/yuika/

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