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柚香光、ミュージカル『十二国記』で挑む“ふたり1役”の試み「原作への敬意を胸に」

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柚香光 (撮影:源賀津己)

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1991年に刊行が始まって以来、シリーズ累計1300 万部を突破している (2025年1月現在)大人気ファンタジー小説『十二国記』(小野不由美作、新潮社刊)。2002年にアニメ化、2019年には18年ぶりの新作長編が刊行されて社会現象ともいえる盛り上がりを見せるなど、現在まで熱い支持を得ている日本を代表するファンタジー小説だ。今回は、シリーズ本編の第1作にあたる『月の影 影の海』 をもとに世界で初めてミュージカル化。壮大なスケールで描かれる物語を舞台上に現出させるため、スタッフ・キャスト共に最強の布陣が揃った。 中でも注目は、主人公である平凡な女子高生・中嶋陽子を異界に連れ去られた後、厳しい経験を重ねながら変化していく陽子(ヨウコ)を元宝塚歌劇団トップスターで退団後は各方面で活躍する柚香光と、現実世界の陽子を『レ・ミゼラブル』のコゼット役など可憐な印象の加藤梨里香が、ふたりで演じる点。Wキャストではなく、“ふたり1役”で陽子の成長を描く演出に期待が高まる。柚香に本作への思いを聞いた。

原作に心を揺さぶられて「言葉の数々に心をグッと掴まれました」

宝塚在団中は、眉目秀麗といった佇まいと空気を変えてしまうような抜群のダンス力、血肉の通った繊細な演技力とで、男役のひとつの完成形を見せた柚香。2024年に退団後もその唯一無二の個性によってダンス公演や舞台への出演が続いているが、今回は本格ミュージカルに初出演、かつ東宝ミュージカル初主演となる。

「原作からスタッフ、共演の方まで素晴らしい方たちが集結した作品に出演させていただけることが本当にありがたいです。宝塚退団後の今というタイミングでこの作品、この原作に出合えたことで学ばせていただくことはすごく大きいと感じています。身が引き締まる思いですし、同時に、原作ファンの方やミュージカルファンの方にも 『いい舞台だ』と思っていただける舞台にしたいという気持ちでいっぱいです」と柚香は話す。

1991年発表の『魔性の子』で始まった本シリーズは、私たちの住む現実世界とも繋がる異界〈十二国〉を舞台とした大河ファンタジー。天意を受けた霊獣“麒麟”が王を選び、王が国を治めてゆく物語が多くの謎と共に描かれる。柚香は出演に際し、原作を読んで心を深く揺さぶられたという。

「スケールの大きさはもちろん、ファンタジーとアクションが絡み合いながら展開していくのも夢中になりましたし、その中にある言葉の数々にも心をグッと掴まれました。陽子の行動を追いながら、読んでいるこちら側にも“こういうとき、あなたは一体どうしますか?”と問われているような。あなたは何をもって生きていますか、周りの人にどう接していますか、生きるとは、人生とは……。さまざまなことを問われているように感じ、ハッと気づくことがたくさんありました」と率直に心中を語る。

「そういった意味でもすごくパワーのある小説なのだということを感じましたし、多くの読者を惹きつける理由も分かった気がします」と、原作へのリスペクトをにじませる。

柚香が演じる陽子(ヨウコ)は、現実世界の陽子(加藤)が異界へ行った後の姿。同一人物なのだが、生きのびるために厳しい経験を重ねて、姿自体も変わっているという設定だ。

「ふたりで1役というのは初めてです。私としてもいかに(加藤)梨里香さんと心を通わせて、ヨウコとして中嶋陽子という人間を演じられるか、ふたりでマッチングしていけるかという点を意識して演じたいです。梨里香さんは本当に可愛らしい方で、美声の持ち主。私も宝塚で歌ってきましたが、やはり男役としてなので、これからどんな風に梨里香さんとマッチしていけるのかというのが楽しみです。今の段階では、私たちはまったく違うタイプなので、お客様もちょっと不思議な感じかもしれませんが……」と微笑む柚香。

「十二国記」『月の影 影の海』原作書影オマージュビジュアル

インタビューに先立って行われた製作発表では、原作本の新しい書影の披露も行われた。『十二国記』を象徴するイラストである山田章博による『月の影 影の海〔上〕 十二国記』の装画を、ヨウコの扮装をした柚香の写真で再現する新ビジュアル。「イラストのポーズをそのまま再現していらっしゃるんですよ! すごいです!」と興奮気味の加藤を、笑顔で見守る柚香。宝塚時代にも相手役とのコミュニケーションを欠かさなかった彼女だけに、“ふたり1役”の大きなハードルを乗り越える本番に期待大だ。

なお新ビジュアルとなる『月の影 影の海』上下巻(新潮文庫)のミュージカル記念特別フルカバーは、9月12日より発売中。原作ファンも、初めて読むというミュージカルファンも、この機会にぜひ手に入れておきたい。

役づくりの時、意識しているのは“原作が何より一番”ということ

宝塚在団中はその美麗な容姿と的確な演技力もあいまって、複数の原作物の作品に出演。『はいからさんが通る』の伊集院忍や『花より男子』の道明寺司など当たり役も多く、原作から抜け出してきたような佇まいと、柚香ならではのプラスアルファを加えた役づくりには定評がある。

「原作物を演じる時に意識しているのは“原作が何より一番”ということ。舞台ファンの方や私のファンの方に楽しんでもらいたい気持ちはもちろんなのですが、原作ファンの方にも喜んでいただけるというのが、やはりとても大切だと思っています。原作を愛していらっしゃる方の思いはとても熱くて大切なもの。その思いを傷つけるようなことは絶対したくないですし、原作者の先生が描こうとしていらっしゃるものは何なのか、そこを追い求めることで役づくりに繋げたいといつも思っています」と真剣な表情を見せる。「稽古場でも家でも常に原作本を片手に持って、悩んだり迷ったりしたらすぐに確認するようにしています」と役づくりの一端を明かしてくれた。

一方で、ハードなアクションシーンも見どころのひとつ。製作発表では演出の山田和也が本作の世界観について「“ファンタジー”だけどすごくリアル感がある」と話していただけに、舞台上でも相応のハードさが求められそうだ。

「この作品ではアクションというのも大事な表現のひとつになっているので、観ている方に臨場感を実際に感じていただけるような、お芝居の緊張感がそこで一気に高まるような、そういうアクションを出来るように取り組みます。対人間だけではなくて、いろいろな相手への立ち回りも皆様にご覧いただけるように、お稽古に励んでいます。そこもぜひ楽しみになさってください」と笑顔を浮かべた。

製作発表では柚香と加藤、山田のほか、楽俊(らくしゅん)役の太田基裕と牧島 輝(Wキャスト)、景麒(けいき)役の相葉裕樹も登壇。笑い声も漏れる和気あいあいとした雰囲気が印象的だった。

「改めて皆さんと一丸となってお客様に喜んでいただける舞台を作りたいという思いが湧いてきました。そして同時に原作者の小野(不由美)先生に喜んでいただける舞台を作りたいという気持ちも、より強くなりました。当たり前のことかもしれませんが、世界で一番作品に対しての強い思いを抱いているのは原作者の先生でいらっしゃると思うので、小野先生の描きたい世界というものを探して、さらに探して、勉強して、学んで、怯まず作品に向かっていければと思っています」と静かに決意を口にした。

「先ほどの“言葉”のお話になるのですが、作中にポンと言葉があっても、それを正しく読み解くのってすごく難しい。けれどもそれを書かれた先生がどういう思いでその言葉を選んで、どういう思いで綴っていったのかというところまで思いを馳せていけば、作中に込められた“願い”や“祈り”、“問い”などが分かっていく気がするんです。そこに至るまで少しずつでも前に進めることを信じて、お客様に良い舞台をお届けできるように努めたいです」と語った柚香。自身にとっても新境地となるであろう本作の、幕が開く日が待ち遠しい。

取材・文:藤野さくら 撮影:源賀津己
ヘア:小林雄美 メイク:佐藤裕太 スタイリスト:宮増芳明
衣装協力:人差し指リング ¥24,200・小指リング ¥20,900(グロッセ/問い合わせ グロッセ・ジャパン TEL:03-6741-7156 営業時間:月~金10:00~17:00※土日祝・年末年始・夏季休暇は除く)


<公演情報>
ミュージカル『十二国記  -月の影 影の海-』

原作:小野不由美『月の影 影の海 十二国記』(新潮文庫刊)
脚本・歌詞:元吉庸泰
音楽:深澤恵梨香
演出:山田和也

【キャスト】
ヨウコ(中嶋陽子):柚香 光
陽子(中嶋陽子):加藤梨里香
楽俊:太田基裕・牧島 輝(Wキャスト)
蒼猿:玉城裕規
舒栄:原田真絢
延王:章平
景麒:相葉裕樹

【東京公演】
2025年12月9日(火)~29日(月)
会場:日生劇場

【全国ツアー】
福岡公演
2026年1月6日(火)~11日(日)
会場:博多座

大阪公演
2026年1月17日(土)~20日(火)
会場:梅田芸術劇場 メインホール

愛知公演
2026年1月28日(水)~2月1日(日)
会場:御園座

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/12kokuki/

公式サイト:
https://www.tohostage.com/12kokuki/

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