『装いの翼 いわさきちひろ、茨木のり子、岡上淑子』ちひろ美術館・東京で 「装い」をテーマに戦時下を生きた3人の女性作家の素顔に迫る
アート
ニュース

いわさきちひろ《白いマフラーをした緑の帽子の少女》1971年
続きを読むフォトギャラリー(15件)
すべて見る2025年10月31日(金)より、練馬区下石神井にあるちひろ美術館・東京では、『装いの翼 いわさきちひろ、茨木のり子、岡上淑子』を開催する。同展では、2025年9月刊行の行司千絵・著『装いの翼 おしゃれと表現と――いわさきちひろ、茨木のり子、岡上淑子』(岩波出版)を起点として「装う」ことを喜びとしながら、多感な時期を戦禍のなかで過ごした、いわさきちひろ(1918-1974)、茨木のり子(1926-2006)、岡上淑子(1928-)の3人を取り上げ、それぞれの美意識や生き方、自由と平和を求める共通の思いを浮き彫りにする展覧会だ。
戦後の日本を代表する絵本画家・いわさきちひろは、大正デモクラシーの機運が高まる東京で、進取の気風に富んだ家庭に育ち独自の美意識を育んだ。第二次世界大戦後、彼女が描いた絵本には、趣向をこらしたファッションに身をつつんだ少年少女が数多く登場する。同展ではそんなちひろの作品とともに、彼女が手作りしたワンピースや、ブティックであつらえた、こだわりのコートなども展示する。
茨木のり子は、『私が一番きれいだったとき』や『倚りかからず』などの詩集が知られる。戦後の混乱期を生きた女性の心情を代弁した気骨ある詩人だが、プライベートでは衣・食・住に工夫を凝らし、夫を愛する生活者だった。同展では彼女のしなやかな感性を見ることができる愛用の品や、没後に発見された夫への想いを綴った詩を収めた「Yの箱」なども紹介する。

岡上淑子は、進駐軍が置いていった海外の雑誌の写真などを切り貼りすることで、幻想的なフォトコラージュを生み出した、2000年以降、再評価が進んだアーティストだ。美術家としての活動は1950年頃から7年ほどと短い間だったが、欧米のモードを取り入れたシュールなイメージは、見る者を圧倒してやまない。

まったく無関係のように感じられる3人だが、その共通するところは、戦時下に青春時代を送った女性たちの、自由と美への憧れの表出ということができるだろう。自由に装い、それ自体を楽しむという行為が、平和な環境なくしてはあり得ないことも、あらためて考えさせられるに違いない。
<開催概要>
『装いの翼 いわさきちひろ、茨木のり子、岡上淑子』
会期:2025年10月31日(金)〜2026年2月1日(日)
会場:ちひろ美術館・東京
時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜(祝日の場合は開館、翌平日休)、12月28日(日)〜1月2日(金)
料金:一般1,200円、大学・65 歳以上900円
公式サイト:
https://chihiro.jp/tokyo/
フォトギャラリー(15件)
すべて見る