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ささいな変化が楽しみになるように ウォーリー木下演出×薮宏太主演、音楽劇『MONDAYS』上演中

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音楽劇『MONDAYS/このタイムループ、まだまだ終わらない!?』公開ゲネプロより

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延々と、同じ1週間が繰り返される。ある日、そのタイムループに気がついてしまったらどうすればよいのだろう? これは、1週間の繰り返しから抜け出そうと必死にもがいた人々の、愛すべき物語だ。映画『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』(2022年)を基に、ウォーリー木下の上演台本・演出、三浦康嗣(□□□〈クチロロ〉)の音楽、薮宏太(Hey! Say! JUMP)の主演によるとびきり魅力的な音楽劇が誕生。10月4日に行われた、開幕前会見&公開ゲネプロの模様をレポートする。

とてつもなく緻密に構成されたパフォーマンスを通して

舞台は都心のオフィス。広告代理店で働いているプランナー兼営業の村田賢(薮宏太)やプランナー見習いの遠藤拓人(平間壮一)、先輩プランナーの吉川朱海(南沢奈央)、デザイナーの森山宗太郎(森田甘路)、クリエイティブディレクターの平一郎(岡田義徳)は週末も泊まり込みで仕事をしていた。月曜の朝に事務の神田川聖子(大空ゆうひ)や部長の永久茂(梶原善)が出社し、また1週間が始まる。彼らはそれぞれの業務に大忙しで、あっという間に1週間が過ぎ、また月曜がやってくる。だがある時、村田と遠藤は自分たちが同じ1週間を繰り返していることに気づき……。

本作は「音楽劇」と銘打たれている。もちろんキャストが歌う(どちらかと言えばラップと言ったほうがよいのだが)場面もあるものの、それは決して多くはなく“ここぞ”というタイミングで繰り出される。むしろ、サントラあるいはSEと言うべきサウンドや物語の中で生じる生活音など、さまざまな音が登場人物の言動や情景の変化と綿密にからみ合いながら進んでいくことが印象的だ。そういう意味で、まさしく“音楽”と共に紡がれる“劇”なのだろうと感じた。それは、キャストはもちろんスタッフ各部署を含むカンパニー全体が、とてつもなく緻密に構成された諸々のタイミングをぴったりと合わせて進めていくということ。この途方もないクリエイティビティとエネルギーを伴うステージに、ただただ感嘆する他なかった。

そんな難度の高いパフォーマンスを要求されたキャストだが、ループを重ねていくなかで自分たちの置かれている状況に気づきそれを少しずつ変化させようと試みるなかで、心持ちも変化していくさまが自然なものとして伝わってきた。それだけ練度を高めるために稽古の中でどれほどの努力がなされてきたのかは、開幕前会見でもその一端が語られている。その様子を笑顔で語る彼らは「タフだな」と感じたし、非常に魅力的でもあった。

この物語の中心人物として描かれている村田を演じた薮は、真面目であるが故にどこか不器用、でも「若干性格が悪い」(会見での本人談)人物像をまっすぐに表現している。遠藤と彼はいち早くタイムループに気づき皆にはたらきかけていくので、ある意味ふたりのコンビネーションが本作の要ではないかと思うが、薮と平間は動きのシンクロぶりといい、かけ合いの呼吸といい、なんともよい感じの相棒感を見せている。このコンビは、間違いなく本作の見どころのひとつだろう。

その相方である平間も、表情豊かに後輩ポジションの遠藤を表現。村田とはまた違った洞察力、行動力が事態を変化させていく様子がとても小気味よい。平間のパフォーマンス力の高さが感じられる、いろいろな意味で軽やかでキレのいい在りようが魅力的だ。

ふたりの先輩でありキャリアアップのチャンスを得ようとしている吉川も、南沢の地に足のついた演技によって、当たりのきつさだけが前面に出るのではなく一生懸命であることが嫌みなく伝わってきた。内面に生じていく変化は、吉川が一番自然に現れていたように感じる。

森山を演じる森田はオタクっぽさをよい案配で漂わせ、平を演じる岡田もちょっとクセのある感じで場を締める。神田川を演じる大空も、特に第1幕では自身も会見で語ったような「地味に、事務所になじんで存在感を薄く」している姿に舌を巻く。3人とも、それぞれの役割を巧みにこなしていて、舞台の経験値の高さを感じさせた。そして永久を演じる梶原は、ステージに登場するだけで飄々とした面白さが漂っている。彼自身の持ち味と相まって唯一無二の存在感を発揮し、この作品の屋台骨となっているのではないだろうか。

彼らが見事なチームプレイを見せて進んでいく第1幕、そして皆がタイムループを認識した後に生じる変化。すべて観終わった後にはほっこりもするし、爽やかでもある。これは会見でも語られていたが、いつもならあまり嬉しくない月曜日の訪れが、この作品を観た後には少し楽しみなものに変わりそうな気がする。そんな、観た者の心に小さな、だけど自分次第でやがて大きく育っていくかもしれない“種” ―あるいは“宝物” とか“希望” と言い換えてもよいかもしれない―を残してくれる作品だ。

観客一人ひとりの目線で、自身の背景を基に楽しんで

音楽劇『MONDAYS/このタイムループ、まだまだ終わらない!?』初日前会見より、前列左から)三浦康嗣(□□□〈クチロロ〉/作詞・作曲・音楽監督)、平間壮一、薮宏太、梶原善、ウォーリー木下(上演台本・演出) 後列左から)岡田義徳、大空ゆうひ、南沢奈央、森田甘路

開幕前会見には、キャスト7人とウォーリー木下、三浦康嗣が出席。キャストは自身の役柄を問われ、「映画オタクで、一見どこにでもいそうな人物ですけど、映画の話になるとまくしたてるように話してしまうぐらい映画が好き」(薮)、「タイムループに巻き込まれていくなかでちょっとしたことの嬉しさとか、ちょっとした変化でこんなに毎日が楽しく過ごせると感じ取っていくような青年」(平間)、「仕事一筋で進んでいくけど、タイムループしていくなかで気づいていき、ちょっとずつ人間性も変化していく」(南沢)、「デザイナーをやってまして、冴えない男なんですけど、アイドルオタク。(ある場面での)ギャップをお楽しみいただけたら」(森田)、「職人気質のクリエイティブディレクターで、人間味がわからないような感じから徐々に露わになって(いくものがある)」(岡田)、「この会社で一番の古株、事務職など雑務一般。タイムループをきっかけに、みなさんと一丸となって行動している時にすごくいきいきとしだすところにやり甲斐を感じております」(大空)、「一番役に立たない役どころでございます。その役に立たないところを利用してどうにかがんばる」(梶原)などと語った。

さらに、音楽と共に進んでいくこの舞台の試みについては、「『何回やるの?』っていうことを皆さんびっくりするぐらい全部タイミングがドンピシャで、全部同じ演技で、でもそれが生なのでちょっとずつ違う」と木下が語れば、「社員たちが繰り出すいろいろな物音、例えば平がコーヒーメーカーのスイッチをカチッと押すと神田川さんも電気のスイッチを押したり、そういうのが全部音楽としてどんどん組み上がっていく」と三浦も説明。劇場で、生で演じる演劇ならではの面白さ、難しさを感じさせた。

それはキャストも「きっかけごとが全部カウントで成立しているので、誰かのせりふを聞いても、カウントとして認識する。稽古自体もタイムループしてたぐらいの感覚に陥ってきた」(薮)、「カウントに襲われている夢を見た」(岡田)、「稽古場で音が流れると、勝手に体が動く。音に調教されてます」(森田)などと表現していたことからも伝わってきた。

また、舞台版『MONDAYS』ならではの魅力について、「この話の肝のひとつはタイムループしてるかしていないかよくわからない毎週を繰り返すっていう、現代人なら考えるようなことがテーマ。役者の皆さんが生で何回も同じことを繰り返すことの中から、お客様一人ひとりが抱えている背景を基にこの作品の答えを出してくれそうな気がする」(木下)、「タイムループしていくなかでそれぞれが同じ動きをしているので、その人だけをフォーカスしてもいいとか、自分で目線を選べるのが舞台の素晴らしいところ。もちろん1回だけでも楽しめるけど、何回もタイムループしてこの作品を観ていただくと、掘れば掘るほど沼にはまる作品だと稽古していて思った」(薮)といった発言が。

最後は薮の「オフィスの中での狭い空間での話ですけど、話自体はすごく広がりがあるっていうギャップも面白いですし、毎週『月曜日がちょっと億劫だな』『嫌だな』って思っている人がこの作品を観て、少しでも次の月曜日が『楽しみだな』とか『来週は何が起きるのかな』とか、ささいな変化が楽しみになる。そんな気持ちになってもらえるように、精一杯やっていきたいと思います」というメッセージで締めくくられた。

取材・文・撮影:金井まゆみ


★薮宏太さんインタビュー掲載中!


<公演情報>
PARCO PRODUCE 2025
音楽劇『MONDAYS/このタイムループ、まだまだ終わらない!?』

上演台本・演出:ウォーリー木下
作曲・音楽監督:三浦康嗣(クチロロ)

出演:薮宏太 平間壮一 南沢奈央 森田甘路 吉本実憂 松尾敢太郎 岡田義徳 大空ゆうひ 梶原善

スウィング:花戸祐介 涼花美雨

【東京公演】
2025年10月5日(日)~10月27日(月)
会場:PARCO劇場

【大阪公演】
2025年11月1日(土)~11月3日(月・祝)
会場:森ノ宮ピロティホール

【長野公演】
2025年11月8日(土)・9日(日)
会場:サントミューゼ(上田市交流文化芸術センター) 大ホール

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/mondays/

公式サイト:
https://stage.parco.jp/program/mondays/

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