齋藤潤&杉野遥亮 世代を超えて考える“自分らしさ”「自分の心に素直でいたい」
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齋藤潤、杉野遥亮 (撮影/稲澤朝博)
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すべて見る齋藤潤と杉野遥亮が純粋無垢なラブストーリー『ストロベリームーン 余命半年の恋』で演じたのは、佐藤日向という同じ役どころだ。齋藤は余命半年のヒロインと限られた時間で恋をする高校時代を、杉野は忘れられぬ想いを抱えた大人になった13年後を演じる。俳優としてのキャリアも違えば、ひとまわり歳が離れた二人だが、同じ作品で同じ役を演じた仲。対談では、杉野が自分自身、齋藤と同じ年齢だった時のことを思い出しながら、アドバイスする場面も。齋藤は「こんな風に話せる機会があって嬉しい」とリスペクトを滲ませながら、笑顔でじっと杉野の話に耳を傾ける姿が印象的だった。
13年後の日向がいるから、この作品の深みが増すんだと思いました

――芥川なおの純愛小説が実写映画化した今作は、余命半年を宣告されながら懸命に生きる桜井萌(當真あみ)の純愛物語です。主人公が恋にまっすぐに向き合う姿や彼女を支える人々との交わりが描かれますが、どんなところが魅力の作品に仕上がりましたか?
齋藤潤(以下、齋藤) 岡田さんの脚本を読んだ時に、家族愛や、友情、恋愛だけではない愛が繊細に描かれているなという印象を受けました。いろんな世代の方々に登場人物たちの想いに共感してもらえるお話になっています。
杉野遥亮(以下、杉野) 高校生の萌と日向の心の通わせ方はとてもピュアなんですよね。その二人を演じた當真さんと齋藤くんの何か形には見えないエネルギーみたいなものが画面に現れているなと思いました。


齋藤 タイトルにもなっている“ストロベリームーン”を日向と萌が見に行くシーンが本当に幻想的なシーンになっています。じつはこの撮影は昼間にとっていて、月も見えない状況の中だったので、映像を観た時は、「うわっ、すごいロマンティックなシーンになったな」って感動しました。
杉野 水辺に入っての撮影は、大変だったって言っていたよね?
齋藤 本番一発勝負でやらないと衣裳が濡れてしまうので、同じ衣裳を準備していただきました。濡れた衣裳をドライヤーで乾かしてもらいつつ、何回も挑みましたね。
杉野 素敵なシーンにしようという気持ちは、全部ちゃんと画面に現れているので、手間暇をかけるみんなのそういった作業は、どんな作品でも大事だよね。

――お二人は、萌の運命の恋の相手・佐藤日向を演じました。日向はどういう人物だと思われましたか。
齋藤 少年時代の日向くんは、“優しさ”に洋服を着たような男の子で。陽だまりの子という原作の印象をあまり変えずに演じました。日向くんは家族のことはもちろん、周りの些細なことに気づけるタイプなんですよね。空の雲の流れの速さみたいなものを観察するのが好きな感じがいいなと思いました。
杉野 僕は高校時代から13年の歳月が経っている日向を演じて、萌への想いを引き摺りながらも無理して明るくふるまって生きてきたんだろうなと思いました。大人の日向を演じるにあたっては、この人が今どういう状況で、どういうことを考えて、どんな感じで生きているのか、僕の想いを乗せました。

――撮影中に役を演じる姿をお互いの演技をご覧になったり、現場でお話する機会は、ありましたか?
齋藤 同じシーンがないので、お芝居パートをあまり見ることはなくて……。
杉野 僕は堤防のところで日向と萌が歩くシーンを撮っていた齋藤くんの姿を見ました。その後に自分が撮るので、現場ですれ違いみたいなことはありましたね。高校生の時の日向と大人になってからの日向は、服装に共通点があったり、自転車も同じものを乗っていたりするので。監督が繋がりをもたらす演出を考えて下さったので、そんなに少年パートを意識することはなかったです。
齋藤 僕は13年後の日向を見て、ちゃんと大人だなって思いました。13年後の日向がいるから、萌ちゃんの想いが時間を超えて届くんだなと思いましたね。
杉野さんは全部がまっすぐな方です

――スクリーン上のお二人は、ちゃんと日向の雰囲気を纏っていました。取材を通していろいろお話してみて、お互いにどんな印象を持っていますか?
杉野 齋藤くんは真面目ですごく一生懸命な印象です。そういう部分は自分にもあるなって思うので、そこは似ているのかな? 僕は、年齢が齋藤くんよりもひとまわり上なんですよね。きっと今こういうことを考えている時期なのかなと見ていて思うことがあって。自分もそういう時期があったからこそ、何か自分にできたらいいなと思いましたね。
齋藤 ありがとうございます。杉野さんは説得力がある方なので、自分もそうなりたいです。
杉野 え、何、説得力って? 嬉しい。どういうことなのか、もっと詳しく聞かせて(笑)。
齋藤 現場ではあまりお話をすることはなかったんですけど、こういう取材で初めて、同じ役の二人として話した時に、『もうこれだな』って思いました。自然体なエネルギーの中で説得力を感じました。
杉野 ありがとう(ニコニコ笑顔に)
齋藤 さっき真面目で一生懸命って言って下さったんですが、僕も曲がっているところはあります。
杉野 うん、そりゃあ、僕だってあるよ。
齋藤 いや、全部まっすぐです。僕はもうずっとクネクネ曲がっているだけだけど、ストレートに伝える方だなって思いました。

――同じ役を演じたこと以外に接点や共通項はみつかりましたか?
杉野 自然が好きっていうのは、一緒だよね。以前、番組で釣りを一緒にやったんだけど、自然に触れられて楽しかったよね。
齋藤 自然溢れるロケで、楽しかったです。
杉野 元々、自然が多いところの出身なの?
齋藤 いや、神奈川です。そこまで自然は多くないんですけど、ちょっと離れたら緑はあります。自然が好きです。
――今度は、一緒の場面でお芝居ができる作品で共演するとしたら、どんな関係性の役柄をやってみたいですか。
杉野 もう少し自分も大人になって、齋藤くんも大人になったら、また色々やれる役の幅が広がるよね。今は僕、研修医とか新人社会人役が多いから。お父さんとかはまだこれから。
齋藤 そうですよね。杉野さんとずっと一緒にいられる役がいいですね。兄弟とか!
杉野 あー、兄弟はできそうだね。
齋藤 僕がもっと大人っぽくすればできます。
杉野 いやいや、年の差の離れた兄弟とかもあるからさ。
齋藤 やりたいです!
杉野 お母さんは高畑淳子さんに演じていただき、當真さんと齋藤くんが双子っていうことで、家族の話なんてどう?
齋藤 実現できるように頑張ります!
ふたりの青春時代は?

――余命半年の萌が一生懸命に生きる姿に胸を打たれる作品ですが、お二人が青春時代に、一生懸命になったことは、どんなことでしたか?
杉野 バスケを頑張ってやっていましたね。夏の暑い中、体育館で頑張って走り回りましたもん。あと、受験勉強もそうか。
齋藤 僕は、心から頑張ったって思うことは今回の作品です。
杉野 頑張ってたもんね。何テイクもトライしてたでしょ。
齋藤 はい。でも、それが楽しいって思えたのは、初めてかもしれないです。
杉野 怖くない? 何回もやると、俺ダメなんだって思っちゃうけど。
齋藤 でも、初めて楽しいという感情に出会えた瞬間は嬉しかったです。やっと自分から逃げずに自分自身と向き合えたっていうのは、僕としてはすごく大きいことで。この作品で味わった体験は、大切なものになりました。
杉野 そっか。僕は18歳くらい、ちょうど大学入った時とかは逃げまくってましたよ。自分が好きなことが分かんなかったから、学校サボっていろんなところへ行ってたなぁ。でも、いい経験になったし、それで良かったのかな。僕もやっと最近ちょっぴり自分の好きなことが分かってきた。30歳でようやく(笑)。30歳でそんな感じなので、18歳はもっとハツラツと元気にやっていていいと思うよ。
齋藤 やっぱり、僕、もっとハツラツとしたほうがいいですね(笑)。

――高校生の時の日向は、小学校の先生と醤油工場をやるという2つの夢を持っていました。お二人は子供の頃、どんな夢を持っていましたか?
齋藤 僕は子供の頃は、夢をちゃんと自覚できてなかったかもしれません。でも、夢をちゃんと持ち始めたのは、芸能界に入って俳優さんになりたいって思ったことです。夢は叶ったけど、まだまだ満足せずに頑張りたいです。
杉野 僕も俳優になりたいと思っていましたね。ミーハーな気持ちでなりたいと思っていたけど、思っていた以上に大変でした(笑)。大変なこと、いっぱいありました。
夢を叶えたふたりの、夢を叶える秘訣は?

――夢を叶えたお二人が思う、夢を叶える秘訣とは?
杉野 やりたいことはやればいい、それしかないですね。ただ、その1歩を踏み出す勇気を持てるかどうかと夢を支えてくれる人がいるかっていうことが大きいかもしれない。オーディションを受ける時に背中を押してくれる人がいるとか、それだけで夢に近づける。
齋藤 支えて下さる方の存在は大事です。夢ってもう本当に夢なので、壮大な夢を叶えるのって、どうしたらいいのかなって思いますけど……志が大事なのかもしれません。
杉野 これからやってみたいことは、海外で仕事してみたいです。そのためには英語をまず喋れるようになりたい。この間、番組のロケで海外へ行った時に、全然英語を喋れなくて悲しくなっちゃったので(笑)。だから、仕事じゃなくてもいいけど、まずは海外に行った時、英語でコミュニケーションできるようになりたいです。
齋藤 僕も英語を勉強したいですね。英語のテストは好きなんですけど、実用的に使えるかといったら、身についてないと思うので。僕のこれから叶えたいことは、映画賞を受賞し続けること。日本アカデミー賞の最優秀男優賞を取りたいです。でも、僕がその目標を掲げるのはまだまだなので、精進します。
杉野 僕は、賞にはご縁がないので、とやかくは言えないんですけど、頑張って欲しいです。海外の映画祭に行くのもいいよね。そこで英語でスピーチできたら、カッコいいなって思います。
齋藤 あの、素朴な疑問なんですが、杉野さんは今、日々の生活の中で意識していることってありますか?
杉野 どういたら自分らしくいられるのかなって思っている。
齋藤 あー、分かります!
杉野 すべて本音を言うことがいいことだとは思っていないし、TPOも色々あると思うんだけど。自分の心に素直でいたいなと思います。わりと自分に正直なタイプなの?
齋藤 僕は変に無理しちゃうタイプで。でも、今こうやって、話せること自体がありがたいです。自分の本当の気持ちと、求められているものとか、伝えたいことって違うこともあるので、そこのバランスみたいなものが、すごく難しいなって思っていて。
杉野 バランスなんて考えなくて、いいと思う。僕も考えたりするんだけどね。とくに先輩とやっている時なんて、すごく気を遣う時もあるし。でも、自分と合う人もいれば合わない人もいるから、無理しないでいようと思うようになってきたかな。
齋藤 うわ、すごいです!

杉野 もう100%みんなと合わせるのは無理だと思っていて(笑)。でも、その上でどう付き合っていくかだと思う。誰かに合わせて、自分を変えるのは意味がわかんないなって思うから。例えば、SNSの意見ひとつに左右されていた時期もあったんだよね。「茶碗の持ち方が汚い」とかいうコメントにものすごく凹んだこともあるし(笑)。でも、最近そういう意見にだんだん腹が立ってきて。そうやってSNSで人のことを叩くような人は、気持ちに余裕がないのかなって大きな心で受け止めようって思うようになってきた。
齋藤 僕もSNSのコメントは気にしなくもないですけど。やっぱりどう見られているのかなって気になるところは常にあるので。でも、そういう視点でいながら、僕も自分に正直に生きたいなって思いました。ありがとうございます。


『ストロベリームーン 余命半年の恋』
2025年10月17日(金) 全国公開

【物語】
子どもの頃から病弱で、家の中だけで過ごしてきた桜井萌。15歳の冬、余命半年と医師から宣告される。家族が悲しみに暮れるなか、高校に通うことを決意した萌は、同じクラスの佐藤日向に突然告白。恋人同士となって少しずつ距離を縮めていく2人は、萌の誕生日に“好きな人と一緒に見ると永遠に結ばれる”という満月「ストロベリームーン」を見に行く夢を叶える。しかしその日を境に、萌は音信不通となってしまう。萌が消えた理由とは。そして13年後に明かされる、萌の思いとは……。
【作品情報】
原作:芥川なお「ストロベリームーン」(すばる舎)
脚本:岡田惠和
監督:酒井麻衣
音楽:富貴晴美
主題歌:ORANGE RANGE「トワノヒカリ」(Sony Music Labels Inc.)
出演:當真あみ 齋藤 潤 / 杉野遥亮 中条あやみ
池端杏慈 黒崎煌代 吉澤要人
伊藤健太郎 泉澤祐希 池津祥子 橋本じゅん
田中麗奈 ユースケ・サンタマリア
配給:松竹
©2025「ストロベリームーン」製作委員会
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/stmoon-movie/
公式SNS:stmoon_movie
撮影/稲澤朝博、取材・文/福田恵子
ヘアメイク&スタイリスト
<齋藤潤>
ヘアメイク/JANE
スタイリスト/岩田友裕
<杉野遥亮様>
ヘアメイク/AZUMA(M-rep by MONDO artist-group)
フォトギャラリー(15件)
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