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髙橋海人が演じた“色気の本質”「器の大きさとヘコたれない余裕を意識しました」

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髙橋海人 (撮影/梁瀬玉実)

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長い髪を後ろに束ね、真剣に眼差しで絵と向き合う。髙橋海人が色香たっぷり、魅惑的な男を演じているのが映画「おーい、応為」だ。浮世絵師・葛飾北斎の弟子である善次郎をどこか浮世離れした雰囲気で演じているのが魅力的だ。これまでいろいろな作品で描かれてきた善次郎は、実在する美人画の絵師。元々、絵が得意なことで知られる髙橋は本作で、筆を持ち絵を描き、一心不乱に、そして貪欲に役を追求した。共演の長澤まさみと永瀬正敏との現場で刺激を受けながら撮影した日々について語ってくれた。

大好きなアートがテーマになっているので嬉しかったです

髙橋海人にとって初めての時代劇への出演を飾ったのは、『おーい、応為』。日本を代表する浮世絵師・葛飾北斎の娘・応為(長澤まさみ)が当時はまだ珍しかった女性の絵師として江戸の芸術界を駆け上がっていく生き様を描いた作品だ。

「僕にとって念願の時代劇になります。この時代に生きた絵師たちの人生にフォーカスが当たっていて、それぞれの生き様が色濃く描かれている作品。今の時代とはまた違った価値観の中、いろんなことに影響を受けて生きている人たちを演じるのは、貴重な体験になりましたね。初めての時代劇で、しかも自分自身が大好きなアートがテーマのひとつになっているので、いろんな挑戦が詰まっていて嬉しかったです」

今作のメガホンをとった大森立嗣監督作品への参加を願っていたという髙橋は、クランクイン前に大森監督に本読みを申し出たという。撮影期間中には時代劇ならでの所作を教わるなど学びが多い、新鮮な一カ月間だったそう。

「大森監督の作品が好きで、ずっとご一緒したいと思っていました。僕、男子高校生ふたりが放課後に河原で語らう姿を描く『セトウツミ』が大好きでして。原作漫画も読んでいたのですが、映画もめちゃくちゃ面白かったですね。ふたりの放課後トークは、たまたま通りかかった男子高校生のやりとりをのぞき見している感じが魅力的で、思わずクスッと笑える会話劇なんです。今回の作品も北斎と応為の生活を隣に住んでいる人みたいな感覚で、のぞき見できるような雰囲気で描かれているのが魅力。大森監督の作品の、日常を自然に切り取ったような世界観。それを肌で感じられたことは、本当に貴重な経験でした。」

髙橋が演じる善次郎は、葛飾北斎の弟子で色気漂う優男。本作の吉村知己プロデューサーがドラマ『だが、情熱はある』を観て、「この人だ」とピンときたという。柔らかさと芯の強さが同時に感じられる独特の雰囲気と不真面目なセリフを真面目に言いまわせる個性を見て、他にはいないと善次郎役に抜擢された。

「頑張ったものが次に繋がるって、こんな嬉しいことないですよね。お芝居もそうですけど、一生懸命にやったことが評価されて、繋がっていくのは、活動していく醍醐味のひとつだと思いました。期待をしてもらってのキャスティングなので、それに応えたい気持ちで頑張って。それがまた次に繋がっていけばいいなと思いました」

何もないからこそ、幸せな時代だと思いました

これまでいろいろな作品で描かれてきた善次郎は、どこか浮世離れした雰囲気。今作では妹を養うために絵師なったというエピソードを持つ役どころ。近所に住んでいた北斎の家に出入りすることで北斎の技法を学び、独自のスタイルを確立していった。色気のある美人画の名手だったというが、今作では、絵師として迷いのある姿も描かれている。

「妹たちのために絵師として働いていた善次郎だからこそ、続けようかやめようか迷う頃があって。そんな善次郎に、この時代の幸せの一端も感じました。善次郎の生きた時代には、SNSがある今のように余計な情報もないから、自分の生き方を自分の意思で決めていけるそれはすごくいいなって思います。やっぱりいろんな情報があると、影響を受ける相手がたくさんいて。自分と比べて悩んでしまう。でも、当時の人たちは自分と対話を重ねて、何か選択するときも自分の決断が全てだったと思います。そういう意味でいい時代だったんじゃないかなって。便利なものがたくさんあるわけじゃないけど、その中でしっかり生きていくっていうのは、とても素敵なことだと思いましたね」

これまで髙橋が演じてきた役どころの中でも屈指の色気を放つ役どころ。後ろに長い髪を束ねて、年を重ねてからの髭を生やした姿も男っぽい。遊郭にも通うような女性好きだった一面も持つ善次郎は、ふわっとした部分を表現するのが難しいが、絶妙なさじ加減で演じている。色気を放つため、意識をしていたことはあるのだろうか。

「色気がある人って、ゆったり余裕があるイメージがあって。ゆっくり動くというのは、意識しましたね。応為にはぐらかされる場面でも、善次郎は笑い飛ばしているんですよね。それも多分、普通の人だとできないこと。でも善次郎は、妹たちを養って生きていたり、いろんな経験をしていたり。だから、そんじょそこらのことじゃヘコたれないという余裕感があるんですよね。そういう器の大きさみたいな所が色気に繋がるのかなって。自分が色気を出そうとしなくても大森監督の脚本の善次郎がすごく魅力的だった。色気があるなって思っていただけたなら、ラッキーって感じです(笑)」

絵を描くシーンは本番は手が震えました(笑)

最初は絵を描くシーンがなかったものの、画力が高いことを知った製作陣が、善次郎の執筆シーンを追加。撮影の合間も時間を見つけては、描き続けるほど熱中していた様子だ。

「僕が絵を描くことを知っていただいて絵を描くシーンが増えたのは、とても嬉しかったですね。自分も絵を描くシーンがあったらいいな、なんて思っていたので。練習はたくさんしましたけど、本番は手が震えました(笑)。善次郎が応為に絵をやめようかなって話し出すシーンで、応為とたくさん会話をした後に絵を描くっていう流れだったんですが、すごく緊張しました」

絵の道具を持ち帰るなど、貪欲に練習を重ねたそうだが、本番での出来栄えはというと……。

「結果的に劇中で使用されたのは、僕が描いた絵ではなくて、先生が描いた絵なんですよね。でも、練習で当時の絵をたくさん描いたことが、役に活きたと思います」

実際に絵を描くだけでなく、善次郎がどんな絵師だったのか、興味が湧いたと目を輝かせる。

「北斎の門弟ということで史実をいろいろ調べました。美人画や春画を描く絵師で、女性をたくさん描いていたようです。善次郎の絵は、色使いが良くて。着物ひとつにしても、本当にこの人はこういうものを着ていたんだろうなと思えるくらいリアル。ファンタジーを混ぜるのではなく、細部にわたって丁寧に、綺麗に描いている印象を受けました。今作でも、浮世絵に触れるため、ギャラリーに絵を見に行かせてもらったんです。いや~、すごかったですね。1枚1枚から溢れる勢いみたいなものを感じて。いろんなストーリーを考えさせられるし、その絵が放つエネルギーもすごかった!この役を演じたことで、葛飾北斎の絵を観に行ってみたいなとか、浮世絵の展示へ行ってみたいなっていう興味が大きくなりました」

絵を描く髙橋だからこそ、「今後、浮世絵タッチのものを描いてみたくなったのか」と問うと、「いや、そんな舐められないほど難しくて。今のデジタルのスタイルで、いろんな作品を作りたいです(笑)」と今回は良い経験になったそうだ。髙橋から見た長澤と永瀬の腕前はどう捉えたのか気になるところだ。

「お2人が絵を描いているシーンの時に善次郎はあまり登場しないんです。でも、撮影が終わって、練習小屋へ行って練習しようって思ったら、お2人が黙々と練習されていて。言葉も交わさず、集中されていて、まるで部活みたいな感じだったんですよ(笑)。長澤さんは、色を混ぜて別の色を作るっていう段階からやっていたのかな。どんどん腕前が上達していくお2人の絵に感動しました」

長澤さんと永瀬さんを見て、人間としての深みをもっと深めていきたいと思いました

応為は父と二人暮らしをしながら、父であり師である北斎の背中を見つめて絵師として生きていく。そんな応為を演じた長澤まさみと北斎を演じた永瀬正敏は、素晴らしいコンビネーションで父と娘を演じていた。

「長澤さんも永瀬さんも、一挙手一投足に色気と、奥ゆかしさみたいのがあって、目が離せない存在。2人が親子でやり取りする姿を見て、お芝居って、その奥にある本人の魅力がちゃんと活きるものなんだなと思いました。応為は女性らしいチャーミングさもありつつ、男性顔負けの力強さを持っていて。長澤さんと重なる部分があるなと思いました。永瀬さんは1つのものに没頭する時に醸し出されるダンディ感というか、色気がすごくて。永瀬さんが元々持ち合わせているものが役と相まって爆発していました。そんなお二人を目の当たりにして、人間としての深みをもっともっと深めていきたいと思いました」

髙橋は、長澤と永瀬と3人でのシーンも撮影。髙橋は長澤とドラマで共演経験もあり、初日から笑顔で会話を交わしていたという。二人との共演は多くの学びがあり、刺激になったと話す。

「お二人は、表現のひとつ、放った言葉ひとつ取っても、脳みそにリフレインするような、印象に残る表現をされるんですよね。スピード感や抑揚とか、そういう技術的なところもそうですし、とにかく学ぶことがたくさんありました。そんな2人と一緒にお芝居をできたことが、もうめっちゃ財産なので、たくさん吸収させてもらいました。応為と善次郎、北斎の3人が蕎麦を食べるシーンがあったんですが、『蕎麦はどれぐらい食べる?』とか、『麺が伸びてきちゃったね』みたいなやりとりをして、和やかな現場でしたね」

善次郎が応為に語るシーンもあり、そのシーンの撮影は髙橋の記憶に鮮明に印象に残っているという。普段はどこか本心を見せず、軽やかに見える善次郎が珍しく、本音を覗かせるシーンだ。応為に翻弄されながらもそばにいる善次郎との関係性が垣間見える場面でもある。

「あのシーンはすごく覚えていますね。自分としてはすごい山場だなって思って、集中して臨んでいたので。善次郎が自分の気持ちを初めて人に話す場でもあったので、善次郎から放つ緊張感みたいなものは、意識してはいました。善次郎にとって応為は頼れる先輩で弟分みたいなところもありつつ。応為を間近で見ていて、彼女の絵のセンスや才能みたいなものと自分を比べたりすることもあったんだろうなと思いました。自分が絵師を辞めようと思っているけど、どんどんどん先へ進んでいく応為との距離に、複雑な思いを抱えているんだなと。そんな思いを打ち明けるシーンもありながら、でも普段は割と流れに身を任せたようなて、ひょうひょうとした人物で。そんな善次郎は演じていても、すごく魅力的だなと思いました」

大森さんの作品は音楽の使い方が素敵なんです

今作のみどころは、応為と北斎が絵を描き続けている雰囲気をリアルな息遣いで感じられるところ。江戸の時代に生きた絵師たちのほとばしるエネルギーがスクリーンに溢れている。その映像を盛り上げるのが、今作で流れるジャジーな音楽でもあると力説する。

「音楽も素敵なんですよね。大森さんの作品って、毎回そんなイメージがあります。今作みたいな、ポイントポイントで同じ曲を使っていくのって、すごく効果的だろうなって個人的に思っていて。音楽があることで、すごく自然なビート感の中で、キャッチーでポップに鑑賞できるんじゃないかな、と思います。『音楽の使い方がすごく良かったです』と監督に感想をお伝えしたら、ニコニコされていました。大森さんの脚本は、面白いけど、泣けるし、感動するし、深く考えさせられる……改めて大森作品の魅力を感じられるのが『おーい、応為』だと思いますね」

強さと自由な発想力で江戸を駆け抜けた応為の生き様は、自分らしく生きることの素晴らしさを教えてくれる作品。現代に生きる私たちは、どこか憧れのような眼差しで応為を見つめてしまう。そんな「おーい、応為」のアピールポイントとは?

「日本のアートの先駆者みたいな存在だった北斎の人生を、その娘であり弟子である応為という女性の目線で描かれているところがみどころになります。北斎ってこういう人なんだということを知らない人でも、北斎ってこういう人だったんだって楽しめる。前情報を入れても入れなくても、どちらでも楽しめる作品ですし、コンビニへ行くぐらいの感覚で、フラっと見て、楽しかったって思ってもらえる作品になっていると思います」


『おーい、応為』

10月17日(金) TOHO シネマズ日比谷ほか全国ロードショー

監督・脚本:大森立嗣
キャスト:長澤まさみ 髙橋海人 大谷亮平 篠井英介 奥野瑛太 寺島しのぶ 永瀬正敏
原作:飯島虚心 『葛飾北斎伝』(岩波文庫刊) 杉浦日向子 『百日紅』(筑摩書房刊)より「木瓜」「野分」
配給:東京テアトル、ヨアケ
©︎2025「おーい、応為」製作委員会
公式サイト:https://oioui.com

映画 SNS:[X] 
https://x.com/oioui_movie
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撮影/梁瀬玉実、取材・文/福田恵子

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