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池田理沙子×水井駿介が語り合う、新国立劇場バレエ団2025/2026シーズン開幕作品『シンデレラ』の魅力

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『シンデレラ』過去公演より (撮影:瀬戸秀美)

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2025年10月17日(金)、新国立劇場 オペラパレスにて全幕バレエ『シンデレラ』が幕を開ける。新国立劇場バレエ&ダンス 2025/2026シーズンの開幕作品となるこの舞台。多彩なダンサーたちが回替わりで主役を務める中、ファンが熱い視線を注いでいるのが、ファースト・ソリストとして数々の舞台で主演を務める池田理沙子と、本作で同劇場での全幕主役デビューを果たす水井駿介というフレッシュなペアだ。東京での開幕に先立ち実施された札幌での『シンデレラ』公演に同行中のふたりに、作品への取り組み、英国バレエを代表する振付家、アシュトンの振付の魅力について聞いた。

フレッシュな気持ちで迎える新シーズン!

──まずは、2025/2026シーズンの開幕に向けてのいまのお気持ちをお聞かせください。

池田 昨シーズンは激動の1年でした。シーズン開幕の『眠れる森の美女』では主役のオーロラ姫を2回踊らせていただきましたが、当初から主役に配役されていたわけではなく、その中での挑戦だったので、自分の中で成長を実感しましたし、何かひとつ掴めた感触がありました。その後もいろんな役を踊って自分の中で変わるチャンスをいただき、充実のシーズンとなりました。今シーズンはさらにステップアップして、昨シーズンで得たものを舞台で出せるように頑張りたいですね。

水井 僕は10代、20代とヨーロッパ、その後牧阿佐美バレヱ団で踊り、30代に突入して新国立劇場バレエ団に入り新たなスタートを切ったのが昨シーズンでした。経験のある古典でもヴァージョンが違いますから、シーズンを通して全部が初めて踊る演目。やりがいがありましたし、しっかり自分と向き合うことができました。あっという間の2年目、ですね。

──そんな中での『シンデレラ』、主演ダンサーとして、どのような思いで準備を進めてきましたか。

池田 キャストが発表されたときは、嬉しい半面、新国立劇場で主役を担うその重さ、プレッシャーをあらためて感じました。前に所属していたバレエ団でも主役を踊っていただけに、主役の大変さはわかっていますし、何か見えない、いろんなものが降りかかってくるような感じです。

水井 『シンデレラ』は新国立劇場バレエ団に入って初めて主役を踊らせていただいた、思い入れのある作品。当初はアシュトンならではの難しいステップ、音楽を重視した振付を習得するのにすごく苦労しましたが、その後何度か踊らせていただいたので、その経験を活かしていきたいですね。前回の上演(2022年4月〜5月)はコロナ禍でしたから、振付指導の方のリハーサルはオンラインでの実施。今回は久しぶりに直接指導していただく貴重な機会をいただいて、とても感謝しています。

『シンデレラ』過去公演より 撮影:瀬戸秀美

──役柄についてはどのように捉え、リハーサルを重ねてこられましたか。

池田 具体的なキャラクター像を詳細に決めて練習しているわけではありません。吉田都監督もよくおっしゃいますが、その時その時の舞台でしか生まれないものがある。バレエの役柄は多分皆そうだと思っています。その前提があったうえで私がイメージしているシンデレラは──たとえば第1幕。舞踏会に連れていってもらえずひとり残されたときでも、ちょっとした小道具を見つけて、自分なりの楽しさを見出していける女の子。吉田都監督からはシンデレラの役柄、キャラクターを存分に発揮できるよう、ほうきの掃き方やショールの使い方も教わっています。そんなマインドのシンデレラだからこそ、その人柄に惹かれた人たちの力がすべて合わさって、夢の舞踏会に行くことが叶い、王子さまと幸せなふたりの世界を築き上げることができるようになるんだと思います。

水井 『シンデレラ』の王子は、他のバレエの王子に比べるとキャラクターの背後にあるストーリー性が薄いように思いますが、その分王子としての存在感、佇まいをしっかり表現することが求められると感じています。振付指導の方は、『白鳥の湖』のジークフリード王子や『ジゼル』のアルブレヒトより、もっとナチュラルな等身大の王子でいてほしいとおっしゃいますが、やりすぎずに「立っているだけでナチュラル王子」を演じるのはとても難しい。等身大の、そのままのナチュラルで演じると、どうしても王子としての存在感が弱くなってしまう。宝塚歌劇団のファンの妻のアドバイスで、男役の方の目線の使い方、立ち方なども参考にしています。

撮影:鹿摩隆司

池田 “水井王子”はとても優しく見守ってくれる王子なんです。ふたりでたくさん話し合い、確認し合いながら一つひとつ積み上げていくことを大切にしています。リハーサルが進むとどうしても慣れてきてしまうのですが、何事も初めてそこで起きたとドラマを感じてもらえるよう、常にフレッシュな気持ちで臨みたいです。

水井 いつも丁寧に、クリーンに踊ることを目指しているので、僕と理沙子ちゃんは理想とする踊りのベクトルが同じ方向を向いているのかな、と感じています。とくにキラキラと輝く第2幕は彼女の踊りの魅力ととても合っていると思います。それに負けないような輝きを持つ王子が僕の理想です。

難易度の高さで知られる、“アシュトン・ステップ”の秘密

──7月のロンドン、ロイヤル・オペラハウスでの『ジゼル』公演ではおふたりでペザントのパ・ド・ドゥを踊られましたが、今回はフレッシュな主役カップルとしてファンの皆さんの期待を集めています。

池田 プレッシャーですね(笑)。

水井 結構なプレッシャーです(笑)。

池田 実は私たち同い年なんですよね。コミュニケーションを取りやすい部分もあるし、サポート面でもたくさんアドバイスをくれたり支えてもらったりしているので、本当に感謝しています。同い年のこの距離感だからこそ築き上げられるシンデレラと王子の関係性は、私たちならではのアピールポイントになるかもしれません。

水井 違和感があれば毎回、「ちょっとそこ、やりづらいよね」と気を使わずに話し合える。『シンデレラ』を何度も踊ってきている理沙子ちゃんは、そのベースが身体に入っていますから、難しいアシュトンのステップに慣れるまでいろいろと導いてくれてすごく助かりました。

──1948年に初演されたアシュトンの『シンデレラ』は英国ロイヤル・バレエの伝統的な人気演目ですが、新国立劇場では、開場の2年後の1999年に初めてこの『シンデレラ』を上演、今回の公演期間中に通算上演回数100回を達成されますね。英国で、またこの日本でも長きにわたり愛されてきた作品の、その人気の秘密はどんなところにあると感じられますか。

池田 リハーサルで自分が踊っていても、見ているときも、つい笑ってしまったりホロッときてしまったりするところがある。何度観ても心を動かされる作品なんです。アシュトンの振付はプロコフィエフの音楽に必ずぴったりと合うように作られていて、観ればぐっと心を掴まれる。主役以外にも、シンデレラの義理の姉たちや道化をはじめさまざまなキャラクターがいて、それぞれがまるで主役のよう。仙女も四季の精、星の精も、すべてのキャラクターが見どころです。英国ロイヤルバレエで製作された舞台美術や装置を譲り受けて使用しているので、その趣のある美しさも「すごい!」と感じていただけると思います。

『シンデレラ』過去公演より 撮影:瀬戸秀美

水井 プロコフィエフの音楽で、アシュトンのあのステップを踊るのは実はすごく難しいこと。でも、その振付を踊りやすいように簡単にしてしまったら、全く違う印象になって物足りなくなってしまうと思うんです。たとえば、連続して回転しながら移動するステップの、その回転を1回減らしてしまったら、盛り上がりは半減するでしょう。その1回があることで、音楽にピタッと合って、素晴らしい踊りになる。振りがしっかり身体に入ってくると、ぎこちなく思えたステップがすごく綺麗に見えるような発見があるんです。

池田 普通のクラシックでは、手首をこう柔らかく見せるものですが、『シンデレラ』では完全にピッと伸ばすところがあるんです。リフトにしても、本当に一直線を意識しなければいけないところもあるのですが、これは皆、12時を指す時計の針のイメージなんです。

──魔法が解ける12時、ですね。

水井 「あれ? 5時50分くらいだったよ?」って言われないようにしないと(笑)。

池田 頑張ります(笑)。

『シンデレラ』過去公演より 撮影:瀬戸秀美

──最後に、読者の方々にメッセージをお願いします。

水井 バレエって「あそこはどういう意味だったんだろう?」と観客に考える余地がある作品も多いですが、この作品は全幕を観れば「ああ、なるほど!」とわかるので、バレエが初めての方にもお子さんにも楽しんでいただきやすいところは大きな魅力です。誰もが楽しめるハッピー・バレエですから、ハッピーな気持ちで帰っていただけるように踊ります!

池田 とても心温まる、美しい作品ですが、胸がキュッとなる部分もたくさんあります。音楽、舞台美術や衣裳、振付などすべてが合わさった、総合芸術を代表する作品のひとつだと思いますので、ぜひ、実際に劇場で五感で楽しんでいただけたら嬉しく思います!

『シンデレラ』過去公演より 撮影:瀬戸秀美


取材・文:加藤智子


<公演情報>
2025/2026 シーズン 新国立劇場
新国立劇場バレエ団『シンデレラ』

振付:フレデリック・アシュトン
監修・演出:ウェンディ・エリス・サムス / マリン・ソワーズ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
美術・衣裳:デヴィッド・ウォーカー
照明:沢田祐二

芸術監督:吉田 都

出演:新国立劇場バレエ団
指揮 マルク・ルロワ=カラタユード / 冨田実里
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団

Cinderella is one of over 100 ballets created by Frederick Ashton (1904-1988).
These performances are presented as part of the Ashton Worldwide 2024-2028 festival.
For further information, visit frederickashton.org.uk

2025年10月17日(金)〜26日(日)
会場:東京・新国立劇場 オペラパレス

【キャスト】
2025年10月17日(金)18:30
シンデレラ:米沢唯
王子:渡邊峻郁

2025年10月18日(土)13:00
シンデレラ:木村優里
王子:速水渉悟

2025年10月18日(土)18:00
シンデレラ:小野絢子
王子:井澤駿

2025年10月19日(日)13:00
シンデレラ:池田理沙子
王子:水井駿介

2025年10月19日(日)18:00
シンデレラ:柴山紗帆
王子:渡邊峻郁

2025年10月21日(火)18:30
シンデレラ:木村優里
王子:速水渉悟

2025年10月22日(水)14:00
シンデレラ:小野絢子
王子:井澤駿

2025年10月23日(木)13:00
シンデレラ:池田理沙子
王子:水井駿介

2025年10月24日(金)18:30
シンデレラ:米沢唯
王子:ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤルバレエ)

2025年10月25日(土)13:00
シンデレラ:柴山紗帆
王子:渡邊峻郁

2025年10月25日(土)18:00
シンデレラ:小野絢子
王子:井澤駿

2025年10月26日(日)14:00
シンデレラ:米沢唯
王子:ワディム・ムンタギロフ(英国ロイヤルバレエ)

【他劇場での公演日程】
2025年10月4日(土)・5日(日)
会場:北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru

2025年10月4日(土)16:00
シンデレラ:小野絢子
王子:井澤駿

2025年10月5日(日)14:00
シンデレラ:米沢唯
王子:渡邊峻郁

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2561717

公式サイト:
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/cinderella/

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