『若江漢字とヨーゼフ・ボイス』神奈川県立近代美術館 葉山で 若江がボイスを捉えた記録写真とふたりの造形作品を展観
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若江漢字《様態(小石)-70》1970年
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すべて見る20世紀後半の芸術界に多大な影響を及ぼしたドイツの美術家ヨーゼフ・ボイスと、ドイツ滞在期にボイスの芸術に共鳴し、交流をもった現代美術家・若江漢字(わかえ かんじ)。多くが初公開となる記録写真とともに、ふたりの造形作品を紹介する展覧会が、11月15日(土)から2026年2月23日(月・祝)まで、神奈川県立近代美術館 葉山で開催される。
第二次世界大戦従軍後にデュッセルドルフ美術アカデミーで彫刻を学んだヨーゼフ・ボイス(1921–1986)は、人間の創造行為を思考活動や社会運動へと「拡張された芸術概念」として捉え、自身の作品を世界各地で展示すると同時に、教育や政治活動を実践した芸術家だ。1984年に西武美術館での個展のために来日し、対話集会やコンサートなども行なって、日本の芸術家にも大きな影響をもたらした。

横須賀に生まれた若江漢字(1944–)は、グラフィックデザインと版画を学び、1960年代後半から写真を用いたコンセプチュアルな平面作品などを発表。1970年代のドイツ滞在を機にボイスと交流を結んでからは、自らの創作と並行して、ボイス作品をはじめとする現代美術の収集・展示を行なうなど、芸術と社会を結ぶ活動を続けている。また、1982年にドイツのカッセルで開かれた国際美術展『ドクメンタ7』でボイスの「アクション(パフォーマンス)」を至近距離から撮影する機会を得て以来、記録写真を数多く撮影してきた。
同展では、『ドクメンタ7』をはじめとしたドイツ内外でのボイス展の写真、そして来日したボイスを間近で写した写真など、貴重なドキュメント写真が多数初公開される。なかでも日本滞在時の写真は、ニュープリントとプロジェクションで紹介される予定だ。こうした写真は、証言として貴重であると同時に、撮影者・若江の作家的視点を伝えてくれる点でも興味深い。
もうひとつの見どころは、若江の初期作から最新インスタレーションまで、代表作が並ぶこと。今回は、若江が横須賀市に設立した「カスヤの森現代美術館」が所蔵するボイスのマルティプル作品も合わせて紹介される。共同制作をしたこともあるこの二人の作家の造形作品と記録写真の展示を通じ、ボイスと若江の造形の軌跡を概観するとともに、ふたりの共通項と独自性をも考察する意義深い展観となっている。

<開催概要>
『若江漢字とヨーゼフ・ボイス 撮影されたボイスの記録、そして共振』
会期:2025年11月15日(土)~2026年2月23日(月・祝)
会場:神奈川県立近代美術館 葉山
時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜(11月24日、1月12日、2月23日は開館)、12月29日(月)~1月3日(土)
料金:一般1,200円、20歳未満・大学1,050円、65歳以上600円、高校100円
公式サイト:
https://www.moma.pref.kanagawa.jp/hayama/
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