セットリスト
●雪国
本当の静寂
あけぼの
ステラ
夕立
海月
時間
ポトス
二つの朝
素直な君は
東京
ひぐらしの夢
ゲルニカ
●ひとひら
こわす
鑑賞魚の行方
Friends
翡翠に夢中
ここじゃない地獄
one
つくる
国
Seamless
風船
The Sound of Summer Coming
海
ひのめ
際
夏至
フェリス
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『これまでとここから』東京キネマ倶楽部 Photo:タカギタツヒト
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すべて見るText:笹谷淳介 Photo:タカギタツヒト
10月4日、東京キネマ倶楽部にて、時代に”適応する”をコンセプトにするレーベルOaiko主催のツーマンイベント『これまでとここから』が開催された。出演したのは、ひとひらと雪国の2組。若き才能を持った2組の邂逅は、まさに静と動、相反する音楽的衝動が混じり合った非常に濃厚な時間を我々オーディエンスに魅せつけてくれていた。
多くのオーディエンスで埋め尽くされた東京キネマ倶楽部。スペシャルなツーマンイベントは、雪国のアクトから幕を開けた。静かにステージに姿を現した雪国の面々は、「本当の静寂」からライブをスタートさせる。儚く響くドラムのシンバルの音色、京(vo / g)はギターを爪弾く。そんな繊細な音色にオーディエンスは息を呑む。静寂に鳴り響く極上のアンサンブル。歌声が会場を包み込むように広がると、サウンドは一転し、ノイジーな音の葉を鳴り響かせる。京は内に秘めた音楽衝動をときに解放し、ときに隠しながら語りかけるように歌い続ける。
「あけぼの」、「ステラ」と間髪を入れず展開していくライブ。美しいコーラスワークに、のざきなつきの端正なアルペジオ。まるで長編映画を観ているような錯覚に陥るのは、彼らの極上のバンドアンサンブルの妙なのだろうか。雪国にしか描くことのできない音風景。繊細で、それでいて衝動的。彼らを形容するのにギターロックといえばそれまでだろうが、その一言では言い表すことはできない魅力を持っている。
「夕立」の音の葉が会場を包む。触れてしまうと壊れてしまうのではないかと思ってしまうほど繊細な歌声で京は歌う。シンプルなサウンド中、これは今夜の箱の性質なのか、ドラムの音がよく映える。木幡(ds)が叩くそのドラムの音色は、理路整然と雪国のサウンドを支え続けているのだ。冒頭4曲、すべてが完璧な導入だった。
「海月」、「時間」、「ポトス」と連続して奏でる。心地よい音にオーディエンスは体を横に揺らしている。軽やかなサウンドでポップネスは担保しつつ、あくまでも淡々と彼らは彼らの音を鳴らし続ける。ウィスパーを多用した京のボーカルは決して歌い上げず、紡いだ言葉がダイレクトにオーディエンスの耳に届く。「二つの朝」、「素直な君は」、「東京」、孤独や悲しみ、そして愛おしさ、数多の感情を音の葉に乗せて、彼らは縦横無尽にライブを展開している。ライブはすでに終盤戦に突入していた。これはいつも思うことだが、雪国は音を介してメンバーそれぞれが会話をしているようで、その光景が実に美しい。京と大澤(b)は目を合わせながらフレーズを奏でる、「ひぐらしの夢」が終わると、ようやく京は口を開いた。
「ありがとうございます」とひと言。そして11月にリリースする新譜のこと。多くは語らず、あくまで簡潔にMCを終えると、「雪国でした」と「ゲルニカ」を投下。変則的な五拍子にミニマルなギターリフ、シューゲイザーサウンドをフロアに轟かせる。叫ぶように歌う京の姿からは、生きることへの渇望を強く感じる。衝動を解放させ、彼らはライブを閉じる。彼らは最後も、「ありがとうございました。雪国でした」と簡潔に感謝を言葉にしてステージを後にしたのだった。
雪国が生み出した余韻がまだフロアに残っている。その余韻を鳴り音で切り裂いたのは、ひとひらの4人。「ひとひらです、よろしくお願いします!」と山北せな(vo / g)があいさつをすると同時に鳴り響く轟音。エモ、ポストロック、シューゲイザーなどを背骨に持つひとひらのライブは、「こわす」から幕を開けた。タイトル通り、音から感じる“破壊”の二文字。衝動的で力強いサウンドにオーディエンスは体を自由に揺らす。
間髪を入れず進行していく疾走感を併せ持ったライブメイク。「観賞魚の行方」、「Friends」、「翡翠に夢中」とド級のバンドアンサンブルを次々と投下していく。ボーカルをかき消すほどの轟音には驚くが、彼らの魅力は歌を疎かにしてないことだろう。
山北の記名性の高い歌声にはしっかりと軸があり、決して鋭い音像に負けない、ある種、ボーカルとサウンドがライブの中で競い合い、その相乗効果がひとつの魅力として我々オーディエンスに届いている印象さえある。また癖になる変拍子を織り交ぜた圧倒的なスキルとサウンドのキーとなるのは、冷静に弦を爪弾く古宮康平(g)とどんなリズムでもヨレることがない安定した梅畑洋介(ds)だ。
そして、バンドの中心で音を奏でる吉田悠人(b)のベース縦横無尽さは非常に心地いい。そんな4人が集結したひとひら。この日初めて、彼らの生音に触れたが、イベントのタイトル通り、“これから”を感じさせる。ライブの冒頭から完全に心を掴まれていた。
彼らの圧倒的な演奏にオーディエンスは大きな歓声をあげ、頭を振り続けている。ライブのスタートから間髪を入れず「One」まで、多様な音を響かせたひとひら。山北が口を開いた。
「今日初めてのMCですね。雪国が話さなかったので、こっちだけ話すのは少し気恥ずかしいけど」とこの日初めてのMCの時間がスタートする。Oaikoへの感謝と雪国との関係性を口にすると山北は、「ここまで緊張感のある曲が多かったですけど、ここからはワイワイしていくような感じで、最後まで楽しんでいってください」と「つくる」を投下。彼らの1stフルアルバム『つくる』のメドレーを聴いているような展開に胸が躍る。「つくる」、「国」、「Seamless」、「風船」、音源で聴くのももちろん素晴らしいが、生音で聴くことでより強度が増したひとひらの音に自然と体が揺れてしまう。インストゥルメンタルとしても彼らの音は十分成立すると思うが、そこに山北の歌声と彼の筆致で紡がれた歌詞が乗っかることで魅力を何倍にもしているのが、よく理解できる。キャッチーさとポップさがしっかりと担保され、その上で彼らは自由に音を鳴らし続けているのだ。
ライブは中盤戦に突入している。音が止まる。「この人、セトリを間違いました!」と山北が吉田を指摘する。「それは中国でのセトリだね、いい雰囲気だったのになあ」と山北。そんな言葉に恥ずかしそうに「すみません」と謝罪する吉田。彼らの人間味が溢れるやり取りにほっこりしていると、「久しぶりにやる曲です」と「海」を投下。ポップなサウンドがフロアには届く。さすがはひとひらだ、本当にいろんな表情を持っている。
邦楽特有のメロディラインは非常にキャッチーで、轟音を鳴り響かせる彼らのある種B面のようなサウンドに体が揺れる。オーディエンスは拳を突き上げ、その音に呼応している。ひとひらの音楽性を十分に見せつけると再びMC。雪国と同様に11月に新譜が出ることをアナウンスすると、山北はイベントタイトルにちなんで「ひとひらのここからを見せられるようなライブをします。最後までよろしくお願いします」とライブの終わりに向けて、ギアを入れ替えた。
「ひのめ」、「際」、「夏至」と連続して投下する中で、彼らは背骨にあるオルタナティブなサウンドをまざまざと見せつける。衝動的な歌い奏でるその姿は、まさに“これから”を期待させる佇まい。ステージの中心で声をシャウトさせる吉田の情熱的で衝動的な姿がとても印象的だった。最後は「フェリス」で締めくくる。凄まじい轟音とセンスあるサウンドでオーディエンスを魅了し続けた、彼らのライブ。1時間という時間があっという間に過ぎ去るほど、濃密な時間だった。
雪国とひとひらのこれからがますます楽しみなったことは、言うまでもない。今後彼らがどんな軌跡を辿り、バンドとして成長していくのか、これからもこの2組から目が離せない。
<公演情報>
Oaiko pre.『これまでとここから』
10月4日 東京キネマ倶楽部
出演:雪国 / ひとひら
●雪国
本当の静寂
あけぼの
ステラ
夕立
海月
時間
ポトス
二つの朝
素直な君は
東京
ひぐらしの夢
ゲルニカ
●ひとひら
こわす
鑑賞魚の行方
Friends
翡翠に夢中
ここじゃない地獄
one
つくる
国
Seamless
風船
The Sound of Summer Coming
海
ひのめ
際
夏至
フェリス
<雪国 公演情報>
雪国2nd full album『shion』Release Party
2025年11月7日(金) 東京・代官山 UNIT
開場 18:00 / 開演 18:30
<ひとひら 公演情報>
『hitohira en tour 2025-2026』
2025年11月30日(日) 神奈川・F.A.D YOKOHAMA
開場 17:15 / 開演 18:00
共演:downt
2025年12月20日(土) 栃木・宇都宮HELLO DOLLY
開場 17:30 / 開演 18:00
共演:said
2026年1月10日(土) 大阪・南堀江SOCORE FACTORY
開場 17:30 / 開演 18:00
共演:österreich
2026年1月11日(日) 愛知・名古屋CLUB UPSET
開場 17:30 / 開演 18:00
共演:yonige
2026年1月24日(土) 宮城・仙台enn 2nd
開場 18:30 / 開演 19:00
共演:ルサンチマン
2026年2月14日(土) 福岡・福岡UTERO
開場 17:30 / 開演 18:00
共演:elephant
2026年2月28日(土) 北海道・札幌SOUND CRUE
開場 17:30 / 開演 18:00
共演:Cuckoo
2026年3月14日(土) 京都・KYOTO MUSE
開場 17:15 / 開演 18:00
共演:KOTORI
2026年3月28日(土) 東京・渋谷 WWW X
開場 17:00 / 開演 18:00
共演:cinema staff
【チケット情報】
横浜、宇都宮、仙台、福岡、札幌公演:4,000円(税込/ドリンク別)
大阪、名古屋、京都、東京公演:4,500円(税込/ドリンク別)
▼10月25日(土) 10:00一般発売開始
https://w.pia.jp/t/hitohira-t/
・雪国 リンクまとめ:https://lit.link/ykq2bdna
・ひとひらリンクまとめ:https://linktr.ee/hitohira_band
・Oaiko X:https://x.com/oaiko_info
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