【十明 インタビュー】日常と希望、ワンルームから広がる5つの物語を描いた2ndデジタルEP『1R+1』リリース 月9ドラマ『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』主題歌も収録
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続きを読むPhoto:石原敦志 Interview&Text:松木美歩
シンガーソングライター・十明が、5曲入りの2nd デジタルEP『1R+1』を10月15日にリリースした。
ワンルームを舞台に描かれた作品は、身近でリアルな空間のなかで明るさやポップス感に寄り添いながら、彼女が持つ儚さや力強さをより惹き立たせた作品。かわいいだけのラブソングではない、復讐心や反骨精神、日記や手紙に書き殴っているような歌詞、さらには社会的な内容もあり、リアルを投影した作品でもある。
現在放送中の月9ドラマ『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』の主題歌として注目されている「GRAY」をはじめ、「クズ男撃退サークル」、「ねぇねぇ先輩」などタイトルから興味をそそる究極のラブソングなど、個性豊かに、広く多くの人に届く確かな手応えを感じる5曲が並んだ『1R+1』。11月には東名阪でのクアトロツアーも開催する十明に、今作について話を聞いた。
「暗い世界に思えても考えることをやめなければ進むことができる。そんな光をこの曲に閉じ込めたように思います」
── 2nd デジタルEP『1R+1』のお話を中心に伺います。まず、先行配信された「GRAY」がドラマ『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』の主題歌としてオンエアされていますが、放送はご覧になりましたか?
はい、リアルタイムで観ました。台本を事前に少し読ませていただいたんですけど、映像だとすごくリアルでドキドキしながら観ました。
── 事件が解決して安堵しながらも主人公の沢口靖子さんが涙を滲ませて、この先に向かっていく強い覚悟を感じる場面で「GRAY」が流れ始めました。物語と曲がリンクしていく瞬間はどう感じましたか?
この曲には問題が完全に解決されることはないというメッセージも歌詞に含んでいるんですけど、ひとつの問題が解決して、また新しい問題に向かっていくというシーンだったので歌詞に込めた気持ちが少しでもドラマを観ているかたに伝わったらいいなと思いました。
──「GRAY」はドラマのための書き下ろしですか?
はい、書き下ろしです。
── 長いスパンでシリーズ化されていているドラマで、ストーリーも前作からの繋がりを感じる部分も描かれていましたが、この曲もその世界観を引き継いでいるように感じました。意識された部分はありましたか?
今回は情報犯罪がテーマですけど、犯罪に対して私たちが思うところをきちんと描いてくれる作品なので、これまでのシーズンも含めて自分が思うことや感じていることを曲に描いています。犯罪や事件ってひとつの問題が解決しても、ほかの問題が絡み合う根深いものだと思っているので、だからこそ曲に希望を持たせたくて。どういう形で希望という光を提示したらいいのかって、すごく難しいテーマでしたけど、自分なりの解釈でその希望を伝えました。
── 最終的に何を光としたのですか?
主人公の取り組み方やチームの取り組み方が光かなと思っていて。向き合い続けることが希望そのものであって、暗い世界に思えても考えることをやめなければ進むことができる、何かを見出すことができる。そんな光をこの曲に閉じ込めたように思います。
── このシリーズで描かれている世界観ですね。冷たさと温かさ。十明さんが描きたかった光の部分を聞いて腑に落ちる感覚でした。
冷たさと温かさは意識したところで、冷たい世界の中でも人としての温かさというものが存在しているんだって、そんな風にイメージしてこの曲を作っていたのでそこを受け取ってもらえたのはすごくうれしいです。
── レディオヘッドやUKロックを普段聴いているとインタビューで読んだことがありますが、ダークさというか静寂さというか、暗くてもその中で光や希望を感じる。そんな空気感も「GRAY」には感じました。
そうですね。UKロックに一時期あったような社会に対しての不信感が漂うような楽曲を今までも作っていたし、そういう気持ちで楽曲を制作していたので影響を受けている部分はあると思います。
「この人に好かれなかったらもう終わりとか、ひとつのことに命を燃やす瞬間があると思っていて」
── UKロック以外で最近聴いている音楽はありますか?
最近は日本の音楽ばかり聴いているんですけど、ラップとかアイドルの曲も聴きますし、明るいループ系の曲とかも聴くし。UKロックよりもちょっとポップ寄りな曲を聴いたりすることが増えてきたような気がします。
──『1R+1』はどちらかというと明るさやポップな印象を持つEPですよね。
確かにそうですね。曲によってはわりと暗めな曲もあるんですけど、自分をもう少しオープンにするというか。これまでいろんな世界観を出してきたので、今回はもっとたくさんの人に聴いてもらえるように、全体の印象としては明るいポップス寄りな曲を作る意識でした。
── 1st アルバムは『変身のレシピ』というタイトル通りにいろんなレシピで変身していく、たくさんの扉を開いていくようなアルバムでしたが、今回はワンルームがテーマです。このテーマへはどんなところから着想したのでしょうか?
『変身のレシピ』は、やってみたいことだったり、自分のなかの取説的な部分や個性を出していく気持ちで挑んだ自己紹介のような作品だったんですけど、今回はもう少し生活に寄り添う、もっとリアル寄りというか。一時的な感情というよりも常日頃から抱いている感情にフォーカスしました。
── 実際にワンルームに住んでいるんですか?
私は実家暮らしなんですけど、初めてひとり暮らしをしてみようと思って、部屋を探しに行ったり、社会人になってひとり暮らしを始めた友人の家に遊びに行ったり、ワンルームのサイズ感を目の当たりにして、こういう感じで生活って行われていくんだというのが印象的で。早くひとり暮らししたい気持ちもありつつ、寂しくなっちゃうんだろうなとか、ワンルームに漂う空気感みたいなものをすごく感じられたので、もし自分がひとり暮らしをしたらどうなるかなというイメージで作り始めました。
── リアルでありつつも、想像上であり希望であり。
そうですね。いまは家族のルールの中で安心と温かさがありつつも、自分だけの世界を作るのはちょっと難しいんですよね。でも、ひとり暮らしをすると自分のインテリアの趣味がわかってきて、部屋作りにその人の世界観が現れるじゃないですか。そんな小さな自分だけの空間、部屋を作るような気持ちでした。
── ワンルームを舞台に描かれた5曲ですが、ひとつのテーマのなかにもいろんなタイプのラブソングが描かれていますよね。
ひとり暮らしの部屋で好きな人に会いたいという気持ちになったらどういう気持ちになるかな。会いに行くのかな、連絡するのかな、我慢するのかな……。そんなことを考えて作った曲だったり、誰かと一緒に暮らすことを考えてみたり、会いに行く前のドキドキした気持ちと部屋がちょっとごちゃごちゃしている雰囲気だったり。そんな風にイメージして作りました。
── 楽しそう(笑)。
楽しかったです(笑)。いつか自分が住んでみたい部屋を曲ごとに作れたんじゃないかと思います。ジャケットやアー写もスタッフのかたと一緒にビジュアルを作ったんですけど、すごく楽しくて。物が溢れている感じとか住みたい部屋の理想があの中に詰め込まれています。
── いろんな扉のラブソングがあって、バラエティに富んだ曲が並んでいて、そのなかでも「クズ男撃退サークル」はタイトルも含めてコミカルだし振り幅がすごいですよね。歌詞に《おのれ》ってなかなか出てこないと思うし(笑)。
武士みたいですよね(笑)。この曲は恋愛のなかにあるかわいい部分だけではなくて、強い復讐心とか反骨精神とか、恋愛ってそういう要素で頑張れるところもあるじゃないですか。そんな何かに立ち向かう姿を《おのれ》という言葉に込めているんですけど、こういうラブソングも意外と共感してもらえるんじゃないかなって。二十歳ぐらいのときは小さな出来事にすごくデリケートで、傷ついてその気持ちを曲に変換してエネルギーにしていたので、今回はラブソングのなかにそんな感情を入れ込んだ感じです。
──「ねぇねぇ先輩」も学生時代の恋愛のリアリティがありながらも、《第2ボタンちょうだい》とかわいく言うだけじゃなくて、《心臓ちょうだい》と表現されているのがなんとも赤裸々ですね。
赤裸々ですよね(笑)。極端になってしまう思春期の雰囲気を表現できたらと思って作ったんですけど、生きている感情とかその人のすべての動きだったり、その土台になっている心臓が欲しくなってしまうっていう。この人に好かれなかったらもう終わりとか、ひとつのことに命を燃やす瞬間があると思っていて、それが部活だったり将来への夢だったりする人もいれば、恋に命をかけて生きている人もいる。人ってのめり込むと極端になってしまうことがあると思うんですけど、それをうまく言葉にできたらいいなと思って、《心臓ちょうだい》と。
「世界に目を向けた後にも最後には自分の世界(部屋)に戻ってきてほしい」
──「クズ男撃退サークル」と「ねぇねぇ先輩」はさきほどおっしゃっていた、全体の印象としては明るいポップス寄りをより濃く感じる2曲ですよね。で、この2曲が挟む形で「GRAY」があるのが意外でもあったんですけど、曲順はどんな風にイメージされたんですか?
「GRAY」は終わりの空気感があるから最後の5曲目にしようという選択肢もあったんですけど、全体の並びを見たときに、「GRAY」で終わらせてしまうと社会的な話で終わってしまうので、個人的な場所にもう一回戻ってきてもらいたいと思って。青春時代の女性がひとりやきもきして、日記や手紙に書き殴っている内容があって、間に社会的な内容があって、そして最後に一番部屋をテーマにしている「ねばーえばーらんど」で終わるのが理想だなって。世界に目を向けた後にも最後には自分の世界(部屋)に戻ってきてほしい。
── なるほど。ワンルームを軸に景色は変わりながらも最後はこの場所に帰ってくる。
外の世界をみてきても帰る場所は自分の世界観。外を見つめ続けている部屋じゃなくて、自分の世界観を見つめる部屋。そこにちゃんと帰ってこれたらいいなって。
──「ねばーえばーらんど」はアコギでの弾き語りですが、その空気感がとてもよく出ていますね。
ありがとうございます。この曲は世界観を重視していて、誰かの隣りで弾き語りをしているようなイメージなんですけど、ストリングスも入れて世界観としては壮大にも思えるんですけど、 夢の中のようなぼやけた雰囲気だったり、ちゃんと聴こえているのは近くにある音だけみたいな。ふんわりした風景をイメージしてアコギでの表現になりました。
── タイトルがひらがなであるところにも夢の中のぼんやりとした雰囲気や柔らかさが表現されていますよね。
意識してひらがなにしました。歌詞を見たときにも受け取る感覚が変わるというか、あえて漢字にしないでひらがなにしたりとか、言葉そのものと文字としての視覚情報と音、いろんな部分を意識した曲でもあります。
── EPのタイトル、プラス1はなにを指しているんでしょうか。
ひとり暮らしの部屋に棲みつく誰かを想う気持ちだったり、実際に誰かと一緒にいてもいいんですけど、自分以外の誰かや物事の気配っていうところをテーマにしていて。「クズ男撃退サークル」だったら恋する相手であり復讐する相手だったり、「GRAY」だったら見えない誰かとの隣合わせの部屋だったり、「ねばーえばーらんど」だったら誰かと一緒にいたはずの部屋。ワンルームという空間でひとりだけど、ひとりきりではない誰かの気配。それがプラス1です。
── なるほど。では、この5曲の中で十明さんに一番近い世界観ってどの曲でしょうか?
「ねばーえばーらんど」ですね。私の中の解釈でこの曲は現実から逃げたいというか、そういう気持ちで眠り続けて、ひとりの部屋で陰鬱とした気持ちを表していて。昼も夜もわからないままずっと考え事だけが進んでいって、どんどん孤独になっていく。支えてくれる人がいても優しくもできないし、閉じこもってしまう。そんな自分の弱みみたいなところを投影して作っていて。生きていて何ができるんだろうとか、そんな暗い気持ちをちょっとさらけ出してみようという部分もあって、自分に近いかなと思います。
── この5曲はアレンジャーのかたもバラエティで「月並」と「クズ男撃退サークル」は100回嘔吐さん、「GRAY」はトオミヨウさんがアレンジされていたり、一曲一曲の存在感がより濃いものになってますよね。一緒に制作されてみていかがでしたか?
私が元々ボカロ好きで100回嘔吐さんもボカロの曲で知っていたんですけど、曲に対して音で意味づけしてくれる部分とか、ポップさを出しつつ個性を出すみたいなところをとてもうまく引き出してくださって、アレンジャーのみなさんのおかげで楽曲をより届きやすい形にしていただいて、私ひとりでは完成できなかった作品です。
── 11月からは東名阪のクアトロツアーが始まります。どんなライブになりそうですか?
クセつよなところだけではなくて、自分の素の部分を混ぜ込んだような少し生活感のあるところを今回のEPでテーマにしているので、観にきてくれるみなさんに楽曲をお届けしていくだけじゃなくて、少しリアルな十明の姿をお届けできたらと思っています。自分の思いの丈をちゃんと話してみるというか、これまでは音楽だけで伝えていたけどいつもより自分のことを話してみたり、曲のことを話してみたり、いろんな方法でみなさんと近くなれたらいいなと思っています。MC苦手なんですけどね(笑)、頑張ります。
<リリース情報>
2ndデジタルEP
『1R+1』
10月15日(水) 配信中
配信リンク:https://lnk.to/toaka_1R_1

【収録曲】
01.月並
02.クズ男撃退サークル
03.GRAY
04.ねぇねぇ先輩
05.ねばーえばーらんど
十明「GRAY」 Official Lyric Video
<番組情報>
フジテレビ『絶対零度~情報犯罪緊急捜査~』
毎週月曜 21:00~21:54
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/zettaireido/
<公演情報>
『十明 QUATTRO TOUR 2025』
11月3日(月・祝) 愛知・名古屋クラブクアトロ
11月15日(土) 大阪・梅田クラブクアトロ
11月30日(日) 東京・渋谷クラブクアトロ
【チケット情報】
▼スタンディング
一般:4,500円(税込/ドリンク代別)
Under18:3,000円(税込/ドリンク代別)
https://w.pia.jp/t/toaka/
★十明さんのサイン入りチェキを抽選で3名様にプレゼント

【応募方法】
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【プレゼント】#十明 🌙💫
— ぴあ 音楽編集部 (@OngakuPia) October 21, 2025
サイン入りチェキを抽選で3名様にプレゼント🎁
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⬇️インタビューはこちら⬇️https://t.co/uziDTeG3RW pic.twitter.com/LJmA7XdvaU
【応募締め切り】
2025年11月4日(火) 23:59まで
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