VINTAGE ROCKとぴあのタッグで、“今見たい!見てもらいたい!”アーティストをピックアップする共同企画ライブ『FUTURE RESERVE』の第8弾が、10月8日、東京・下北沢Flowers Loftで開催された。今回のアーティストは、2022年に始動したEnfants(アンファン)と、大阪北摂出身の3ピースバンドRe:name。このライブが初共演の2組かと思いきや、ボーカル・ギターの松本がEnfantsとして初めてライブを行なった大阪のイベントでRe:nameと共演していたという。そこから約3年、活動を重ね、それぞれがライブバンドとして磨き上げていった時間を経て、今回の『FUTURE RESERVE』で初のツーマンでのステージを迎えた。
まだ開場のBGMが流れるなかゆるりとステージに登場したのは、Enfantsの4人。観客もフロアにもまだ和やかな雰囲気が漂っていたが、インプロヴィゼーションからミニマムなビートによる「Dying Star」で一気にEnfantsの世界へと観客を飲み込んでいく。
インダストリアルなサウンドに、キャップを目深にかぶった松本の柔らかくもダークな色が滲んだボーカルが冴え、会場内をヒリヒリとした空気で侵食していく感覚だ。ビートとシンクロしたストロボライトもそこに拍車をかける。
続く「HYS」、そして「デッドエンド」へと加速して、ダイナミックなアンサンブルで揺さぶっていくのが最高だ。ソニックユースやピクシーズ、また90’Sオルタナティヴロックにひたひたに浸かったサウンド感だが、懐かしさや憧憬といったものを排除した、生々しく音をぶつけ合う4人のアンサンブルは濃厚で、その音圧が体に響く。
どん詰まりの停滞感を突破していく前のめりなスピードがあるが、その実直さにニヤリとしながら自らケリを入れる遊び心も混じっているのもいい。絶妙な塩梅のキャッチーさが心をくすぐるバンドだ。
冒頭3曲を終え、松本は観客に息をつかせるように軽めに挨拶をする。「正直、出順は逆だと思った」とチクリと言いながらも、Re:nameとはEnfants初ライブで共演していることを伝え、楽しんでやっていきましょうというMCから、続くは新曲「Punk Head」へと突入した。シニカルなメロディや、軋みを上げる大屋真太郎のギターと中原健仁のベースのフレーズの妙、爆発的な伊藤嵩のドラムが、再び観客のボルテージを上げる。
続く「社会の歯車」、そして「ひとりにして」「R.I.P.」ではさらに、Enfantsの内的な深みへと、観客を静かにズブズブとはまらせていく甘美な時間となった。
来年2月21日(土)には東京・恵比寿ザ・ガーデンホールでのワンマン『Tiny Cosmos』開催が決定したことをアナウンスしたEnfants。今回の新曲「Punk Head」ではこれまであまり積極的でなかったプロモーションも行っているようで、これまでの内向きさから最近は無愛想でいることを忘れつつあるという松本。「こんな歌詞を書いているやつ、いいやつじゃないですけど」と自嘲し、今日も何があったわけじゃないが機嫌は悪い方、みんなもそういうことあるでしょ?と一筋縄でない“らしさ”を覗かせながらMCをする。
飾らない言葉の後に続いた後半は、まず「Drive Living Dead」で盛り上げると、ひんやりとしたブルーの照明のなかで「惑星」をゆったりとドリーミーに紡ぎ上げる。UKロックの香りも加えながらドラマ性とドライブ感とに富んだ「Kid Blue」でアンサンブルのボリュームを上げていくと、続くは、セットリスト上はラストとなるはずだったが、「喋らなすぎたのか、4分巻いている」とのことで急遽、LAMP IN TERREN曲の「ニューワールド・ガイダンス」をねじ込んでいく。
フロアに“Yeah!”の声とコブシとが上がっていくなか、締めは「Play」へ。ボルテージを上げ続ける、迫力たっぷりの重厚なアンサンブルとシャウト的なボーカルが観客の叫びも生み出して、興奮の針を振り切ったままでステージを締めくくった。
続いて登場となった Re:nameは、Enfantsとはまた違ったステージングで、「Saturday,Sunday.」から「いこうか!」と高木一成(vo)が観客を煽りながら、「この会場でひとつになりましょう」と手を挙げさせる。軽やかに舞い上がっていくようなメロディ、シンプルでいてブライトなサウンドが会場内を明るくするライブのはじまりだ。ヤマケン(ds)のビートやsomaのギターの刻みで心地よくスピードを上げる、ダンサブルな「People」から、ポップでパンキッシュなサウンドにカラフルさがスピンしていくような「Living Fool」へと、メロディも眩さを増していく。
高木は「大阪から、東京に帰ってきました!」と挨拶をし、舞台袖にいた松本に茶々を入れられながら、Enfantsの初ライブでも同じステージに立っていたことなど、エピソードを交え(そして、よき後輩力も発揮しながら)MCする。世代も違えば、やっている音楽もそれぞれだが、ツーマンで親交も深められているのだろう。その関係値が見えるのもまたいい。
さらにツーマンということでたくさんの曲を持ってきたと、今年リリースしたフル・アルバム『GENIUS FOOL』のオープニングとなった曲「BABY BOY」から、中盤もサウンドの彩度を上げてフロアを揺らす。
洋楽のポップミュージックをルーツに、生のバンドの迫力はもちろん、エレクトロタッチでグルーヴ感を重視した曲など、やりたい音楽を柔軟に表現していく Re:name。ダンサブルなエレクトロポップ「KISS ME HONEY」や、ファンキーなsomaのギターリフでスタートした「What Do You Wanna Know?」ではタメの効いたノリのいいビートと大らかなメロディで、スケール感のあるソウルで、ロックなサウンドを聴かせる、ジュークボックス的な音楽で楽しませてくれるステージとなっている。
まだ20代のバンドだが、じつは結成したのは3人が16歳のとき。そこからひとりも欠けることなく、10年を迎えることを記念して来年からは『SIXTEEN + TEN』と題した Re:name史上最大のツアーをスタートする。
「10年のツアーを観に来てほしい」と、後半戦はさらにフロアの士気を上げながら、「日本の人はお淑やかだというけど、今日はお淑やかを解放しましょう!」「Make some noise!」「騒げ!」と高木の音頭で声を上げながら、ガレージロック的な「sorry my bad :(」でハンドクラップや掛け声を上げる。
さらに「新曲やります!」と披露されたのはパンキッシュなロックチューン「愛はきっとLonely」。まだこの時点ではリリースされていない曲(10月22日配信リリース)だが、バンドの生み出す空気感とこの空間に満ちるハッピーさで、他の曲同様にライブチューンとして盛り上がっていった。
ここからはさらにフルスロットルで、「今日はアンコールはやるつもりはないので、残り3曲、全力でついてきてください」と高木はハンドマイクで会場の熱気を上げながら、「prettyfine :)」で柔らかなファルセットを響かせて、続いた「24/7」では観客が24/7のハンドサインをしながら歌を口ずさむ。キャッチーで、フレンドリーなメロディをグルーヴィなアンサンブルがブーストし、フロアに笑顔が広がる。
そんな観客たちへ「またライブハウスで会いましょう」とラストに贈ったのは「Happy End Roll」。アルバム『GENIUS FOOL』を締めくくる曲でもあり、エンドロールにふさわしい、軽やかなステップで駆け上がっていくようなメロディラインと、その先へ期待感が音として鳴っているサウンドがドラマティックな曲だ。Enfants、 Re:nameで、心に残していった音楽の形はそれぞれだったが、共にいい余韻のあるライブとなった『FUTURE RESERVE vol.8』だった。
<公演情報>
『VINTAGE ROCK×チケットぴあ presents FUTURE RESERVE vol.8』
2025年10月8日 東京・下北沢Flowers Loft
出演 :Enfants / Re:name
セットリスト
●Enfants
1.Dying Star
2.HYS
3.デッドエンド
4.Punk Head
5.社会の歯車
6.ひとりにして
7.R.I.P.
8.Drive Living Dead
9.惑星
10.Kid Blue
11.Play
●Re:name
1.Saturday, Sunday.
2.People
3.Living Fool
4.BABY BOY
5.KISS ME HONEY
6.What Do You Wanna Know?
7.sorry my bad :(
8. 愛はきっと Lonely
9.prettyfine :)
10.24/7
11.Happy End Roll
<Enfants 公演情報>
Enfants presents "CUSTOM 3"
2025年11月25日(火) 東京・代官山SPACE ODD
2025年11月26日(水) 東京・代官山SPACE ODD
※詳細は後日発表
<Re:name 公演情報>
Re:name LIVE TOUR2026 ” SIXTEEN + TEN ”
2026年1月24日(土) 大阪公演
2026年2月13日(金) 東京公演
※詳細は後日発表
関連リンク
Enfants リンクまとめ:
https://lit.link/enfants
Re:name 公式サイト:
https://renamejpn.com/