三谷幸喜、歌舞伎役者の笑いのセンスに絶対の信頼! 新作『歌舞伎絶対続魂』は観客の爆笑で歌舞伎座のガラスを割る!?
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三谷かぶき『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン) ~幕を閉めるな~』稽古場にて。 左から)坂東彌十郎、中村鴈治郎、片岡愛之助、松本幸四郎、中村獅童、三谷幸喜作
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すべて見る三谷幸喜作・演出による新作歌舞伎である三谷かぶき『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)幕を閉めるな』の囲み取材が都内稽古場にて行われ、三谷をはじめ、松本幸四郎、片岡愛之助、中村獅童、坂東彌十郎、中村鴈治郎が出席した。
2019年に上演された『月光露針路日本 風雲児たち』以来、6年ぶりとなる「三谷かぶき」。かつて劇団「東京サンシャインボーイズ」時代に上演したコメディ「ショウ・マスト・ゴー・オン 幕を降ろすな」を新作歌舞伎として書き直しており、延享五年(1748年)に伊勢で初めて歌舞伎として上演された『義経千本桜』を巡り、舞台裏と舞台上で個性豊かな登場人物たちが錯綜する。
三谷は「今回の僕のテーマは、歌舞伎座始まって以来、ガラスが割れるくらいの笑い声に満ちたコメディをやることです。僕が知っている歌舞伎役者のみなさんは、コメディアンとしてもとても優れた人たちばかり。笑いのセンスのある喜劇俳優が集まっているので、それをフルに活かして最高の演劇をつくりたいです」と語る。

主人公の狂言作者・花桐冬五郎を幸四郎が演じるが、幸四郎は三谷を「100%信頼している人です。書いていただいたものをどう舞台で演じるかは役者次第なので、緊張はありますね」と三谷の描く唯一無二の世界観を舞台上で体現することへの意欲を口にする。三谷は「感慨深いのは、幸四郎さんと初めてお仕事させていただいたのは(幸四郎が)20代の頃で、あの時の幸四郎さん(の年齢)に(息子の)染五郎さんが近づきつつある」としみじみと語る。
獅童は、映画『国宝』の影響などもあって最近は歌舞伎を観に来る若い人が増えたことに言及しつつ「歌舞伎にはいろんなお芝居がある」と語り「難しい作品だけでなくコメディもあると知っていただけたら。歌舞伎をまだ見たことがない人たちで、『難しそう』とか『意味がわからないんじゃないか?』と思っている若い人が多いかもしれませんが、歌舞伎はもともと庶民の娯楽なので気軽に観に来ていただきたいですし、最初に観る作品として良いと思います」とアピール。
そんな獅童に対し、三谷からは稽古場での様子として「ふざけた方で、わりと脱線するんですね。急に田中邦衛さんタッチのシーンが出てきたり…ああいうの、やめてもらっていいですか?」と公開ダメ出しが……。獅童は「(台本が)そういうものだから」と反論するも三谷は「読み込めてない」とバッサリ。稽古場は笑いに包まれる。

座元の藤川半蔵を演じる愛之助について、三谷は「僕の中ではいつも愛之助さんには立派な人を演じてもらいたいと思うんですけど、今回は立派な愛之助さんじゃない、ふざけた頼りない、いいかげんなキャラになっています」とこれまでの三谷作品で見せてきたのとは違う顔が見られると語る。
彌十郎は今回、なんと女形の俳優を演じており、劇中劇の「義経千本桜」では静御前を演じることに……。三谷は「彌十郎さんがぜひ静御前をやりたいと言いまして……」と明かし「彌十郎さんは大好きで、ご一緒させていただく前からずっと舞台で面白い人がいるんだなと思っていました。この人には特別なことやってほしい」とキャスティングに込めた意図を説明する。
鴈治郎は三谷作品への出演は初めてとなるが、三谷は「いままで、なぜこんな面白い生き物が世の中にいること知らなかったのか……。悔やまれてならない」と語るほど鴈治郎のコメディセンスを絶賛する。
現在、放送中の三谷脚本のドラマ「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」も、本作と同様に演劇のバックステージを題材とした作品だが、三谷は演劇の舞台裏を描くことへの思いについて「僕は映像の仕事もやらせていただきますが、基本は演劇の人間です。舞台が好きだし、おもしろいし、舞台の裏で頑張っている人にリスペクトを感じています。そういう人たちの物語を世間に伝えたいし、脚光を浴びない舞台裏――歌舞伎には“舞台監督”はいなくて、“狂言作者”となりますが、名前は違うけどやっている仕事は同じで、裏方さんが頑張って成り立っていることを伝えたい」と語った。
「ショウ・マスト・ゴー・オン」は「東京サンシャインボーイズ」での初演、さらに令和四年にはリニューアル版が再演され話題を呼んだが、今回の歌舞伎版は三谷曰く「原形をとどめていない」とのこと。「さっき、獅童さんもおっしゃっていましたが、歌舞伎って本当にいろんな歌舞伎ある中で、僕がやるべきは笑いに特化した歌舞伎だと思っています。かなりいろんな仕掛けもあり、エンタテインメントとしての歌舞伎のひとつの到達点みたいになるといいなと思います」と自信と手応えを口にしていた。
三谷かぶき『歌舞伎絶対続魂 幕を閉めるな』は11月2日(日)より、東京・歌舞伎座にて、「吉例顔見世大歌舞伎」夜の部で上演。
取材・文・撮影:黒豆直樹
<公演情報>
歌舞伎座 松竹創業百三十周年
「吉例顔見世大歌舞伎」夜の部
三谷かぶき『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン) ~幕を閉めるな~』
作・演出:三谷幸喜
出演:
狂言作者花桐冬五郎:松本幸四郎
座元藤川半蔵:片岡愛之助
山本小平太:中村獅童
油屋遊女お久:坂東新悟
浅尾天太郎:中村福之助
篠塚五十鈴:中村莟玉
市山赤福:中村歌之助
坂田虎尾/狂言作者見習花桐番吉:市川染五郎
竹田出雲弟子半二:中村鶴松
附打芝助:片岡千太郎
囃子方五郷新二郎:大谷廣太郎
附師鍛冶屋為右衛門:澤村宗之助
大道具方儀右衛門:阿南健治
骨つぎ玄福:浅野和之
竹田出雲:市川男女蔵
榊山あやめ:市川高麗蔵
竹島いせ菊:坂東彌十郎
頭取嵐三保右衛門:中村鴈治郎
琴左衛門:松本白鸚
2025年11月2日(日)~26日(水)
【休演】10日(月)、18日(火)
【貸切】24日(月) 夜の部 ※幕見席は営業
※下記日程は学校団体来観
昼の部:4日(火)、7日(金)、13日(木)、14日(金)、19日(水)、20日(木)
夜の部:12日(水)
会場:東京・歌舞伎座
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2536557
公式サイト:
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/939
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