【通し稽古レポート】奇跡の老人が地球を救う? 劇団スーパー・エキセントリック・シアター第63回本公演 ミュージカル・アクション・コメディー『地球クライシスSOS~奇跡を起こせ!ロウジンジャーズ~』
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(左から)小倉久寛、三宅裕司
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すべて見る劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET(エスイーティ))による第63回本公演が、2025年10月23日(木)から池袋のサンシャイン劇場で上演される。公演タイトルは、ミュージカル・アクション・コメディー『地球クライシスSOS~奇跡を起こせ!ロウジンジャーズ~』。常に、新たな設定とストーリーで観客を楽しませようという座長・三宅裕司のショーマンシップが今回も発揮された内容だ。開幕を目前に控えるなか、都内で通し稽古が行われた様子をお届けする。
主人公は、老人たちで結成された“ロウジンジャーズ”の面々。「これまでの人生で奇跡を起こしたことがあり、何事にも動じない人生経験を持っている」という条件をクリアし、選ばれた彼らは政府から地球外生命体との交渉という重要任務を任される――。そんな設定からして、どんなストーリーになるのか興味が尽きない本公演は、実際、想像の“ナナメ上”をいく予測不能な展開に引き込まれてしまう。
物語の幕開けは、とある村でのシーン。少子高齢化により、過疎化が進む村では、伝統を重んじる年寄たちと「生活のためには近代化やむなし」と考える若者たちとが対立していた。
のちに“ロウジンジャーズ”のメンバーとなる奇跡の野菜農家・田中耕作を演じる小倉久寛をはじめとするベテラン勢、対する村の青年団を演じる山城屋理紗、大城麗生ら若手俳優がステージに集結する。20代~70代の幅広い年代の劇団員が所属している老舗劇団だからこその光景。これぞSETの醍醐味だ。


冒頭で描かれる、世代間の衝突、人手不足やそれに伴う農業の近代化など、令和の農村が抱える問題は、全国共通だろう。単なるエンターテインメントに留まらず、時代を反映したストーリーも魅力のひとつだ。脚本は近年の劇団本公演で演出助手を務め、自身も演出家として数多くの舞台に携わる劇団員の小暮邦明によるもの。今年入団20年目を迎え、稽古場でも存在感を放つ。
青年団が企画した村のPR動画を撮影する、という今どきな場面では、ダンサー4人が躍動。SETらしいアクション満載のステージが繰り広げられる。村では、長い歴史を誇る秋の収穫祭が控えているが、年寄たちと若い世代の溝は埋まりそうにない――。
そして、物語は急展開。アメリカの極秘司令により、地球外生命体との交渉国として日本が大抜擢されたのだ。その理由は、温和で協調性に富んだ国民性だというが、真相はいかに? そもそも、彼ら地球外生命体が求める交渉とは? 内閣会議室では、交渉役の担当省庁を決める緊急閣僚会議が始まる。

内閣総理大臣・大泉新三郎(岩澤晶範)、財務大臣・宇層五郎(栗原功平)、防衛大臣・麦田桃美(山口麻衣加)ら、クセ強な官僚たち。そして、官房長官・佐藤勝吉を演じる三宅裕司も加わり、地球外生命体との交渉という無理難題を各省庁が擦り付け合う様子が、皮肉たっぷりに描かれる。現実のニュースを騒がせる、タイムリーな時事ネタも随所に織り込まれており、笑いに包まれる客席が今から目に浮かんでしまう。
実際、通し稽古中は出番を控える共演陣から、大きな笑い声が聞こえることもしばしば。通し稽古といえば、一般的には緊張感溢れる空気を連想してしまうが、本公演に関しては、稽古場に響く笑い声がSETならではのグルーヴを生み出し、活気がみなぎっていた。

三宅演じる官房長官が、ロウジンジャーズのメンバーとして、小倉演じる農家の田中耕作をスカウトするシーンは、「両雄並び立たず」という言葉がふさわしい演技合戦が展開。アドリブの応酬で、稽古場の笑いも最高潮に達したが、三宅と小倉の両名も笑いがこらえきれずに、芝居がストップしてしまう瞬間も。三宅は、演出席に戻りながら「笑っちゃって、自分も驚きました。ここは考えないとまずいですね(笑)」と本音をもらす。本番を迎え、このシーンがどんな風に仕上がるのか、楽しみに待ちたいところだ。
とある農村で巻き起こるいざこざと、人類の存亡をかけた地球規模のSF展開。そんな相容れないはずのエッセンスが、見事に調和しているが、これもまた特定のジャンルに縛られない「総合芸術」的なアプローチで、観客を楽しませてきたSETだからこそ。村の若者たちの葛藤や恋心、ふるさとへの思いも描き、老若男女誰もが共感できるシナリオだ。

昨年、劇団創立45周年を迎え、50周年に向けて走り出した劇団スーパー・エキセントリック・シアター。ミュージカル・アクション・コメディーを旗印に、歌、ダンス、アクション、笑いを融合させた舞台を展開し、今や20代から70代と3世代の劇団員が所属する劇団が新たなステップを踏み出す『地球クライシスSOS~奇跡を起こせ!ロウジンジャーズ~』。今年も爆笑必至、サービス精神満載なエンターテインメントに期待したい。

取材・文/内田 涼
<公演情報>
劇団スーパー・エキセントリック・シアター 第63回本公演
ミュージカル・アクション・コメディー『地球クライシスSOS~奇跡を起こせ!ロウジンジャーズ~』
日程:2025年10月23日(木)-11月3日(月・祝)
会場:サンシャイン劇場
[脚本] 小暮邦明
[演出] 三宅裕司
[出演] 三宅裕司、小倉久寛
永田耕一、田上ひろし、野添義弘、岩永新悟、赤堀二英、西海健二郎、おおたけこういち、安田 裕
榊(木へんに神が正式表記) 英訓、栗原功平、岩澤晶範、長谷川慎也、辻(一点しんにょうが正式表記) 大樹、時松研斗、浅田壮摩、大城麗生、千葉雅大、宮下幸生、白倉基陽
三谷悦代、杉野なつ美、丸山優子、白土直子、良田麻美、南波有沙、久下 恵、山口麻衣加、鎌田麻里名
立川ユカ子、白井美貴、山城屋理紗、須田 歩、村田彩夏、鶴田 彩、髙山夏姫、宮原 遥、松浦穂華
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/set-63/
公式サイト:
https://www.set1979.com/stage/2025/
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