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歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」片岡愛之助、再びの五郎蔵役を語る「男伊達というくらい、粋でいなせ」

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片岡愛之助

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2025年11月2日(日)に東京・歌舞伎座で開幕する松竹創業百三十周年「吉例顔見世大歌舞伎」。昼の部で河竹黙阿弥作『曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)御所五郎蔵』の御所五郎蔵を勤める片岡愛之助が取材会にのぞみ、取材陣を前に意気込みを語った。夜の部には三谷幸喜による新作『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン) 幕を閉めるな』にも出演、昨年負った怪我からの復帰、また上方歌舞伎への思いと、さまざまな話題が飛び出した。

黙阿弥ものの台詞は歌うように、お耳に心地よく届くように

もと武士の御所五郎蔵とかつての朋輩、星影土右衛門が傾城の皐月をめぐり男の意地を張り合い、派手やかな立廻りや黙阿弥らしい七五調の渡り台詞など、見どころにあふれた『御所五郎蔵』。上演に向けて、「星影土右衛門で(尾上)松緑さん、甲屋与五郎で(松本)幸四郎さんに出ていただくという本当にありがたい顔ぶれで、歌舞伎座で勤めさせていただけること、こんな嬉しいことはございません」と喜びを語った愛之助。五郎蔵は昨年11月、立川ステージガーデンでの「立川立飛歌舞伎特別公演」『新版 御所五郎蔵』にて初役でのぞんだ役柄。一度でいいから演じてみたかった役だという。

11月歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」ポスター

「男伊達というくらいですから、やはり粋でいなせで、拵えもすごく素敵。あの墨絵の衣裳、台詞も黙阿弥独特の心地良いやりとりで、役者としても格好いいな、素敵だなと思います。僕は上方の役者で、大阪で黙阿弥作品がかかったとしても、なかなか自分が勤める機会はなかったのですが、実際に台詞を言わせていただき、難しいなと感じました」

立川ステージガーデンは約2,500席の大規模会場、愛之助が「七三まで辿り着けるかな?」と戸惑ったほどの長い長い両花道を使っての上演だった。五郎蔵、土右衛門とその子分らが、その長い両花道にずらりと並び次々と台詞を繋いでいく渡り台詞。観客はそれぞれが台詞を喋る瞬間を見逃すまいと、右、左、右と視線を動かす。「面白いんです。お客さまがまるでテニスの試合を観ているようで(笑)」。今回の上演は両花道ではないが、この演目の最大の見せ場のひとつとして、多くの観客を大いにワクワクさせるだろう。「黙阿弥ものの台詞は歌うように、皆さんのお耳に心地よく届くように意識しなければなりません。渡り台詞と後の「縁切り」とではガラッと雰囲気が違うので、分けて勤めることも重要」と、1年前の取り組みを振り返る。

『新版 御所五郎蔵』御所五郎蔵=片岡愛之助 (令和6(2024)年11月立川ステージガーデン) 撮影:井川由香

「あんな格好いいところから一変して、本当にダメ男に。そもそも途中で気づけよ!と思いますが(笑)、そこが歌舞伎の良さだと思います。殺し合いも、どこを切り取っても絵になって、残酷にならない、その美しさ。そういうところを観ていただきたいですね。そこが歌舞伎のなせる技、歌舞伎味だと思いますが、押し付けがましく、こう観てください、ではなく、お客さまそれぞれに感じて、楽しんでいただきたい。いろんな人が演じて、この人だとまた違うよね、と別の解釈で受け止められるのも、歌舞伎の面白さだと思います」

三谷かぶき『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)幕を閉めるな』 ティザービジュアル

いっぽう夜の部の『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン) 幕を閉めるな』は、2019年に歌舞伎座で上演された『月光露針路日本 風雲児たち』に続く三谷かぶき第2弾。愛之助にとっても二作目の三谷かぶきだ。「絶賛お稽古中ですが、非常に和気藹々と、楽しく作らせていただいております。身内受けなのか、皆さんが観て面白いのか、もうわからなくなってきているんですけれども(笑)、間違いなく面白いと思います。千穐楽まで、皆で力を合わせて頑張りたい」と意気込む。“三谷節”満載の舞台となりそうだが、「三谷さんがそれぞれのキャラを固めてくださっていて、出てきただけで面白いという人も(笑)。設定も面白く、本当に三谷さんはすごい。最初のご挨拶で、どかんどかんと、歌舞伎座始まって以来の笑いを取りますからとおっしゃっていました(笑)。僕らもどっかんどっかん笑っています」と期待感を煽った。

命のありがたさ、日々悔いのないように生きる

2025年を振り返っての思いを尋ねられると、昨年11月、舞台稽古中に装置に接触して、あわや即死の大怪我を負ったことに触れた。

「健康のありがたさ、毎日お芝居ができることのありがたさが身に染みました。もしあそこで即死していたら、いまだに僕、あの南座の舞台の上で死んだと気付かず、『出番まだかな』と待っているんでしょうから(笑)。命のありがたさ、日々悔いのないように生きようっていうことを、なお一層強く思いました。退院後、『仮名手本忠臣蔵』に向けての取材会で叔父の仁左衛門と会ったのですが、『命を救われ、生かされたということは何らかの使命があるのだから、それをきちっと背負い、頑張って生きていってください』と言われ、じーんときました。何の使命かわかりませんけれど、間一髪のところで生き延びたということは、精進して、全うしなければいけないものがあるんだろうと思いながら、日々勤めております」

舞台復帰は3月の歌舞伎座公演、通し狂言『仮名手本忠臣蔵』。初役で大星由良之助にのぞんだ。「なかなか『やりたいです』と手を挙げてできる演目ではありません。本当に難しいお役ですし、Wキャストの半分がうちの叔父。本当にもう、どういうことかなと思って(笑)。ずっと舞台に立っていなかったので、台詞が言えるのかもわからず、通しの由良之助には不安しかなかったのですが、舞台に出た瞬間、お客さまからものすごい拍手で、涙が出そうになりました」。二度とやりたくない役になるかもしれない、という危惧もあったが、「1日も早く、またやりたいと思えるお役に。早速1月に(大阪松竹座で)やらせていただくことになりました」とも。

自身のやり方で、少しでも上方歌舞伎の継承、発展に貢献したいという思いも、強い。「僕はもともと歌舞伎界に生まれた人間ではなく、松嶋屋というお家に入れていただき、師匠の背中を見て育ってきたわけですが、十三世(片岡仁左衛門)、うちの亡くなった父(片岡秀太郎)は上方歌舞伎に命を懸けて生き抜いた方々。僕がどこまでできるかわかりませんが、上方歌舞伎に命を懸けて生き抜いたら、すごく格好いいじゃないですか」。古典芸能の担い手として、先人から引き継いだものを後世に伝える役割を大事にしつつ、新しい作品を作り、さまざまな俳優たちによって再演される作品を作りたいという思いも抱く。「それが、歌舞伎がこの後世に残ることに繋がると思います」。

取材・文:加藤智子

<公演情報>
松竹創業百三十周年
「吉例顔見世大歌舞伎」

【昼の部】11:00〜
一、御摂勧進帳(ごひいきかんじんちょう)加賀国安宅の関の場

二、道行雪故郷(みちゆきゆきのふるさと)新口村

三、鳥獣戯画絵巻(ちょうじゅうぎがえまき)

四、曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)御所五郎蔵

【夜の部】17:00〜

一、當年祝春駒(あたるとしいわうはるこま)

二、三谷かぶき 歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)
幕を閉めるな

2025年11月2日(日)~26日(水)
会場:東京・歌舞伎座

【休演】10日(月)、18日(火)
【貸切】※幕見席は営業
夜の部:24日(月)

※下記日程は学校団体来観
昼の部:4日(火)、7日(金)、13日(木)、14日(金)、19日(水)、20日(木)
夜の部:12日(水)

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2536557

公式サイト:
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/939

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