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名作に新たな息吹を 花總まり×森公美子らが紡ぐミュージカル『バグダッド・カフェ』【稽古取材レポート】

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ミュージカル『バグダッド・カフェ』稽古より (撮影:荒川潤)

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ミニシアターブームのきっかけとなった大ヒット映画『バグダッド・カフェ』が、新たにミュージカルとなって生まれ変わる。東京・シアタークリエでの初日開幕が迫る中、都内某所にある稽古場に潜入。その創作過程を覗かせてもらった。

パーシー・アドロン監督の映画『バグダッド・カフェ』は、1989年に日本公開。異例のロングランを記録し、昨年には4Kリマスター版が上演されるなど、今なおその人気は高い。そしてアドロン監督自身とその妻エレオノーレ・アドロンが脚本を、映画と同じくボブ・テルソンが音楽を手がけたのが、このミュージカル版『バグダッド・カフェ』だ。日本では今回が初演となり、演出をミュージカル『梨泰院クラス』など話題作が続く小山ゆうなが担う。

穏やかな稽古場で立ち上がる“新しいバグダッド・カフェ”

個々の歌稽古を経て、本格的な稽古が開始されたのが9月半ば。すでに約1か月を共にしているカンパニーの空気はとても和やかだ。音楽監督である荻野清子が奏でるピアノの音色が響く中、発声練習をする者、ストレッチをする者、おしゃべりに花を咲かせる者など、稽古開始までの時間を思い思いに過ごしている。

この日行われたのは1幕の通し。ドイツ・ローゼンハイムからの旅行者ジャスミン・ムンシュテットナーと、その夫によるいざこざから物語は始まる。ジャスミンを演じるのは花總まり。映画版では一瞬で目を引く、割腹のいいドイツ人女性だったが、華奢でかわいらしい印象の花總は、これまでにない、全く新しいジャスミン像を期待させる。冒頭の夫婦喧嘩の顛末は夫との決別。ジャスミンは夫をその場に残し、スーツケース片手にひとり砂漠へと歩を進める。この一歩が彼女を、そしてこれから出会うバグダッド・カフェの人々の人生を、大きく変えていくことになる。

場面変わって、物語の舞台であるバグダッド・カフェへ。砂漠の真ん中にあるこの地では、常に乾いた風がカフェにはもちろん、人々の間にも吹いているようだ。そこにカフェの主人であるブレンダが登場。息子サル・ジュニアが弾くピアノの音に、夫サルの不甲斐なさ、さらには壊れたコーヒーメーカーなど、ブレンダの周りには常に彼女をイラつかせるもので溢れている。ブレンダを演じるのは森公美子。1幕の間ずっと機嫌の悪いブレンダだが、森が演じることでそこはかとないコミカルさが滲み、もうひとりの主人公としてなんとも魅力的な人物像を形成している。自身の辛い心情を歌い上げるブルース調のナンバー「あたしは泣かない」は、森にぴったりな一曲でしびれるカッコ良さ。

名曲「Calling You(コーリング・ユー)」はミュージカルならではの表現で

そして全キャストが登場しての「Calling You(コーリング・ユー)」は、『バグダッド・カフェ』を象徴するメインナンバー。映画は知らずとも、このメロディだけは聞いたことがあるという人は多いはずだ。そのメロディの美しさに酔いしれつつ、ミュージカルならではの表現として秀逸だと感じたのが、ジャスミンとブレンダが歌い合うシーン。「I am calling you あなたを呼んでるの」という歌詞が、まだ見ぬお互いへの呼びかけとなり、今後ふたりがかけがえのない存在になることを想起させる。

夫と別れ、ひとりバグダッド・カフェに流れ着いたジャスミン。英語は片言、砂漠の中を車もなしに現れたジャスミンを、ブレンダは“悪魔”呼ばわりする。だがカフェの隣のトレーラーハウスで暮らす画家のルディにとっては、砂だらけの地に舞い降りた天使そのもの。

花總と森を中心に、ルディ役の小西遼生、ブレンダの長女フィリス役の清水美依紗、カフェの店員アブドゥラー役の松田凌、ブレンダの夫サル役の芋洗坂係長、保安官アーニー役の岸祐二、ジャスミンの夫ムンシュテットナー氏役の坂元健児など、ミュージカル界を代表する巧者がずらり。映画版は全体的に乾いた、どこかカラッとした空気感が魅力的でもあったが、このミュージカル版ではバラエティ豊かな音楽に乗せ、笑いも存分に盛り込まれたカラフルな作品に仕上がりそうだ。1幕ではお目にかかれなかったが、ジャスミンとブレンダの手品シーンも大きな見どころ。劇場で目撃出来る日が、今から楽しみでならない。

取材・文:野上瑠美子 撮影:荒川潤

<公演情報>
ミュージカル『バグダッド・カフェ』

脚本:パーシー・アドロン/エレオノーレ・アドロン
音楽:ボブ・テルソン
歌詞:リー・ブルーワー/ボブ・テルソン/パーシー・アドロン
演出:小山ゆうな
翻訳・訳詞:高橋知伽江
音楽監督:荻野清子

【キャスト】
ジャスミン・ムンシュテットナー:花總まり
ブレンダ:森公美子
ルディ・コックス:小西遼生
フィリス:清水美依紗
アブドゥラー:松田凌
サル 他:芋洗坂係長
アーニー 他:岸祐二
ムンシュテットナー氏 他:坂元健児
デビー:太田緑ロランス
サル・ジュニア:越永健太郎
ほか

【東京公演】
2025年11月2日(日)~23日(日・祝)
会場:シアタークリエ

【愛知公演】
2025年11月28日(金)~30日(日)
会場:Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール

【大阪公演】
2025年12月4日(木)~7日(日)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

【富山公演】
2025年12月13日(土)・14日(日)
会場:富山県民会館

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/bagdadcafe/

公式サイト:
https://www.tohostage.com/bagdad-cafe/

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