『もてなす美 ―能と茶のつどい』泉屋博古館東京で 多彩な能装束や茶の湯にまつわる道具類のコレクションが一堂に
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《紅地時鳥薬玉模様縫箔》江戸時代・18世紀 泉屋博古館東京
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すべて見る住友家が収集した美術品・工芸品を中心に収蔵する六本木の泉屋博古館東京で、11月22日(土)から12月21日(日)まで、歴代の当主たちが客人たちのもてなしの場で用いるために集めてきた能や茶の湯にまつわるコレクションに焦点をあてた展覧会が開催される。
住友家の当主たちは、自らの教養として能楽や茶の湯などをたしなむとともに、自ら能や茶の会を主催し、客人をもてなすことでさまざまな交流関係を築いてきた。なかでも15代当主・春翠(しゅんすい)は、明治から昭和初期の関西を中心に活躍した能楽師・大西亮太郎の一門を自邸に招いて演能をたびたび行い、また自らも大西に謡と仕舞を学んでいた。その大西の協力もあり、同館が所蔵する能関係の諸道具は、その多くが春翠によって集められたものだという。

春翠が集めた能装束コレクションは約100点を超えるが、その特徴は単に鑑賞用としてではなく、実際に演能で使用されるために集められたものが多く、種類も豊富なことだ。狩衣や長絹など、落ち着いた美しさを見せる装束も数多く含まれており、今回も春翠が実際に身に着けて舞を舞ったと考えられる装束も紹介される。東京で住友コレクションの能装束がまとまったかたちで公開されるのは、2006年の『The 能』展以来、ほぼ20年ぶりのこととなる。また、技法という点から能装束に着目し、「染織と金属」をテーマとしたコーナー展示があるのも興味深いところだ。今回は、能装束以外にも、春翠が最初に手に入れた能面である《白色尉》や楽器、7代当主・友輔(ともすけ)が演能で使用したと考えられる能面など、歴代当主ゆかりの品々も登場する。

一方、茶会も住友家の大切なもてなしの場だった。春翠も大正期に茶会を度々主催し、その折々に用いられた道具類や客人の名が茶会記に記録されている。茶もたしなんだ能楽師の大西が客として招かれることもしばしばあり、こうした茶の湯にまつわる諸道具が展示される同展では、能の師であり茶の湯の友でもあった大西と春翠の交遊関係が心温まるエピソードとともに紹介される。今回の出品総数は、約60点で、会期中の展示替えはない。春翠を中心とした住友家におけるもてなしの美をゆっくりと鑑賞したい。
<開催概要>
2025年秋季 企画展『もてなす美 ―能と茶のつどい』
会期:2025年11月22日(土)〜12月21日(日)
会場:泉屋博古館東京
時間:11:00〜18:00、金曜は19:00まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜(11月24日は開館)、11月25日(火)
料金:一般1,200円、学生600円
公式サイト:https://sen-oku.or.jp/tokyo/
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