舞台「かげきしょうじょ!!」第3章 The Final 稽古場レポート
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すべて見る「原作」と「舞台」とが「幸せな出会い」を果たした作品の最終章
11月1日(土)より舞台「かげきしょうじょ!!」第3章 The Finalが三越劇場にて開幕する。
この舞台は2012年から斉木久美子氏により連載中の漫画を原作とし、2023年から舞台化されたシリーズの第3弾であり、最終章となる。
未婚女性のみで構成された「紅華歌劇団」の劇団員を育成する「紅華歌劇音楽学校」を舞台に、「オスカル様」に憧れる天真爛漫な主人公・渡辺さらさと、未来のスターを目指す個性豊かな「歌劇少女」たちの青春と友情、奮闘を描いた物語だ。
最終章となる今回は、原作では5巻から7巻の途中、アニメでは第十一幕から第十三幕(最終話)で描かれている<文化祭オーディション>のエピソードを主軸に、スピンオフエピソードとして、本編の後、回替わりの短いエピソードを上演するという。
脚本では紅華歌劇音楽学校のシステムや登場人物について、わかりやすく紹介をしている台詞が随所にあり、初見でもじゅうぶん楽しめるようになっているが、せっかくの最終章公演。キャラクターたちのこれまでの歩みを知っているほうが、万感の想いで今回の舞台を楽しむことができると思うので、事前の原作もしくはアニメの履修をおすすめしたいところだ。
なぜかというと、この舞台は稀に見る「原作」と「舞台」とが、幸せな「出会い」を果たした作品だからだ。
例えば、主人公・渡辺さらさを初演から演じているのが、志田音々。さらさと同じくすらりとした長身と、いつでも会う人をふにゃりと和ませる笑顔で、ファンやキャスト・スタッフから<ナチュラルボーンさらさ>と呼ばれている。さらさと彼女が出会ったことだけでも奇跡のような幸運なのだが、【乙女のみの歌劇団の入団を夢見る少女たちの青春】を、【生の舞台】で観るというエモーショナルさは、ちょっと他の作品では得られないものがある。
悩み、傷つき、努力し、仲間とともに一歩ずつ前進する少女たちの物語と、舞台上でのキャストの演技や表情、台詞が美しく重なる瞬間が「舞台かげき」にはある。
「原作独自の魅力」と「舞台でしか観られないもの」が向かい合い、ぎゅっと手のひらを合わせたような、尊いきらめきを放つ作品を観られることはそう多くはない。
取材に訪れた稽古場でもその片鱗を感じることができた。
2階席まで歌詞を届けるための、歌稽古

取材日は稽古期間の中期~終盤にあたる。この日は昼から本編の部分稽古、夕方からは歌稽古が行われるとのことで夕方に伺った。(※注※写真は稽古初日の歌稽古のもの)
広くはない稽古場だが、すでに舞台セットと同じ縮尺の建て込みもされている。全員ではないが、ほぼ8割のキャストが集まった中、歌稽古が始まった。









楽曲は、「舞台かげき」では初演から大切に歌い継がれている「星の旅人」。
作詞、作曲、編曲は数多くのドラマ、アニメの劇伴、また宝塚歌劇団の楽曲を手がけてきた国際的に活躍する音楽家・斉藤恒芳氏によるもので、TVアニメのEDテーマでもある。
細く長い道を出した紅華歌劇団の生徒たちが、いつの日か翼を広げて星をめぐる旅人になる、という願いを歌った詞で、振り付けがあるだけではなく、目まぐるしく立ち位置を移動するステージング、歌唱ではソロパート、グループパート、ユニゾン、ハモりもある。
すべての登場人物の見せ場が複雑に絡みあい、重なり観客の情動を盛り立てる構成で、初演、2章と違いはあるが「舞台かげき」のクライマックスを担う『かげきしょうじょ!!』随一の楽曲だ。
歌唱指導は久野友莉さん。「舞台かげき」には今回からの参加だが、前作から参加しているキャストに細かくヒアリングをして、これまでの上演での蓄積を活かしつつ、今回の作品で楽曲がより観客に届く方法を模索する。
久野先生が叩く電子ピアノのメロディで音程を確認しながら、キャストごと、グループごとが個別に自身のパートを歌い、その後、振り付きで全員で合わせるという流れで稽古は進んでいった。
「歌詞のためにメロディがあるんだよ。音をはずしてもいいから歌詞を2階席まで届けよう!」
声をかけながら、歌詞やメロディの意味を少しずつ解きほぐす。それを受けたキャストの歌声は、回数を重ねるごとに、どんどん自由に、のびやかになっていく。
ふと今作の劇中で、さらさの演技を見た歌劇学校講師の小野寺保(演・鷲尾昇)が「あの子には2階席が見えているのね」と呟くシーンがあることを思い出す。
この歌稽古は歌唱のクオリティを上げる稽古ではなく、振り付けと歌詞、キャラクターの心情と演者の表情とがリンクしてさせていく作業そのもののようだった。見学していて「この曲を本番で2階席から聞いてみたい!」「届けようとしている想いを客席で受け取りたい!」と強く思った。
舞台「かげきしょうじょ!!」は「演劇」を「演じる」演劇
脚本、演出を手掛けるのは、国内外問わず幅広く活動するKPR/開幕ペナントレースを主宰する村井雄氏。第2章から「舞台かげき」の作・演出を担当している。
ここまでの稽古について村井氏は
「キャストの皆さんもファイナルということに特別な想いがあるのが伝わってきますね。新しいメンバーがいてもやっぱり作品の世界観が強いのか、座組のチームワークが早いうちからでき、今は良いものができている気がします」と仕上がりへの期待を見せる。
「今回のメインストーリーは<文化祭オーディション>のエピソードですが、オーディションで役を勝ち取りたい、という演劇の醍醐味、情熱、役を掴むために真剣に取り組む姿を舞台上で俳優が演じるのは、非常にメタフィクション的でもあります。すごく演劇的な作品なんですよね。基本的に人間はその場に応じた自分を演じているものだけれど、この作品でキャストは役の中で演技をして、<演劇>を<演じて>います。
それをしっかり捉えられる、達者な俳優さんばかりです。原作ファンの方も、演劇ファンの方も楽しめるんじゃないかなと思います」
時間が前後するが、歌稽古の直前は、演出家が俳優にパートごとに稽古した演技の修正などを伝える時間(「ノート」や「ダメ出し」などと呼ぶ)だった。
文化祭オーディションのシーンの小返しを終えたキャストに向かって村井氏が「この中でオーディションを受けたことがない人、落ちたことがない人っていますか?」と投げかけてからノートに入る場面があった。その時、キャストたちがどんな表情をしていたのか、こちらからは伺い知ることはできなかったが、そこにいるのは全員プロの俳優であり、声優であり、アーティストであり、エンターテイナーだ。オーディションの緊張や苦しみ、勝ち取った時の喜び、戸惑い、選外になった時の悔しさ、諦め…等々をひとつも経験して来なかった人はおそらくいない。間もなく迎える本番で、それぞれの物語内での役割と、自身の経験と、様々な想いを役に込めて、舞台上で美しく咲かせて演じ、見せてくれるに違いない。
開幕まであと数日。その綺羅として凛とした姿を客席で迎えたい。
<公演情報>
舞台「かげきしょうじょ!!」第3章 The Final
脚本・演出:村井 雄(KPR/開幕ペナントレース)
音楽:斉藤恒芳
振付:北尾 亘
【キャスト】
渡辺さらさ:志田音々
奈良田 愛:小越春花
杉本紗和:佐々木琴子
星野 薫:新谷姫加
山田彩子:佐々木李子
沢田千夏:中川梨花
沢田千秋:岩田陽菜
野島 聖:青山なぎさ
中山リサ:三田美吹
竹井朋美:小山内花凜
小園 桃:逢田梨香子(スピンオフ出演)
※11月4日(火)スピンオフEP、5日(水)千穐楽レビューのみ出演
小野寺 保:鷲尾 昇
安道 守:佐野瑞樹
大木芳子:初風 緑
アンサンブル:永瀬千裕、馬渕香那
2025年11月1日(土)~5日(水)
会場:三越劇場
【回替わりスピンオフエピソード】
①11月1日(土)12:00 撮影会 編
②11月1日(土)17:00 杉本紗和 × 山田彩子 編
③11月2日(日)12:00 星野 薫 × 沢田千夏 × 沢田千秋 編
④11月2日(日)17:00 野島 聖 × 中山リサ × 竹井朋美 編
⑤11月3日(月)12:00 野島 聖 × 中山リサ × 竹井朋美 編
⑥11月4日(火)13:00 小園 桃 × 奈良田 愛 編
⑦11月4日(火)18:30 小園 桃 × 奈良田 愛 編
⑧11月5日(水)13:00 スペシャルレビューショー
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/kageki-stage/
公式サイト:
https://kageki-stage.com/
(C)斉木久美子・白泉社/「かげきしょうじょ!!」製作委員会
(C)舞台「かげきしょうじょ!!」製作委員会2025
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