『天使のたまご 4Kリマスター』東京国際映画祭上映後トーク開催 押井守監督「よくこんなものが作れたな」
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(左より)押井守監督、兵藤まこ
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すべて見る10月30日に行われた第38回東京国際映画祭上映アニメーション部門での上映後に、原案・脚本・監督を務めた押井守と、少女役の声を務めた兵藤まこが登壇。第38回東京国際映画祭アニメーション部門プログラミングアドバイザーの藤津亮太と共にトークショーを実施した。鑑賞直後の興奮冷めやらぬ様子の観客たちに大きな拍手で迎えられたふたりは、40年ぶりの上映についてや、制作当時の秘話などここでしか聞けないトークに花を咲かせた。
兵藤は「40年の長きにわたりこの作品を守り続けてくださったスタッフの皆さまをはじめ、ファンの皆様に心から御礼申し上げます」と挨拶した。押井は「こんなつもりじゃなかった監督の押井です」という挨拶で笑いを誘い、その理由として「40年前にはこの作品がこんな形で(上映されるとは)夢にも思っていなかった。今のお客様がどう思っているのか半信半疑でここに来ました」と率直な感想を述べた。
40年ぶりに4Kリマスター版を鑑賞した感想を聞かれると、兵藤は「音にすごく驚きました」と圧倒されたという。そして当時を振り返り、「初めてのアニメーションのアテレコのお仕事でした。収録は夜の8時にスタートして終わったのが深夜の2時まで。初めてだったとはいえ、スタッフにも監督にもご迷惑をおかけしました」と収録した日の心境を語った。押井は「よくこんなものが作れたなと思ったし、あの時作れてよかった。今作れと言われてもできない。個人的にもできないし、企画的にも(できない)」と感慨深く振り返った。
自身が演じた少女の役柄について兵藤は「監督に聞いてもあまり理解できなかった。少女にどんな魂を込めたらいいのか分からず、収録に時間がかかってしまった」と苦戦した様子を振り返る。さらに、爆音を轟かせながら向かってくる戦車の音に対して少女が怯えもせず、隠れもしないということに不思議な感覚を覚えたという兵藤は、「少女も戦地の子どもと同じように過酷な環境をくぐり抜けてきたのかと監督に質問したら“違うよ”言われてしまったんです」と事前に押井と話したエピソードを披露した。
続いて、押井に兵藤をキャスティングした理由について聞くと、「オーディションのテープを聞かせてもらってその場で決めました」と押井監督は説明。「実際に会ってみるとあまりにもきれいだったので、想像した方と全然違った。声だけでなく姿も美しく、『天使のたまご』の制作が終わってすぐに“映画の撮影をしませんか”と誘ったんです。ひと言でいうと、ミューズだったんですよ。映画監督にはだいたい自分のミューズがいるんですよ。僕にとって彼女がそうだった」と押井は語る。
また、兵藤は押井監督作品の中で幽霊役やセリフが少ない役など特殊な役が多いことについて、「セリフが少ない役ほど難しいものはないのです。ひと言ですべてを表現しないとならない」と押井にその難しさを強調した。それに対して押井は、「現実にいない誰かを演じてほしかった。あなたは誰かの記憶の中の誰かなんです」と押井は兵藤に対する思いを述べた。本作もセリフが少なく難しい役どころである兵藤は「ここは、雨も降らないし、暖かくて──」というセリフに心を込めたという。
そして、本作のセリフについて押井は「重要なセリフがふたつある。ひとつ目は『あなたはだぁれ?』。このセリフは本当に重要で、何十回もやってもらった」とアフレコを振り返る。それに対し兵藤は「そのセリフにはどんな思いが込められているんですか? その時教えてもらえれば(よかったのに)!」と本音を漏らす。押井は「誰に向かっているのか。もしかしたら自分に(観客に)向かって言っているのかもしれない」とセリフについてのヒントを明かした。
もうひとつの重要なセリフは「最後の悲鳴」と言う押井は、「本当は録るつもりはなかったが、やってもらったらとてもよかった。作品で唯一感情が明らかになるシーンでよかった」と振り返った。このシーンについて兵藤は「泣き叫ぶことって日常でなかなかなくて。とても難しくて最後は本当に泣いてしまったんです。あの嗚咽は本物です」と悲鳴についての誕生秘話を明かした。
最後に兵藤は「心から感謝するばかりです」と観客にメッセージを述べた。押井は「40年前の作品なので、この作品にかかわってくださった多くの方が亡くなってしまった。もしあの方たちが生きていたら、喜んでくれたと思います。再上映が難しい作品だったので、感無量です」と作品に込めた思いを語り、舞台挨拶を締め括った。
<作品情報>
『天使のたまご 4Kリマスター』
11月14日(金)ドルビーシネマ先行公開
11月21日(金)全国順次公開
公式サイト:
https://angelsegg-anime.com/
(C)YOSHITAKA AMANO (C)押井守・天野喜孝・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ
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