高橋一生主演『連続ドラマW 1972 渚の螢火』第3話の撮影現場レポート到着 沢村一樹&青木崇高のコメントも
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『連続ドラマW 1972 渚の螢火』第3話のメイキングシーン
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すべて見る高橋一生が主演を務める『連続ドラマW 1972 渚の螢火』が、現在WOWOWで放送・配信中。このたび、第3話の鍵を握るメインキャストが沖縄に集結した撮影現場に2日間密着したレポートが到着した。
本作は、2021年に『インビジブル』で第23回大藪春彦賞を受賞、第164回直木賞候補にもなり注目を集めた坂上泉の小説をもとにしたクライムサスペンス。1972年、沖縄の本土復帰に伴い、米国施政権下で使用していたドルを円に交換するために現金を輸送していた銀行の車が襲撃され、100万ドルが強奪される事件が発生。この事実が日米両政府に知られれば、重大な外交問題に発展しかねないと危惧した琉球警察は特別捜査班を編成する。この事件を秘密裏に解決すべく奔走する琉球警察の真栄田太一役を高橋、同僚の与那覇清徳役を青木崇高が演じ、沖縄財界に影響力を持つ実業家・川平朝雄役の沢村一樹などがキャストとして名を連ねる。
また、原作者・坂上のインタビュー映像がWOWOWオンデマンドで公開。坂上と制作チームがどのようなやりとりを経てドラマを作り上げていったかをメイキング映像を交えて、そして坂上のお気に入りシーンまで深堀りしている。
※以下撮影現場レポート
取材期間中、主に撮影が進められたのは真栄田たちが追うアシバー(ヤクザ、もしくは今で言う“半グレ”)の宮里武男(嘉島陸)が束ねる「宮里ギャング」のアジトで物語が展開していく一連のシーン。若いギャングたちと川平との関係性を描きつつ、彼らを捜査する真栄田たちが交差する重要なパートだ。
ロケーションは沖縄本島北部にある廃ホテルで、地元では心霊スポットとしても有名な場所。柱しか残っておらず瓦礫だらけのフロアは絵に描いたような廃れ具合で、アウトローたちの隠れ家としては持ってこいの情景だ。
取材初日は、このアジトに複数の車両で乗り入れるシーンの撮影からだった。ちなみに1970年代という時代設定に合わせて、現在はあまり見かけないタイプの車両が用意されており、数台のレトロカーが廃墟付近に並んでいるだけでも非日常感が醸し出されていた。

平山秀幸監督が車両を四方から眺めながらイメージを膨らませ、アジト前に車を駐車する動きや、宮里ギャングの関係者を尾行する琉球警察の3人が車中でやりとりするシーンなど、画作り・演出をしながら車を使った撮影が進んでいく。途中、にわか雨が強まって撮影が一時中断し、天気に振り回される“沖縄の現場あるある”な一幕もあった。
モデルガンを手にした黒ずくめのガスマスク集団がアジトに突入していくシーンの撮影に及ぶと、現場の雰囲気が少しだけフィクショナルな色合いを帯びてきた。「もっとここは動かしてもいいよ」。トラックで乗り付けて強襲する集団を追うカメラに対し、平山監督がアクションの起点や臨場感を際立たせるための画角や動きの荒々しさについて指示を出す。
アジトの建物内に黒ずくめ集団が入っていくシーンはワンカットで撮るため、リハーサルを重ね、本番に近づくにつれて緊張感が増していき、監督の掛け声にも力が入るようになっていた。
そのすぐ傍で、高橋をはじめとする琉球警察のメンバー3人が銃器の取り扱いについてレクチャーを受けながら、車両から降りてアジトに進入していく動線と身体の動きを入念に確認している。ごく短時間のシーンでも、演者同士でそれぞれの身を置く位置や進行方向を微調整しながら臨む。
撮影の合間、青木が無造作に地面の砂利を握りしめて拾い上げ、手首に擦り付けて埃っぽい質感を演出しており、細かなところまでリアリティを追求している姿勢が垣間見られた。
宮里ギャングアジトの内部では、若いアシバーたちと沢村一樹演じる川平朝雄とのやりとりが撮影された。ここでは、沖縄の祭事で使われる天国のお金・ウチカビを燃やしたり、酒を酌み交わしながらカチャーシー(宴などで披露される沖縄の踊り)を踊ったりと、沖縄濃度高めの演出。カチャーシーを踊る場面では、待ち時間の間に沖縄出身の演者はもちろん、同じく沖縄出身のプロデューサーや方言指導のスタッフも混じりながらレクチャーが行われ、さらには沖縄出身キャストの宮里ギャングのメンバー・稲峰(佐久本宝)が三線の弾き語りも披露。現場は沖縄の宴会場さながらの雰囲気に。無邪気さやあどけなさも感じさせる若いアシバーたちの楽しげな舞いは、この後のストーリー展開からすれば途方もなく儚いものに感じざるを得ず、この時点で既にグッと胸が締め付けられた。

実業家・川平について「自分の目的のためには冷徹なところがある男なんだろうな、という感覚で演じています」と沢村。アシバーたちと付き合いながらも、彼らを自らの“足”として使役する川平の割り切った態度にキャラクターの核を見出したという。沖縄という舞台、そして沖縄での撮影については次のように語った。
「この作品と出会わなかったら、きっと誰かが解決してくれるだろうと他人事として捉えていた問題も、本当は自分に引き付けて考えていかないといけない、そんなふうに身近なものとして感じられていなかったと思います。撮影期間にはそれを実感する出来事が何度もありました。その意味でも、すごく良いタイミングでこの作品が作られているのではないかと思います」
取材期間中、現場が最も緊迫した撮影はアジトの襲撃シーンだった。たくさんの人物とそれぞれの思惑が交錯する本作の核を体現したようなこの場面は、アクション動作や各出演者の動線が複雑に絡み合い、カメラ無しの状態でも既に撮影が困難ということが傍目からもうかがえる。加えてスモークや手榴弾、銃器の発砲など、火薬を使用した物理的な演出もあり、演者・製作陣ともに緊張感のフェーズが一段階上がった。
アジトは瓦礫だらけで足場も悪い上、移動する通路も狭い中で演者たちがカメラと一緒に動き回る。そのため、主に高橋・青木が互いの細かな動作の確認を重ねつつ、監督とも頻繁にやりとりを行っていた。その中で、ストーリーの進行やそれぞれの人物の動作、爆発に伴う演出のあり方など、空間の使い方やビジュアルと時系列の整合性について、かなりシビアな議論が交わされ、撮影が一時中断する時間もあった。
主人公・真栄田のライバル的存在の刑事・与那覇清徳に扮する青木崇高は「さまざまなキャラクターの沖縄に対する思いが、いろんな形で出てくると思うのですが、そこで与那覇なりの沖縄への思いがちゃんと出ればいいかなって思っています」と、役に向き合う姿勢を語る。沖縄への思い、ひいてはこの作品へかける思いについてこう語った。
「本作のテーマは、沖縄だけでなく日本全体、世界が抱えている問題で、それは1972年から変わらず今も続いているわけです。僕自身の関わりとしてひとつの役を演じるということですが、この作品自体が今後何かの課題解決へのひとつのきっかけになったらうれしいなと思っています。沖縄の地の匂いというか、それがちゃんと匂い立つような作品と映像にするために、なるべくその雰囲気を作り上げていきたい。沖縄はとても好きですし、友人もたくさんいて昔からよく来ていますから。愛すべき沖縄の風を身にまとったキャラクターとしてありたいと思っています」
青木の言葉にあるとおり、沖縄が抱えている問題は沖縄だけで済むものではなく、日本全体が抱えるものでもあり、戦後ずっと在り続けている問題でもある。とはいえ、本作はあくまでフィクションであり、手に汗握るサスペンス要素も盛り込まれたエンタメ作品に仕上がっている。画面から沖縄の“匂い”を感じ取り、ドラマのストーリーや出演者たちの熱演を十分に楽しみながら、その延長線上で沖縄ひいては日本が直面し続けているものが何なのか、少しでも思いを馳せてみてほしい。
取材・文:真栄城潤一(撮影現場レポート)
『連続ドラマW 1972 渚の螢火』坂上泉インタビュー映像(一部)
<作品情報>
『連続ドラマW 1972 渚の螢火』
毎週日曜22:00よりWOWOWで放送・配信中
公式サイト:
https://www.wowow.co.jp/drama/original/1972nagisanokeika/
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