花總まり×森公美子、初共演で紡ぐ“友情と再生”の物語。ミュージカル『バグダッド・カフェ』日本初演が開幕
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                            ミュージカル『バグダッド・カフェ』より、右から)花總まり、森公美子
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すべて見るミニシアターブームをけん引し、今なお多くのファンから愛されている名作映画『バグダッド・カフェ』。そのミュージカル版の日本初演が11月2日(日)、東京・シアタークリエにてついに開幕した。そこで初日前日に行われた、公開ゲネプロの模様をレポートする。


アメリカ西部の砂漠にある、ダイナー兼ガソリンスタンド兼モーテル“バグダッド・カフェ”。オーナーのブレンダ(森公美子)は常に不機嫌だが、甲斐性のない夫に、聞きたくもないピアノを鳴らし続ける息子に、そして壊れたコーヒーメーカーにと、イライラの種は増えるばかりだ。そこにジャスミン・ムンシュテットナー(花總まり)と名乗るひとりの女性が現れる。ドイツ・ローゼンハイムからの旅行者だと言う彼女。砂漠の真ん中に、車もなく突如姿を見せたこの異邦人によって、ブレンダのイライラの種はさらに増えていき……。


共にミュージカル界を代表する俳優であるにも関わらず、本作が意外にも初共演となる花總と森。特に歌唱力の高さで知られるふたりであるだけに、そのハーモニーの美しさが全編を通してやはり印象に残る。



しかも『バグダッド・カフェ』には、映画を知らずともこのメロディだけは知っている人も多いであろう、とっておきの名曲「コーリング・ユー」がある。作品世界を形作る重要な一曲であり、ふたりの友情を表現する上でも欠かせない一曲。演出の小山ゆうなは、「一幕と二幕で二度歌われるのですが、ジャスミンとブレンダの関係がそこでどう変化しているのか。注目していただけたら嬉しいです」と語る。

さらに小山はふたりの役回りとその魅力についても言及。「力強く、前向きなパワー溢れるブレンダはまさに森さんにしか出来ないと思いますし、その魅力で周りをどんどん変えていくジャスミンは、花總さんそのものだと思います」と絶賛する。

森の力強さが大いに発揮されるのが、ブレンダのソロナンバー。R&Bからブルース、ラップまで、彼女の心の叫びを熱く、ボリュームたっぷりに歌い上げる。そして花總のキュートさが光るのがマジックシーン。夫の置き土産(?)であるマジックグッズが、気落ちしたジャスミンに笑顔を取り戻させ、さらにその笑顔の輪はカフェの人々にも広がっていくことになる。

ジャスミンとブレンダの友情を主軸にした物語だが、ジャスミンと個性豊かな登場人物たちとの交流も、この作品をより温かなものにしている大切な要素だ。ブレンダの娘フィリスとはファッションで、ブレンダの息子サル・ジュニアとは音楽で、そして画家のルディ・コックスとは芸術で互いの距離を縮めていてく。相手が好きなものに寄り添い、そこから心を通わせる。ジャスミンの優しく温かな人柄がよく伝わるシーンだ。

その中でぜひ注目してもらいたいのは、フィリス役の清水美依紗。映画『ウィキッド ふたりの魔女』でアリアナ・グランデ演じるグリンダ役の日本語吹き替えを担当したことでも注目を集めた清水だが、若さと自由を謳歌する女の子のキラキラとした姿がまぶしく、その存在に終始目を奪われた。

さらに脇をしっかりと固めるのが、ルディ役の小西遼生のほか、芋洗坂係長や岸祐二、坂元健児らミュージカル常連の実力派。


また2.5次元作品を中心に幅広い活躍を見せる松田凌が、軽やかで、それでいて味わい深いカフェの店員アブドゥラー役を好演している。

公開ゲネプロの直前に行われた囲み会見でも、非常に息の合ったところを見せていた花總と森。ふたりのこの空気感が、劇中のジャスミンとブレンダの友情へと昇華していることは間違いなさそうだ。最後にふたりから、こんなメッセージが寄せられた。「コメディであり、シリアスであり、いろいろ考えさせられる作品だと思います。ただ本当に楽しいミュージカルであることは間違いないので、ぜひ劇場に足を運んでいただけると嬉しいです」(森)。「『友だち』という曲が何度もリプライズで登場してくるくらい、人と人との絆、友達っていいなと感じていただけるような、本当に素敵な、心がハッピーになる作品だと思います。マジックも盛大にありますので、そちらもぜひお楽しみに!」(花總)。

取材・文:野上瑠美子
<公演情報>
ミュージカル『バグダッド・カフェ』
脚本:パーシー・アドロン/エレオノーレ・アドロン
音楽:ボブ・テルソン
歌詞:リー・ブルーワー/パーシー・アドロン/ボブ・テルソン
演出:小山ゆうな
翻訳・訳詞:高橋知伽江
音楽監督:荻野清子
出演:
花總まり 森公美子
小西遼生 清水美依紗 松田凌 芋洗坂係長 岸祐二 坂元健児 太田緑ロランス 越永健太郎 ほか
【東京公演】
2025年11月2日(日)~23日(日・祝)
会場:シアタークリエ
【愛知公演】
2025年11月28日(金)~30日(日)
会場:Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
【大阪公演】
2025年12月4日(木)~7日(日)
会場:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
【富山公演】
2025年12月13日(土)・14日(日)
会場:富山県民会館
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/bagdadcafe/
公式サイト:
https://www.tohostage.com/bagdad-cafe/
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