佐野晶哉&柿澤勇人が“トリツカレ”るくらい好きなもの「心が救われましたと伝えたい」
映画
インタビュー
左から)柿澤勇人、佐野晶哉(Aぇ! group) (撮影/梁瀬玉実)
続きを読むフォトギャラリー(9件)
すべて見る切なくて、眩しい、混じり気のないラブストーリーが誕生した。
11月7日(金)公開の映画『トリツカレ男』。作家・いしいしんじの同名小説をアニメーション映画化した、ミュージカル仕立てのラブストーリーだ。
作中では何かに夢中になると他のことが目に入らなくなってしまう“トリツカレ男”のジュゼッペと、その相棒となるハツカネズミのシエロの心の交流が繊細に描かれている。
ジュゼッペを演じた佐野晶哉(Aぇ! group)と、シエロを演じた柿澤勇人に、これまでの人生において“トリツカレ”たことについて聞くと、それぞれの“トリツカレ”るほど好きなことに対する価値観が見えてきた。
佐野「誰もが楽しめる温かい作品」

――完成作を見ての感想と、本作の魅力は?
佐野 老若男女問わず、誰もが楽しめる温かい作品やなと思いました。作風やストーリーにおいてもなかなかないような唯一無二の魅力があるなと。
柿澤 実はアフレコをした時はまだ映画のイラストが完成されていなかったんです。完成作を見た時に、こんなにも豊かな表現になるんだととても感動しました。
――タイトルも印象的ですよね。
佐野 タイトルだけ聞くと若干の怖さを想像してしまう人もいるのかもしれませんが、キャラクターも作品もとてもかわいらしいです。そのかわいげの中に“トリツカレ”たという表現がしっくりと合うジュゼッペのペチカに対する好きが表されているなと感じました。こんなふうに“トリツカレ”るくらい好きになれるって才能やし、こういう人でありたいなって思いました。
柿澤 観終わった後、温かい気持ちになる映画だなと思いました。誰かのことを救おうと奮闘する、奔走する姿が素敵だなって。
それから、ジュゼッペはもちろんですけど、ペチカ、シエロ、すべてのキャラクターがそれぞれ誰かに対して向けているまっすぐなベクトルが混じり気なく、すごくクリア。原作と台本のメッセージをそのまま表現したいなと思いました。


一緒にアフレコすることで「一気に物語に説得力が出た」

――ディレクションされる中で、印象的だったことはありますか?
佐野 歌唱の収録時にスタッフさんから「いいね!」「今のよかったよ!」って言われて拍手されたときがあって、僕自身もすごく手応えがあったんです。でも、監督だけが「今のはジュゼッペじゃないね」って言って、何度か歌入れをやり直したことがありました。歌唱シーンを録ったのがアフレコ前やったんで、余計に難しかったですね。「もっとキラキラして」とか「もっと頭の中を旅するような」と広く指示をいただくことが多くて、監督には言えないですけど、それをなかなか掴むのが難しくて(笑)。でも、そこを探って、正解を自分の中で出していく感じの作業がめっちゃ楽しかったです。
柿澤 僕が演じたシエロはハツカネズミという少し変わった役だったので「チューチュー」のバリエーションが50個くらいありました。「今のは2ぐらいだから、今度は5ぐらいで!」とか言われる感じが、とても不思議でしたね(笑)。誰も「チューチュー」の正解なんてわかりませんもん。
――作中でのジュゼッペとシエロはバディのような関係性ですが、一緒にアフレコした日もあったのでしょうか?
佐野 1日だけありましたね。
――一緒に演じられてみてどうでしたか?
佐野 2人でいるときの男同士の悪だくみ感は、特にテンポが大事になってくるお芝居だと思ったので、一緒にできてよかったです。というのも、実は仮アフレコで入っていたシエロの声が女性の声で。そのあとで、柿澤さんと2人でやらせてもらったから、一気に物語に説得力が出た感じがしたんです。シエロは視聴者に一番近い存在でストーリーテラーのような存在だなと納得しました。
柿澤 僕は役者をやってきてずっと、誰かと一緒にやること、誰かのセリフに対してセリフを言うことが基本だったから、やっぱり2人のシーンは2人でやったほうが生き生きするなと思いました。僕自身、アニメーション映画のアフレコが初めてだったこともあり、全然一人でやっていた時とはやりやすさが違って。「ここも一緒にやろうか」というシーンがどんどん増えていきました。
柿澤「カラオケの番組に出ているところを見て…」

――お互い共演する前の印象を教えてください。
佐野 実は僕が今の事務所に入るきっかけをくれたお兄ちゃんの友だちと、柿澤さんが同じ事務所だったので、よくその人から「かっきー」の話は聞いていました。小さい頃から舞台を見させていただいたりもしていたので、一方的に大きな存在だと思っています。
柿澤 期間は短いんですけど、2人とも劇団四季のライオンキングでシンバを経験したことがあるという意味では、間接的に同じ作品をやっていたという、ご縁があるなと思っていました。なので全く知らない者同士っていう感じではないなと思っていましたね。
――そこから印象は、どう変化していきましたか?
佐野 実は今日で会うのが3回目なので…まだ第一印象とそんなに変わっていないですね。
柿澤 (ペチカ役の上白石)萌歌さんのライブも一緒に観たけど、ライブ中はしゃべらないしね(笑)。でも、僕は佐野くんがカラオケの番組に出ているところを見ていて…。
佐野 え!嬉しすぎる!
柿澤 めちゃくちゃ歌が上手いなと思いました。あの番組に出る勇気も、あの緊張感の中で歌いこなせるのもすごいし。それに、最近のJ-POPは僕なんか全くキーが出ないぐらい高くなっているので、それを軽くやってのけちゃう才能が…。
佐野 嬉しいです!
柿澤 今回のジュゼッペも“トリツカレ”て周りが見えなくなっちゃうピュアさと、若さと勢いという意味でぴったりハマっているなと思いました。
2人が“トリツカレ”るくらい好きなものは?

――ちなみにおふたりには“トリツカレ”るくらい好きなものはありますか?
佐野 僕は石崎ひゅーいさんが大好きです。中学生くらいのときに、近くのショッピングモールにひゅーいさんがいらっしゃって。お母さんが好きだったので、付き添いで行ったんですよ。そこで歌を聞いて本当に“トリツカレ”るようにハマりました。1日中ひゅーいさんの楽曲ばかり聴いていましたし、そのことがきっかけでギターを始めました。もともと小さい頃はミュージカルをやっていたこともあって、基本ミュージカルの曲しか聴いていなかったのですが、ひゅーいさんにハマって、音楽の幅が広がりました。
柿澤 それでいうと、僕はX JAPANですね。幼少期ピアノをやっていたのですが、クラシックじゃないものも演奏してみたいと思って、本屋の楽譜コーナーでたまたま買ったのがX JAPANの楽譜でした。そこからX JAPANばかり弾いて、かなりのめり込んでいきましたね。

――佐野さんは先日放送された番組で石崎さんとコラボされていましたが、どういうお気持ちだったのでしょう?
佐野 夢が叶ってめっちゃ嬉しかったです!近づきたくて、すぐ連絡先を聞きました。
柿澤 すごいね!僕、昔、番組でToshiさんと共演したことがあったのですが、もうね、リアルに震えてしまって。もちろん嬉しいんだけど、恐れ多いという気持ちが大きかったので、僕は憧れの人とコラボするなんてできないんだろうな。会ったとしても「心が救われました」っていう言葉を伝えるのだけで精一杯な気がする。
佐野 なんか気軽に連絡先交換しちゃったのが恥ずかしくなってきました(笑)。
――最後に、改めて映画『トリツカレ男』が気になっている方に作品の魅力解説をお願いします。
佐野 全員がこの作品に“トリツカレ”るくらい魅力のある作品だと思うので、いろんな人に届いてほしいです。それに、いろんなことを好きになったり、好きになったものを発信するのがなかなか難しい時代だと思うので、こういうときだからこそ、いろんなことに夢中になれるきっかけの1つになれたらなと思っています。
柿澤 劇中のキャラクターはみんながみんな、誰かのことを思って、愛を持っていて。監督の言葉を借りると「こういう人たちで世界が作られたら、きっとみんな幸せになるんだろうな」と感じるような愛のある温かい作品だなと思っています。ストーリーと音楽もハマって、その世界観の素晴らしさが伝わる魅力的な作品になっていると思います。ぜひとも皆さんに観ていただきたいです。
撮影/梁瀬玉実、取材・文/於ありさ
【佐野さんスタッフ・衣装クレジット】
ヘアメイク/髙取篤史(SPEC)
スタイリスト/横田勝広(YKP)
【衣装クレジット】
ETRO JAPAN
【問い合わせ先番号】
・エトロ ジャパン
〒107-0062
東京都港区南青山5-11-5
tel:03-3406-2655
【柿澤さんスタッフクレジット】
ヘアメイク/松田 蓉子
スタイリスト/五十嵐 堂寿
<作品情報>
『トリツカレ男』
11月7日(金)全国公開

【ストーリー】
ひとたび何かに夢中になると、ほかのことが目に入らなくなってしまうジュゼッペは、街のみんなから“トリツカレ男”と呼ばれている。三段跳び、探偵、歌……ジュゼッペがとりつかれるものは誰も予想ができないものばかりだ。行き場のないネズミのシエロに話しかけるうちにネズミ語をマスターしたジュゼッペ。昆虫採集に夢中になっていると、公園で風船売りをしているペチカに一目惚れ。今度はペチカに夢中になった。勇気を出してペチカに話しかけたジュゼッペだったが、ペチカの心には悲しみがあった。大好きなペチカのため、相棒のシエロとともに、彼女が抱える心配事を、これまでとりつかれた数々の技を使ってこっそり解決していく。
ジュゼッペの夢中が、奇跡となってあなたに届く──
【キャスト】
ジュゼッペ:佐野晶哉(Aぇ! group) ペチカ:上白石萌歌 シエロ:柿澤勇人
ツイスト親分:山本高広 サルサ親分:川田紳司 ペチカの母:水樹奈々 タタン:森川智之
【スタッフ】
原作:いしいしんじ『トリツカレ男』(新潮文庫刊)
監督:髙橋 渉
脚本:三浦直之
キャラクターデザイン:荒川眞嗣
レイアウト:三原三千夫
美術監督:秋山健太郎
色彩設計:広瀬いづみ
撮影監督:関谷能弘
編集:中葉由美子
音響監督:山田 陽
音響効果:野崎博樹 小林亜依里
音楽:atagi(Awesome City Club)
劇伴:波立裕矢 未知瑠
音楽プロデューサー:北原京子
主題歌:Awesome City Club 「ファンファーレ」
アニメーション制作:シンエイ動画
製作:2025映画「トリツカレ男」製作委員会
配給:バンダイナムコフィルムワークス
公式サイト:
https://toritsukareotoko-movie.com/
公式X:
https://x.com/toritsukare_mv/
公式Instagram:
https://www.instagram.com/toritsukare_mv/
公式TikTok:
https://www.tiktok.com/@toritsukare_mv
【原作情報】
原作:いしいしんじ『トリツカレ男』(新潮文庫刊)
【著者プロフィール】
1966年、大阪生まれ。京都大学文学部仏文学科卒。2000年、初の長篇小説『ぶらんこ乗り』刊行。2003年『麦ふみクーツェ』で坪田譲治文学賞、2012年『ある一日』で織田作之助賞、2016年『悪声』で河合隼雄物語賞を受賞。『トリツカレ男』は2001年刊行、2006年新潮文庫に。現在京都在住。
フォトギャラリー(9件)
すべて見る
