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中村壱太郎が「ART歌舞伎2025」の魅力をアピール。配信にも注力し「千穐楽は来年1月15日」

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「ART歌舞伎2025~DEEP FOREST~」ビジュアル

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歌舞伎俳優の中村壱太郎が手がける「ART歌舞伎2025~DEEP FOREST~」が、2025年11月8日(土)に東京・観世能楽堂で上演される。コロナ禍の2020年7月、世界中の劇場がクローズした中で企画した配信のみの公演「ART歌舞伎 花のこゝろ」は、その後映画館や海外の映画祭での上映、「ART歌舞伎Music live」の配信とさまざまな展開を見せてきたが、今回、初の劇場公演が実現。1日2公演のうちの19時公演の生配信と、両公演のアーカイブ配信もPIA LIVE STREAMにて実施する。10月29日に実施された取材会に登場した壱太郎が、熱を込めて、「ART歌舞伎」にかける思いを語った。

独創的な全5演目を上演。眼目は『ART道成寺』

「今回の副題は“DEEP FOREST”。観世能楽堂の舞台全体を森に見立てて公演を行います」と語る壱太郎。スーパーアドバイザーに湘南乃風の若旦那を迎えての『ART歌舞伎』、5年ぶりの大舞台で上演する演目には、壱太郎の舞台への情熱がたっぷりと詰め込まれている。

最初の演目は、『幻想ポリネシアン』。「日本古来のものを感じさせつつ、東洋、また地球の緑を感じてもらえるような幕開きに。お客さまには必ず、開演15分前には会場に来ていただきたい。来てのお楽しみですが、テーマパークのように、並んでいるうちからもうアトラクションが始まっているような雰囲気で楽しんでいただき、だんだんと、皆さんを森の深いところへと誘います」と紹介する壱太郎。

「ART歌舞伎2025~DEEP FOREST~」ビジュアル

続く『神前式』は配信公演で取り組んだ演目だが、「我々はなぜ踊るのか、なぜ芸能をやるのかと考えると、やはり古来に戻って、神に捧げるということ。たとえば『三番叟』の種蒔や翁、千歳をモチーフに、ART歌舞伎ならではの扮装で、神様に捧げ、五穀豊穣を祈ります」。

3演目の『四神降臨』も2020年に配信された演目だが、今回は新たなキャストでの上演に。「私が青龍、花柳源九郎さんが朱雀、今回初参加の花柳梨道さん、藤間礼多さんという日本舞踊界の新進気鋭のおふたりに、16時半、19時の回それぞれで白虎を、そして玄武はスペシャルゲスト。当日の舞台に出てくるまでわからない誰かが、各回に登場します」。劇場公演のチラシにはスペシャルゲストのシルエットが掲載されたが、「あれは当てになりません」とニヤリ。ヒントは、なし。あくまでシークレットを貫く姿勢だ。

また『フォレスト・コンサート』では、2020年の配信公演以来、ともに「ART歌舞伎」の可能性を探ってきたART歌舞伎楽団の4人による演奏を披露。「皆、私が全く関わっていない歌舞伎公演にもなぜか、出演しています。歌舞伎が惹きつける力はすごい。たとえば中井智弥さん(二十五弦箏)と藤舎推峰さん(笛)は今年も話題の新作歌舞伎『刀剣乱舞』に、山部泰嗣さん(太鼓)は市川團十郎のお兄さんの『SANEMORI』に出演、浅野祥さん(津軽三味線)とはフラメンコ×歌舞伎の公演でスペインに行きました。それぞれの縁で歌舞伎と繋がっているメンバーの、新たな表現をお届けします」。

最後の演目は、眼目の『ART道成寺』。この日会場に掲げられた写真のうちの2点を指し、「まさに先日、都内某所で日の出前から撮影しました。何が楽しいのか、朝3時から(ヘアメイクアップ・アーティストの)冨沢ノボルさんにメイクをしていただき、(スタイリストの)里山拓斗さんの衣裳を着て撮り下ろしたビジュアルです。古典の『道成寺』とARTを掛け合わせてどう表現するのか、ぜひ想像してください。奇しくも1月には『京鹿子娘道成寺』(大阪松竹座)を勤めますが、その原点は、能。今回能楽堂で『道成寺』をやるからには、能楽の方のお力を借りたいと、私と同い年の能楽師狂言方、野村太一郎くんに出演していただきます。『道成寺』のアイとワキ方、両方の役回りをお願いしていますが、とてつもない格好で登場します」と期待感を煽る。

取材会にて、配信終了の2026年1月15日が千穐楽だとアピールする中村壱太郎

歌舞伎舞踊の最高峰のひとつ『道成寺』。安珍・清姫伝説を題材とした古典だが、“DEEP FOREST”の中ではきっと、ART歌舞伎でしか成し得ない、独創的でクリエイティビティにあふれた『道成寺』が誕生するのだろう。

「道成寺の鐘は落ちてそのまま、いまだに建立されず、年月が経ち、寺は廃墟になって森に。住職は森の中の主になり、そこに『まだ来るか!?』と清姫が来るというストーリーです。森の主は阿吽という設定で、森の主の阿を源九郎さん、森の主の吽を太一郎くん、また番人として花柳梨道さん、藤間礼多さんにも出演していただきます」

歌舞伎の世界を舞台とし、空前のヒットとなった映画『国宝』でも、吉沢亮と横浜流星が演じる華やかな『二人道成寺』が、多くの人のため息を誘った。壱太郎は日本舞踊吾妻流家元、吾妻徳陽の名で所作指導を手がけたが、たとえばふたりの白拍子花子が向き合ってせり上がる、その大胆なアレンジ、見せ方も話題に。「どのような踊りをどういう切り口で、というところから関わらせていただきました。『曽根崎心中』のお初もですね」。主演の吉沢亮については、センスが抜群、表情が豊かと賞賛。自身も3月に京都・南座でお初を演じるが、「やはり、改めて奥深いなと思わされました。ここで受けた刺激を活かせるかどうか、僕も楽しみです」。

どれだけのワクワク感をお届けできるかという勝負

ART歌舞伎の定義について、記者から質問が寄せられると、「最先端のアートを取り込むということよりも、歌舞伎を“かぶく”という精神、どれだけ美しく、格好よく、驚かせてみせることができるのかということが、我々ART歌舞伎のチームが表現したいこと」。歌舞伎俳優として多忙を極める中でもあえて、自らこうした公演にチャレンジする理由については、「自分でも『ちょっと大丈夫かな?』と思いますが、歌舞伎の本公演に影響が出るのは本末転倒。でも忙しければ忙しいほど、アドレナリンが出る。皆が力を貸してくれて、普段やらないことをやるのは自分の楽しみでもあり、大変でもあり」と表現者としての充実ぶりをうかがわせた。

「ART歌舞伎2025~DEEP FOREST~」ビジュアル

今回の公演のチケットは早々に完売したが、劇場公演のライブ配信および長期にわたるアーカイブ配信は新たな挑戦、より多くの人に「ART歌舞伎」を届けようと、意欲を見せる。コロナ禍での最初の配信は、劇場公演ができない中での無観客での収録だったため、9台のカメラを用いての撮影ができた。有観客の今回は、4台が限界。その制限の中でカメラワークを駆使し、ART歌舞伎としての価値を追求する。

「舞台作品の配信が増えてきたいま、なぜ強気にアーカイブ配信の料金を7,000円にしているかは、それなりのものを提供できるチームだと信じているから。メイキング映像などを含め、どれだけのワクワク感を皆さんにお届けできるかというところで勝負を仕掛けたい。メイキングは、今回はより密度が濃くなるよう、公演のギリギリ事前稽古から本番までを追ったドキュメンタリーにしました」

アーカイブの配信期間は約2カ月間。「私も経験上そうなのですが、長くやると逆にいつでも見られると思って、皆買わなくなっちゃう。なので、見たらすぐ買ってください!! そのために、配信用のチラシの裏面は、全部購入方法の説明に。よく“ネットはよくわからなくて買えない”という方がいらっしゃいますが、これ見たら絶対に買えます。そのために、配信はぴあだけにしました(笑)。だから、すぐ買ってください。1月には私も『道成寺』をやっていますが、『ART道成寺』を見たら鐘の中からコレが出てくるかもしれないですから!」と、自身の扮装写真をアピール。「そういうワクワクを持ちながらの2カ月、2026年1月15日が千穐楽だと思ってやっていければ」。

「ART歌舞伎2025~DEEP FOREST~」ビジュアル

また、ART歌舞伎のこれまでの軌跡をまとめた「ARTBOOK」にも力を入れている。今回の公演にあわせて制作したが、「これは、“公演のためのプログラム”にしたくないんです。日本語だけでなく英語も入れ、ふと手に取った外国の方も見てもらえるようにしました。インタビューもしっかり取ったり、スタッフ陣も映し出したりもしています」と語る壱太郎がチラリと見せたのは、そのARTBOOKの校正刷り。「まだ変わるかもしれないから、お見せできません」と引っ込めるが、書店のアート本の棚に置かれていても違和感のない本を目指したという。

縁と縁が繋がり、今回の劇場公演に繋がったと壱太郎は語る。展示された写真を眺めながら思い出すのは、2020年の配信公演。東京・靖国神社の能舞台、激しい雨の中での撮影のことだ。

「何か呼んでしまうんですよ。私が踊ると最悪なコンディションになる。それでも誰もストップと言わなかった。あのときの収録は、各演目、一度も止めずに撮ったんです。そういう心意気、そのとき起こったことすべてを味方につける、悪いことも良いことと考えるのがART歌舞伎」というが、同年12月に京都・泉涌寺での「ART歌舞伎 Music Live 2020 in Kyoto」の撮影は、マイナス2、3度という状況で行われた。「冬の京都をちょっと軽く見ていました」とその厳しさを振り返る。翌2021年3月公開のパナソニックによる8K映像作品「ART歌舞伎-自らの存在価値を求めて-」の山梨・身曾岐神社での撮影でも、氷点下を経験。「今回はやっと室内。予想通りの公演ができるんじゃないかと思います」。

11月には東京・銀座 蔦屋書店でのフェア、また12月から1月にかけては京都・京都 蔦屋書店でのフェアを実施、ARTBOOKやグッズの販売も行う。「(配信終了の)1月15日まで、その都度その都度、いろんな波を作っていきたいと」と意気込みを見せた。

取材・文:加藤智子


<公演情報>
「ART歌舞伎2025~DEEP FOREST~」

上演演目:
『幻想ポリネシアン』『神前式』『四神降臨』『フォレストコンサート』『ART道成寺』

出演:
ART歌舞伎楽団
[箏・二十五弦箏]中井智弥
[津軽三味線]浅野祥
[笛]藤舎推峰
[太鼓]山部泰嗣

[歌舞伎俳優]中村壱太郎
[日本舞踊家]花柳源九郎 花柳梨道 藤間礼多
[能楽師狂言方]野村太一郎
※各回にスペシャルゲストを予定(当日の舞台までシークレット)

2025年11月8日(土) 16:30 / 19:00
会場:東京・観世能楽堂

【生配信】
「ART歌舞伎2025~DEEP FOREST~」2025年11月8日(土) 19:00公演
配信チケット販売中~11月14日(金) 21:00まで
配信期間:2025年11月8日(土) 19:00~11月14日(金) 23:59

【アーカイブ配信】
「ART歌舞伎2025~DEEP FOREST~」16:30 / 19:00の両公演+特典映像
配信チケット販売中~2026年1月15日(木) 21:00
配信期間:2025年11月15日(土)~2026年1月15日(木) 23:59

配信チケット情報:
https://w.pia.jp/t/artkabuki/

公式サイト:
https://artkabuki.com

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