「クリスマスミュージカル『クリスマス・キャロル』~National Tour 2025~、心に響くクリスマスの物語」稽古場レポート
ステージ
ニュース
(左から)吉田要士、吉田栄作、土屋アンナ
続きを読むフォトギャラリー(7件)
すべて見るクリスマスイブの夜、ロンドンで守銭奴として知られているスクルージの前に、かつて共に働いていたマーレイの亡霊が現れた。彼に導かれ時間旅行をすることになったスクルージは、自分の過去・現在・未来を目の当たりにする……。チャールズ・ディケンズ『クリスマス・キャロル』をミュージカル化した本作は、吉田栄作が3年ぶり2度目のスクルージ役に挑んでいる。吉田と3人の女性の演じ分けに挑んでいる土屋アンナ、そしてマーレイ役であり本作の歌唱指導でもある吉田要士、3名の囲み取材と公開稽古の模様をお伝えしよう。

上手奥に階段を数段上がる高さのステージがあり(稽古場に設置されている仮セット)、バルコニーのようになっている。そこにいるのは、イザベラ(土屋アンナ)と青年スクルージ(柿内アリマ)。下手側には、過去のクリスマスの精霊(植松恵理)に伴われたスクルージ(吉田栄作)。楽曲「かけがえのない愛」の場面だ。自分がイザベラにプロポーズした時の光景を目の当たりにするスクルージの切ない表情が印象的。植松、柿内、土屋と順に歌い継ぎ、また菅原聡史と堂園愛子のダンスが場をより華やかにしている。そして土屋もバルコニーからステージ前方へ歌いながら移動し吉田の手を取る。一瞬ふれあうと離れ、ステージ中央で今度は柿内の手を取り、またバルコニーへと戻っていく。そして気づけば、吉田と柿内のスクルージふたりが少し離れて立ちながらも、その動き・体勢はシンクロしている。過去と現在が交錯する、ロマンティックかつ切ない1シーンだった。

稽古場で次に披露されたのは、楽曲「それぞれの世界へ」のシーン。時間旅行を終え現在のロンドンに戻ってきたスクルージと、マーレイ(吉田要士)、過去のクリスマスの精霊、現在のクリスマスの精霊(真樹めぐみ)、未来のクリスマスの精霊(市川由希)の別れの場面だ。「生きているって素晴らしい」と心底感じ入ったスクルージだけに、吉田の表情にも声にも力がみなぎっている。吉田要士の歌声が高らかに響き、精霊たちの声も加わって会場全体を包み込むかのようだ。

そして場面は楽曲「カーテンコール2」へ。クリスマスソングメドレーもあり、アンサンブルはもちろん、マーレイや青年スクルージ、精霊たちが歌とダンスでラストをにぎやかに盛り上げる。だがもちろん要所で存在感を示すのは吉田と土屋。彼らもセンターで歌声を響かせ、幸福感に満ちた締めくくりとなっていた。

公開稽古の後、吉田栄作、土屋アンナ、吉田要士の囲み取材が行われた。3年ぶりにこの作品に臨み、吉田栄作は「再演で難しいのは新鮮さを保つこと。その新鮮さとは、進化ということではないか」と感じながら毎日稽古を重ねていると語る。
一方、イザベラ、イライザ、イボンヌの三役を演じる土屋は、「おっとりした、品のある女性役には『どうしよう』と思いましたが(笑)、人間っていろいろな引き出しがある。自分の中に存在する何かで表現したい」とし、ワクワクしながら演じているという。そして「どんどんいろいろな役に挑戦したいと思わせてくれるチームなので、こういう作品に携われて幸せです」と笑顔を見せた。
吉田要士は「おふたりとの共演は毎日楽しくて、自分のSNSにも『毎日稽古場に行くのが楽しすぎる』って書いたくらい」と話し、歌唱指導として「栄作さんは一日目から完璧。芝居のセリフからつながっていくミュージカルの歌にいろいろな形で挑戦し、ものにされている。アンナさんも、クラシック寄りの曲を見事に表現されている」と、ふたりを絶賛した。

自身のクリスマスの思い出や、今年のクリスマスはどう過ごすかなどの話題も出るなか、「演じている役と自身との共通点」という質問に吉田栄作は「誰しも、あの時の自分には戻りたくないとか、あの時のあの人には謝りたいとかいうことってある」と、“誰しも心の中にもっているスクルージ”を語る。そして「お子さまたちはもちろん、大人たちも自分の中のスクルージに気づき、『もう少し世のためになる自分になろう』とか思いながら劇場を後にすると思います。僕はそれを、役を通して燃やして、毎日とにかく一生懸命演じたい」と、作品への思いを表現した。
土屋は、イライザの「貧しさに困っている人を助けずお金だけ貯めることは、本当にいいことなのか」というセリフに一番共感しているそう。そして「本当に感情を揺さぶられる作品。大人はもちろん感動するし、子どもたちもスクルージさんの心の変化などから学ぶことがたくさんあるはず。そんな思いを多くの人にお届けしたい」と気合十分。
そして、吉田要士によると、マーレイは「スクルージに『人生を少しでも人のために尽くして生きろ』と言うことを使命として存在している役」。そのメッセージは自身の母校の校訓「人になれ 奉仕せよ」そのものであり、「この作品は最高に幸せな気持ちになれるので、それを皆さんと分かち合いたい」と結んだ。
11月16日(日)、東京・福生市民会館大ホール(もくせいホール)でのプレビュー公演から、クリスマスイヴの12月24日(水)の大分での千穐楽まで全国を回る本作。吉田栄作はケガや事故のないことを願いつつ、最後に「あなたの町に伺いますので楽しみにしていてください。劇場でお待ちしております」と呼びかけた。

取材・文/金井まゆみ
撮影/藤田亜弓
<公演情報>
ミュージカル『クリスマス・キャロル』~National Tour 2025~
[東京プレビュー公演]
日程:2025年11月16日(日)14:30
会場:福生市民会館 大ホール(もくせいホール)
[青森公演]
日程:2025年11月19日(水)18:45
会場:リンクモア平安閣市民ホール(青森市民ホール)
[北海道公演]
日程:2025年11月24日(月)12:30
会場:函館市民会館 大ホール
[熊本公演]
日程:2025年11月30日(日)13:00
会場:熊本城ホール メインホール
[長崎公演]
日程:2025年12月3日(水)18:30
会場:ベネックス長崎ブリックホール 大ホール
[鹿児島公演]
日程:2025年12月6日(土)13:30
会場:宝山ホール
日程:2025年12月7日(日)16:30
会場:曽於市末吉総合センター
[鳥取公演]
日程:2025年12月13日(土)12:00
会場:とりぎん文化会館 梨花ホール
[東京公演]
日程:2025年12月15日(月)18:45
12月16日(火)13:00/18:15
12月17日(水)13:00
会場:シアターH
[愛知公演]
日程:2025年12月18日(木)19:00
会場:刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
[岐阜公演]
日程:2025年12月20日(土)14:00
会場:可児市文化創造センター 主劇場〈宇宙のホール〉
[愛媛公演]
日程:2025年12月22日(月)18:30
会場:松山市民会館 大ホール
[大分公演]
日程:2025年12月24日(水)18:45
会場:iichiko総合文化センター
チケットURL:
https://w.pia.jp/t/xmascarol2025/
フォトギャラリー(7件)
すべて見る
