【ライブレポート】Rhythmic Toy World、所沢で2年目の『玩具大戦』開催 「すべてにリスペクトと感謝を。最高の時間にしようぜ!」豪華8組による熱演を完全レポート
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『Rhythmic Toy World Presents 玩具大戦2025』 Photo:石﨑祥子
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Text:風間大洋
Photo:石﨑祥子(Rhythmic Toy World、LACCO TOWER、TOTALFAT、BIGMAMA、
Klang Ruler、MAGIC OF LIFE)
Photo:fukumaru(kobore、LEGO BIG MORL)
Rhythmic Toy Worldが、結成記念日である11月9日(日)に埼玉・ところざわサクラタウンで主催フェス『玩具大戦2025』を開催した。デビュー15周年イヤーを記念した昨年の同フェスを、一度きりの特別な祭典とすることを彼らは選ばなかった。理由はひとつではないと思うが、何よりメンバーのうち岸明平(g)と須藤憲太郎(b)の地元であり、いまやバンドそのものがホームタウンと認識する所沢の街でフェスを行うこと、そこに自らが惚れ込んだ仲間たちを呼ぶことが彼らにとっては何よりモチベーションであり、使命のようなものでさえあるのだと思う。そんな情熱が伝播し咲き誇った2年目の『玩具大戦』、熱演の数々を振り返っていこう。
MAGIC OF LiFE
トップバッターは、リズミックの盟友といえばまず頭に浮かぶMAGIC OF LiFE。リズミックとはGIFTMENなる合同バンドを組み、リリースやツアーをするほどの仲である。MCでは高津戸信幸(vo/g)が「まだ2回目なのに唯一の皆勤賞!!」なんて冗談めかして言っていたが、呼びたいバンドが多いが故にガラリと顔ぶれが変わった今年においても、彼らだけは呼ばれた。その事実を意気に感じないわけがない。


1曲目「箒星の余韻」から頼もしいほどパワフルでバンドサウンドを放つとともに、繊細でありながら随所に熱を滾らせる歌でも観客を惹き込んでいく。楽屋にあったリズミックからのメッセージに「人生の一部だと思ってる」と書いてあったことを明かすと「こっちのセリフ」だと返すMCでは相思相愛ぶりを発揮。そこから高津戸がシャウト混じりの熱唱を見せた「ゼロが見える」、渡辺雄司(b)がほとんどふたつ折りになって頭を振りながらプレイする姿が印象的だった「弱虫な炎」と、胸のすくようなアッパーチューンを2連発して場内を存分にあたため、最後は「応援歌」を披露。明るく照らされた場内に響く《大丈夫》《大丈夫だよ》のフレーズには思わず胸が熱くなった。



LEGO BIG MORL
2番手に登場したのは、MAGIC OF LiFEとも親交の深いLEGO BIG MORL。1曲目「溢れる」から、ポップな音像に差し色のように切り込んでくるタナカヒロキ(g)のエッジーに歪んだギター。サビの《Hello》では自然とフロアから歌声が起こる。続く「bubble」では、マットなダンスビートと絡み合うヤマモトシンタロウ(b)のベースが、決して激しく動き回るわけではないのに着実に快楽成分を底上げしていく。
いかにもロックバンド然とした躍動感に加えダンサブルな要素もふんだんに取り入れながら、カナタタケヒロ(vo/g)が優しく丁寧に歌い上げるバラードソング「あなたがいればいいのに」に至るまで、限られた時間の中でレゴの強みを遺憾なく発揮。「今日は(出演者が)おっさんしかおらへんで」(タナカ)とアラフォー率高めのラインナップを弄る発言で笑いを誘うなどしたMCでもしっかり惹きつける。後半には特大のアンセム「RAINBOW」を繰り出して会場中を祝福感で満たし、ラストの「Wait?」では一気にギアを切り替えてヘヴィ&ファストにド派手なフィニッシュを決めたのだった。

Klang Ruler
何度も何度も「大先輩」からここに呼ばれたことへの感謝を述べていたのは、Klang Rulerのボーカリスト・やすだちひろ。その言葉は決して社交辞令の類なんかじゃなく、憧れてきたバンドシーンへと足を踏み入れていく今この瞬間へのピュアな歓び、そして覚悟の表れだった。


煌びやかなシンセの音に彩られたグルーヴィなサウンド、80's〜90’sの懐かしさや多国籍感も含むポップセンスの発露の仕方が、他のアクトとは一味違う良いアクセントとなっている彼ら。浸透力の高さを感じさせる最新曲「ふめつ」、やすだとyonkey(key/vo)のデュエットスタイルで届けた「ちょっとまって」、泣きメロとSimiSho(ds)の力強いビートの対比がドラマチックな「Teenage Blue」などを次々に演奏しながら、曲間では息を切らしながら喋りまくる姿はおそらく、爪痕を残さんとする気合いの現れ。カラフルなパーティーチューンに意表をつくような音色を忍ばせ、突然ヒップホップ調のアプローチを見せたりもするハイセンスぶりと、終始溌剌とした姿は『玩具大戦』に新風を吹かせていた。



kobore
リハから板付きでぶっ放したわずか1分ほどのファストチューン「爆音の鳴る場所で」がkoboreの何たるかを一発で知らしめる。ギュッと一丸になったまま、ハイテンションで突っ走っていく4つの音。物理的な距離も近いためたまにゴチャついたりもする様子すらライブの熱に拍車をかけていく。その一方で佐藤赳(vo/g)が魂を込めて一語ずつはっきりと発声する歌は浸透力抜群だ。
自分たちは一粒でも多く汗をかくことしかできないけど、それでも伝わってくる奴がライブハウスには揃ってる。そんな佐藤の言葉通り、誰よりも直情的で泥臭くて高純度のライブにフロアのボルテージも否応なしに上がる。清涼感と甘酸っぱさとエモーションを爆音でパッケージした「スーパーソニック」から、歌詞の随所にリズミックへのメッセージも散りばめながらの「テレキャスター」へ。曲中で叫んだ「あの時の打ち上げ代、2,500円が今、ところざわサクラタウンに繋がってる!!」はこの日随一のパンチラインだったのではなかろうか。ロックバラード「ヨルノカタスミ」でライブを終える瞬間まで自らの流儀を貫き通す姿に、撃ち抜かれた人も少なくないだろう。

BIGMAMA
これまで対バン経験こそないものの、リズミックが憧れを抱いてきた先輩BIGMAMAがここで登場。クラシック曲「新世界より」の重厚な調べとともに姿を現わし、「所沢『玩具大戦』、ご案内します。新世界へ」という金井政人(vo/g)の口上からそのまま同曲を土台にした「荒狂曲“シンセカイ”」をドロップ。出演が発表されて以降にバイオリン・東出真緒が活動を休止したため、この日は4人でのイレギュラーな編成で登場となったが、そのことが彼らの骨格を形成するロックやパンクを浮かび上がらせるだけでなく、シンフォニックなアレンジの裏に隠れていたメタリック成分まで露わにするのだから面白い。


フロントに並び立つ金井政人と柿沼広也(g/vo)が本来バイオリンが担うパートを埋めることでサウンドが再構築されており、パンクやエモの色濃い「I Don't Need a Time Machine」、ビッグバンド的装いからリズムチェンジを繰り返すスリリングな最新曲「High-Spin Coffee-Cup」などを繰り出すたびにフロアからはたくさんの手が挙がる。ラストは「No.9」から「MUTOPIA」へと、ダンスミュージック要素と祝祭感満載のナンバーを繋ぐ鉄板の流れで締めた。



TOTALFAT
凶悪な重低音とは不釣り合いなほどのご機嫌なコール&レスポンスが行き交う1曲目は「PARTY PARTY」。生憎の肌寒い陽気となったが、TOTALFATの3人にとってはどこ吹く風だ。「俺たち袖なしですよ」と薄着で音ステージしたことを誇らしげに語るShun(vo/b)の発言は「夏のトカゲ」の前振り。ラテンノリと2ビートを行き来する中、色とりどりのタオルが打ち振られ、会場が揺れる。続いて所沢が地元であるBunta(ds)が「Fireworks」イントロのマッシブなビートを振り下ろすと、ますます会場が揺れる。シーンで言うとパンク寄りの存在ではあるが、こういう多種多様な音楽が集う場においても親和性が高い……というか、頭ひとつ抜けた求心力を発揮できるのは半端じゃない。


今夏リリースしたアルバムの収録曲たちも披露され、中でも「袖がない」ことを再度こすってから演奏した曲名が「Tank-Top」だったのは傑作だった。Jose(g/vo)のハイトーンが一際輝かしく響いたラストの「Place to Try」に至るまで徹頭徹尾、煽りまくり踊らせまくりのパーティーチューンを貫くことでリズミックを祝福しつつ場を沸騰させた3人。結成四半世紀にしてこんなサイコーなお祭り野郎、ほかにいない。



LACCO TOWER
MCで「ご心配おかけしてすみません」と頭を下げたLACCO TOWERの松川ケイスケ(vo)。それは数日前に起こった不測の事態により真一ジェット(key)を欠いた体制となったことを受けてのこと。ただし、手負いとなっても歩みを止めない選択をした4人は「俺らで終わるくらいの気持ちでいきますんで」なんて冗談めかしつつ激しく骨太なプレイを繰り広げ、トリ前のステージで鮮やかに躍動。不安や心配を鮮やかに払拭してみせた。


冒頭の「後夜」から松川がヒロイックにしてアグレッシブな歌唱を見せ、低重心で推進するリズム隊と容赦無く手数を注ぎ込む細川大介(g)のギターが立体的に迫り来る。イントロからガンガン拳の突き上がった「未来前夜」に、怒涛のビートと歌謡テイストの歌が化学反応を起こす「林檎」、アカペラでのスタートからオーディエンスのシンガロングを呼び込んだ「薄紅」。鍵盤が不在で同期も使用しない生身のライブが浮かび上がらせたのは、メロディアスでいながらタフで、そして存外ど直球なロックサウンドだ。キャリアの上でもイベント主催の上でも先を歩み続ける先輩から主役のリズミックへ、最高のバトンが繋がれた。



Rhythmic Toy World
先輩から盟友、後輩までバラエティ豊かな7組の熱演を受け、最後にステージに上がったRhythmic Toy World。「すべてにリスペクトと感謝を。最高の時間にしようぜ!」と内田直孝(vo/g)が告げて始まった「余白が足りない」のイントロ、ほとんど雄叫びみたいな須藤のコールにすかさず反応していくオーディエンスの姿に、積み重ねてきた愛と信頼が滲む。間髪入れずに「ワンダーワールド」を投下したあと、セクシーにうねるベースと佐藤ユウスケ(ds)によるタイトなビート、刺々しいギターが導く「とおりゃんせ」へ。サビを契機にビートチェンジするなどカオスを内包したポップネスが彼ららしい。


内田の口からあらためてバンドを続けていく意志が語られた後、岸がテクニカルなギターソロを性格無比に弾きこなして脚光を浴びたのは、色褪せないアンセム「輝きだす」。そこからの後半戦では「僕の声」「青と踊れ」と、リスナーへの感謝やエールを込めたストレートなメッセージソングを連投。彼らのレパートリーには変化球だってたくさんあるところを、あえて直球・王道で挑んできた事実にこのイベントの盟主たる誇りと覚悟を見た。なお、大トリだけど持ち時間が他バンドとほとんど変わらなかったところも、何とも彼ららしい一面として記しておきたい。


アンコールで披露した「あなたに出会えて」のアウトロ、「今日も幸せだった、どうもありがとう!!」との言葉を添えて2度目の『玩具大戦』を締め括ったリズミック。完全燃焼のライブを見せるとともに平素から掲げる「遊ぼうや」のスローガンに相応しく、自身もまた今日一日を遊び切ったはずの4人は、晴れやかな表情でステージを後にしていった。
昨年の一歩目に続き、数々のドラマとともに勇気ある二歩目が記されたこの日。このまま歩み続けていくことが並大抵ではないのは承知だけれど、また所沢の地でリズミックと、彼らがレコメンドするライブバンドたちに会える日が来ることを願わずにはいられない。

<公演情報>
『Rhythmic Toy World Presents 玩具大戦2025』
2025年11月9日(日) 埼玉・ところざわサクラタウン・ジャパンパビリオン ホールA
出演:Rhythmic Toy World / BIGMAMA / Klang Ruler / kobore / LACCO TOWER / LEGO BIG MORL / MAGIC OF LiFE / TOTALFAT
Rhythmic Toy World オフィシャルサイト:
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