『北斎でひもとく!浮世絵版画大百科』12月11日から 歴史、技法、テーマから浮世絵版画の魅力を再確認
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葛飾北斎《あづま与五郎の残雪》《伊達与作せきの小万夕照》すみだ北斎美術館蔵(後期展示)
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すべて見る一点物の肉筆画に対し、量産され、販売され、広く流通する浮世絵版画に焦点をあて、歴史や技法、テーマなどを紐解き、その幅広い魅力を改めて掘り下げる展覧会が、12月11日(木)から2026年2月23日(月・祝)まで、東京・墨田区のすみだ北斎美術館で開催される。

まず紹介されるのは、墨一色の「墨摺絵」から、複数の色を版木で摺り重ねた多色摺へと至る浮世絵版画の歴史だ。版木に「見当」という目印をつけることで、数色を重ねて摺ることが可能となり、やがて多くの色を重ねた豪華な「錦絵」が誕生した。今回は、その間の職人たちの技術革新や創意を追うとともに、制作方法も丁寧に見ていく。
判型のバリエーションが並ぶのも興味深いところだ。大きな紙を半分、さらに半分と切って使ったのは、紙を無駄にしない工夫でもあり、そこには浮世絵版画を「商品」として企画・販売した版元の思惑もうかがえるという。一方、絵師にとっては、判型を活かした構図を生み出すのが腕の見せどころ。浮世絵は、版元・絵師・彫師・摺師の四者が共同で制作したものであり、同展では、分業を担ったその四者それぞれの立場と工夫にも光があてられている。

もう一つ、同展が光を当てるのは、浮世絵版画には情報を伝えるメディアという側面もあったということ。「浮世」=「現世」を描いた浮世絵は、庶民の身の回りにあるあらゆるものを画題とする。江戸っ子の娯楽だった歌舞伎の役者絵、旅人が土産に持ち帰る名所絵などが人気を集めると同時に、商品の宣伝チラシやお菓子の袋、玩具、さらに著名人の訃報も浮世絵版画でつくられた。そして明治になると、写真や新聞など新たなメディアとの棲み分けをしつつ、新しい時代をとらえる作品も生み出された。こうした浮世絵版画は、当時の人々に情報を伝えるものであったと同時に、現代人にとっては、江戸に生きる人々の日常を垣間見られる媒体ともなっている。

さまざまな方向から浮世絵版画の魅力を紹介する同展は、タイトル通りまさに「大百科」。NHKの大河ドラマもあって、2025年は浮世絵が特に注目を浴びた年だった。ここで今一度、浮世絵についての知識を総ざらいしてみてはいかがだろう。
<開催情報>
『北斎でひもとく!浮世絵版画大百科』
会期:2025年12月11日(木) 〜 2026年2月23日(月) ※会期中展示替えあり
前期:2025年12月11日(木)~2026年1月18日(日)
後期:2026年1月21日(水)~2月23日(月・祝)
会場:すみだ北斎美術館
時間:9:30~17:30 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜、2025年12月29日(月)~ 2026年1月2日(金)、1月13日(火)
※ただし1月12日(月・祝)、2月23日(月・祝)は開館
※2026年1月20日(火)は展示替えのため同展は休室
料金:一般1000円、大・高校生700円、中学生300円、65歳以上700円
公式HP:
https://hokusai-museum.jp/
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