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板垣李光人×武田一義 対談「好きなことを仕事に。この幸せがいつまでも続いてほしい」

映画

インタビュー

ぴあ

(撮影/稲澤朝博)

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仲間の最期を勇姿として手紙に書き記す功績係――。ペリリュー島の戦いの中で、彼が本当に見た真実とは? 武田一義の漫画が原作の壮絶な世界で紡がれる戦火の友情物語「ペリリュー ―楽園のゲルニカ―」が劇場アニメーションとして映画化。家族や故郷を想いながら、若い兵士が命を落としてゆく中、その生きた証を手紙に綴った功績係の田丸を演じたのが、板垣李光人だ。原作者の武田と板垣の対談では、本作の魅力についてはもちろん、今の幸せが継続することを願うふたりの想いに触れた。

可愛らしい絵柄と壮絶な戦いの描写とのギャップに驚きました

――まずは板垣さんに原作を読まれたご感想、武田さんに原作を手掛けるにあたって大切にされたことからお聞かせ下さい。

板垣李光人(以下、板垣) 今回お話をいただいて、原作を読ませていただいたんですが、まず表紙で騙されるというか。キャラクターの絵柄が三頭身で可愛らしいのに、実際読み進めていくと、自分が知らなかったペリリュー島での壮絶な戦いが描かれていて、そのギャップに驚かされました。読みながら、田丸という人間を自分が背負うことになるんだという責任を感じながら作品と向き合いましたが、この作品と出会うことができて良かったです。

武田一義(以下、武田) 自分が意識していたのは、可愛いのは、キャラクターデザインまでということです。それ以外の戦場で実際に起こったことは、ディフォルメしてごまかしたりするのではなく、リアルに描こうと決めていました。逆に言えば、リアルに描写する分、読者の方々が「キャラクターが可愛いから、きつい現実の話でも読んでいける」と思える入口や癒やしになるように気を配りました。

――武田さんは、原作者でもあり、映画の脚本にも参加されていますが、11巻ある原作を2時間弱の映画にまとめるのは難しい作業でしたか。映画にすることの難しさや映画だからこそ伝えたいことがありましたら、知りたいです。

武田 映画にする難しさは、単純に長い原作を短くまとめる難しさがありました。あと、もう1つ、漫画では白黒の動かない絵で表現していて、それに色が付いて、音が付いて、動きが付いてアニメーションになると、戦争だからどうしても描かなければならない残酷な出来事を、より漫画よりも生々しく感じさせてしまう。そういう描写の難しさがあると感じましたし、制作チームの方々も気を付けて工夫して、描写していただけたと思います。

板垣 では、映画になる良さは、どんなことでしたか?

武田 映画になること自体はとてもいいことだと思っていて。戦争にまつわる文献や研究は、世の中にたくさん発表されていますが、大体、活字の本なんです。僕が漫画の物語にしたことによって、文献より、戦争体験を知るのによりボーダーラインを下げて読めるのかな、と。漫画で戦争のことを詳しく読めたっていう方はいらっしゃると思うんですけど、映画になってそれがよりボーダーラインが下がったことで、初めて触れることができる人がすごく増えると思うんですよね。戦争体験に触れる機会が増えるのはいいことだと思います。

実際にペリリュー島へ行って、慰霊訪問できた体験は自分にとって大きかったです

――板垣さんが演じたのは、遺族に向けて戦場での仲間の最期を記す功績係を務める役どころ。田丸の役割をどう思いましたか。

板垣 戦死したら、遺族の元に報告が送られることは、ぼんやりとは分かってはいたんですけど、その報告がすべてではなく、隠し事もあるだろうなと思っていたんです。当時の兵士たちが戦争で戦うっていうことに対してどのように向き合っていて、いかに素晴らしく戦ったのか(脚色して)ご遺族に届けているんですよね。今の価値観とは違う部分もありますが、当時は、それが正義であって、正しいとされていたこと。いろんな葛藤や感情を持ちながらも功績係として美しく仕立てようと任務をまっとうする田丸の気持ちを大切に演じました。

――板垣さんはアフレコをする前に実際に本作の舞台となったペリリュー島に足を運ばれたそうですね。そこでの経験が田丸を演じるヒントになりましたか。

板垣 声優を務めるのは、今回が2回目でした。映像作品では、作品の世界観にぴったりなロケーションがあって、衣装やメイクがあって、共演者の方がいて、という中で芝居をしているんですが、アフレコはそのどれもがないんですよね。ブースの中で、私服を着ていて、メイクもしてないですし、モニターとマイクと対峙して芝居をするわけなんですが、やり慣れてないのですごく難しくて……。だからこそ、実際にペリリュー島へ行って、慰霊訪問できた体験は自分にとって、大きなものでした。実際にその地を踏んで戦跡を見てみると、当時のまま、ガラスの瓶の破片がたくさん落ちていて。島の奥のほうは少し涼しいんだなとか、いろんなことを自分の肌で感じられましたね。カニがいたら、「田丸はこのカニが目の前に現れた時は、めちゃくちゃ嬉しかったんだろうな」って。地図でどういう場所か想像するより、ここで戦争が繰り広げられていたんだなとリアルで感じることができました。

――武田さんは、板垣さんが田丸役を演じると聞いた時、どんな印象を持ったか教えて下さい。

武田 まずプロデューサーさんの中で田丸の候補に板垣さんのお名前が上がったんですよね。板垣さんのビジュアルはすぐに思い浮かんだんですが、どんな声だったかなと思って、改めて板垣さんのYouTubeを観させて頂いたんですよ。そうしたら、板垣さんの声を聞いた時に、自分の中の田丸と一致して。戦争の物語だから、どうしても残酷に展開していくんですけど、僕は主人公の田丸にこの主人公だから、ちょっと癒されるたらいいなと思っていて。そんな声の持ち主は、真面目だけども、どこか聞いていて癒される声が望ましいなと思っていたんですよね。なかなか難しいなと思っていたところに、板垣さんの声がハマって、「ぜひぜひ、絶対に板垣さんでお願いします」とお願いしました。板垣さんが引き受けて下さって本当に嬉しかったです。

板垣 ありがとうございます。僕こそ嬉しいです!

キャラクターに命が吹き込まれた感じがしました

――武田さんはご自身が描かれたキャラクターが、板垣さんや中村倫也さんら声優さんによって命が吹き込まれた映像をご覧になって、どんな印象を持たれましたか。

武田 まさに命が吹き込まれたっていう感覚ですね。漫画を描いていた時に声を想像したことは特になかったんですよね。どんな声なんだろうって、お話をいただいた時にぼんやりと考えていたけど、ずっとピンと来てなかったものが、お二人の声が入って初めて「あ、これしかないな」と感じましたし、本当にキャラクターに命が吹き込まれたっていう感じがしました。

――板垣さんは田丸の相棒である吉敷佳助を演じられた中村倫也さんとのアフレコはいかがでしたか。武田さんは中村さんの印象はいかがでしたか。

板垣 中村さんとはアフレコの3日間のうち、初日だけご一緒したんです。声優の経験が豊富な中村さんが間近で声を入れている姿を拝見していて、声の使い方や声の出し方が素晴らしいなと思いました。僕はまだ2回目なので、難しい部分もありましたが、中村さんの吉敷の声があると声を入れやすくて。声優としてのやり方と声優としての声の出した方、両方を分かっている中村さんだからこそ、作れるやりやすい現場を監督にポロっと提案して下さって助かりました。

武田 僕は吉敷を素朴な田舎の青年だと思って書いていましたが、中村さんの声で戦争に行っていない本来の吉敷という人物を改めて感じることができて。僕たち自身が戦争を知らない世代ですから、板垣さんと中村さんも想像してやるしかなかったと思いますが、高い演技力を持つお二人なら大丈夫だと思いましたね。

――田丸と吉敷は、一緒にいると安心するような相棒です。友情ドラマが繰り広げられる部分もありますが、板垣さんは二人の関係性をどう捉えましたか。

板垣 正反対の部分がある二人なんですけど、その二人が1日1日、今を生きていく。そして、日本に帰ろうという約束をして、一緒に過ごしてる時間は、どういうものだったのか想像しました。すぐ隣に死っていうものがリアルにある中で、お互いに信頼できる関係性だと思いました。ペリリュー島でいつ戦死するか分からない中、死への恐怖も相当なもの。そんな中で、お互いがお互いを支え合っていたと思いますし、現代に生きる自分には想像もつかないような、強い繋がりだったんだろうなと思います。

武田 そうですね。何よりもずっと一緒に同じ体験を潜り抜けて生きているということがとてつもなく重要なことだと思います。それこそが、実際の戦争体験者の方々が戦友に対して、特別な想いを抱き続けている所似でもあるのではないでしょうか。

好きなことが仕事になっているのは、とても幸せなこと

――お2人は共にモノ作りに愛情を注ぐクリエイター同士でもあるんですけども、お互いにこの機会に聞いてみたいことはありますか?

武田 板垣さんは役者さんになろうと思ったのって、いつ頃、どういうきっかけだったんですか?

板垣 僕は芝居をやりたいなと思って小5で事務所に入って、ここまで来てしまった、みたいな……。ドラマチックに何かあるわけでは全然ないんですよね。逆に武田先生が漫画家になられたきっかけは?

武田 僕は子供の頃からただ絵を描くのが好きで。言ってしまえば、その延長でずっと来ました。大人になってから違う職業にもついたんですが、結局、絵を描く仕事でチャレンジしたいなと思って戻ってきた感じです。

板垣 そうなんですね。漫画家の方って、連載中のスケジュールをお伺いするとすごくハードなものっていいますよね。

武田 そうですね。漫画家にもやっぱりいろんな種類がいますから。僕も週刊誌を手掛ける漫画家さんのスケジュールはすごいなと思ってるんですよ(笑)。

板垣 やっぱりそうなんですね(笑)。

武田 僕が描いてる「ヤングアニマル」は隔週雑誌なので、月2回なんです。週刊に比べたら、ずっと楽だなとは思っていて。同じ漫画家同士で「週刊漫画家の人たちってヤバイな」って話してますね(笑)。僕は、絵を描くのも、1枚の絵を描くだけでも疲れるんですよ。物語とストーリーを考えて、コマを割って、下書きして……って、作業を考えると週刊でやるなんてとても考えられない。

板垣 確かに大変ですよね……。

武田 知り合いの漫画家の奥さんが、漫画家じゃない友達に聞かれたらしくて。「漫画家が家にいるのってどういう感じ?」って。そしたら、その奥さんが、「ずっと受験生がうちにいる感じかな」って。あ、それすごい分かるなって思ったんですよ。締め切りのたびにやっぱり受験みたいに追い込まれますからね。多分、ずっと緊張感がありますから。でも、スケジュール的な厳しさで言ったら、僕は逆にタレントさんこそ、「すごいな、やばいな」と思ってます。

板垣 いえいえ。

武田 板垣さんたちのアフレコの初日の時に見学させていただいたじゃないですか。あの日、家に帰ってテレビを付けたら、夜生放送のテレビに出ていましたからね。タレントさんのスケジュールは、漫画家の僕から見てもやばいなと思いました(笑)。

板垣 あははは。そうなんですか!

――お互いにハードスケジュールで戦っている戦友ですね(笑)。ちなみに田丸は漫画家になる夢を持っている青年でもありますが、お二人が叶えたい夢、やり遂げたいことはどんなことでしょうか?

板垣 やりたいことを言ったら、もう山のようにありますけどね。今やっている役者業でいったら、続けるうちに大きい賞をいただけたら嬉しいですけど。こういうことを、いついつまでに絶対やる、みたいな具体的な目標みたいなものはあまりなくって。今こうして仕事ができていてる、好きなことが仕事になっているっていうのはすごく幸せなので、それが続いたらいいなっていうのはありますね。それ以外で言うと、絵も描いていますし、服も好きなので作ってみたいですし。旅行とか、行きたい場所もいっぱいありますし、やりたいことは尽きないですよ。

武田 今、板垣さんが言ったように、今自分が好きでやっていることが続けられるっていうことがまず1番現実的であり、切実な夢ですよね。ずっと戦後が続くことを願っていますし。本当に今自分が大切にしているものがそのまま続いていけばいいなと思います。

撮影/稲澤朝博、取材・文/福田恵子

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<作品情報>
『ペリリュー -楽園のゲルニカ-』

公開中

配給:東映

キャスト:板垣李光人 / 中村倫也
天野宏郷 藤井雄太 茂木たかまさ 三上瑛士

主題歌:上白石萌音「奇跡のようなこと」(UNIVERSAL MUSIC / Polydor Records)
原作:武田一義「ペリリュー ―楽園のゲルニカ―」(白泉社・ヤングアニマルコミックス)

【ストーリー】
君の生きた証を伝えたい――
壮絶な世界で紡がれる戦火の友情物語が誕生

白泉社ヤングアニマル誌で連載され、かわいらしいタッチでありながら戦争が日常であるという狂気を圧倒的なリアリティで描き、第 46 回日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した『ペリリュー ―楽園のゲルニカ―』。各界クリエーターから絶賛コメントが寄せられた戦争マンガの新たなる金字塔が、劇場アニメーションとしてついに映画化!
心優しい漫画家志望の主人公・田丸 均を板垣李光人、頼れる相棒・吉敷佳助を中村倫也が演じることが決定。確かな演技力で、壮絶な戦場を生き抜こうとする若き兵士を熱く演じる。
南国の美しい島で相次ぐ戦闘、飢えや渇き、伝染病――。 家族を想い、故郷を想いながら、若き兵士が次々と命を落としてゆく。そんな壮絶な世界を田丸と吉敷は必至で生き抜こうとする。彼らが確かに生きた証がここにはある。

公式サイト:
https://peleliu-movie.jp/

(C)武田一義・白泉社/2025「ペリリュー −楽園のゲルニカ−」製作委員会

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