天海祐希が限界突破!『劇場版 緊急取調室 THE FINAL』、12年間にわたる取調べのフィナーレは、内閣総理大臣──【おとなの映画ガイド】
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『劇場版 緊急取調室 THE FINAL』 (C)2025劇場版「緊急取調室 THE FINAL」製作委員会
続きを読む現在、第5シーズンを放送している天海祐希主演の大ヒットドラマ『緊急取調室』が、いよいよ、12月26日(金)に公開される映画『劇場版 緊急取調室 THE FINAL』でフィナーレを迎える。このシリーズは、取調室の中で行われる、クセの強い刑事たちと一筋縄じゃいかない犯人の心理戦が大きな魅力だが、FINALで対峙するのは、なんと国家組織の頂点も頂点、内閣総理大臣! 前代未聞の取調べ作戦に度肝を抜かれます。
『劇場版 緊急取調室 THE FINAL』
天海祐希演じる取調官・真壁有希子が、「緊急事案対応取調班(通称:キントリ)」のメンバーとともに、録音・録画設備完備のハイテク取調室で容疑者の取調べを行うこのドラマは、2014年1月期に誕生した。当時、捜査機関による虚偽の自白の強要、冤罪事案の頻発が問題視されていた。2016年には刑事訴訟法が改正され、取調べの可視化が義務づけられたのだが、思えば、そんな社会背景のもと、時代を先取りしたドラマだった。

あれからいくつものシーズン放送を重ねて12年、「面白くなってきたじゃない!」という真壁のセリフをはじめ、管理官・梶山(田中哲司)の「出番です!」という掛け声や、チームメンバーの小石川(小日向文世)、菱本(でんでん)、玉垣(塚地武雅)、捜査一課の監物(鈴木浩介)、渡辺(速水もこみち)が円陣を組んで「うぇ~い」とコールするダルさ具合は健在。このワチャワチャしているチームの総力戦がどこよりも“最強”だってのが、長い人気を誇る大きな理由だ。

そんなチームも、ついにこの映画で、最難関の“敵”、内閣総理大臣に挑むことになる。
超大型の台風が連続発生して、国家を揺るがす緊急事態が起こっているにもかかわらず、その災害対策会議に、いつも時間厳守に神経質な長内総理大臣(石丸幹二)が10分遅刻してきたことが、すべての発端。
日本のケネディとよばれ、やってる感を常にアピールしたい総理は、災害避難の現場を視察するのだが、そこにあらわれた暴漢・森下(佐々木蔵之介)に襲撃されてしまう。逮捕後、森下の取調べを任命されたのは、キントリチーム。早速調査を開始したものの、「取調室に総理大臣を連れて来い!」と無謀な要求が繰り返されるばかりで難航する。
そんな中、長内総理に“ある疑惑”が浮かび上がり……。

脚本は井上由美子、監督は常廣丈太。ふたりはテレビシリーズからずっとのバディだ。だからこそ、映画は12年間の集大成として、定番のセリフだけでなく、あらゆるところに心配りがされている。例えば、10月に始まった第5シーズンに、石丸幹二扮する総理がなにげに登場していたり、これまでのシーズンエピソードが映画の中でスパイスのように使われていたり。

なにせ「取調室」での白熱シーンがメインのドラマ。肝心のその舞台に、現職の総理が居てくれなければ話にならないないわけで、そのしつらえも、実に綿密に組み立てられている。本当に「マル裸(はだか)にしてやる!」ことができるのか? 映画は、その興味を周到なチームの作戦と緊迫感で誘い、ぐいぐいひっぱっていく。

そして、やはり何といっても、光っているのは真壁の颯爽とした姿だ。長いものに巻かれない、信念に忠実、そして捜査のプロならではの面白がりで突き進むキャラ、これはもう天海祐希にしかできない。コアメンバーも、脇を固めるキャストも個性派ばかり。警視庁副総監にまでのぼりつめた磐城元部長(大倉孝二)、真壁の娘役で、いまは消防署の救急救命士になっている奈央(杉咲花)、SITからキントリに真壁をリクルートした当時の刑事部長(草刈正雄)も今回、思いもよらない場面で登場。善さんの名前で親しまれた中田役の大杉漣さんも写真だが、オマージュ的に顔をみせる。

ファンはご承知なのだが、この映画、いくつものトラブルを乗り越え、新たなキャストとして石丸幹二を総理大臣役に迎えて完成にこぎつけた。……いろいろあった、というとなんだかいわくつきの映画、と思われそうだが、おかげでファンはさらにパワーアップしたシーズン5を観ることができたし、配信が当たり前になった今だから、ちょっとでも興味を持った人は全シリーズを“いっき観”することもできる。まさに、「面白くなってきたじゃない!」なのだ。

とは言え、ここまで脚本を大幅に改稿し、撮り直しにあたったスタッフ、キャストの皆さんの不屈の努力に頭がさがる。石丸幹二の総理大臣、実に堂々として立派。この総理が相手、というのはなかなか思いつかない。意外性のあるストーリーだ。それにしても、まさか、現実の世界で女性首相が誕生するとは思ってもみなかったのだろう。万一小泉さんだったら、バーチャルとリアルの錯綜感を味わえてさらに面白かったかも……。

文=坂口英明(ぴあ編集部)
(C)2025劇場版「緊急取調室 THE FINAL」製作委員会

