大河ドラマ『べらぼう』徳川家斉役の城桧吏が目ざす俳優像「誰かの支えになれるように」

『べらぼう』は自分にとって勉強になる部分がたくさんあった

──大河ドラマへの参加は本作で2回目でしたが、収録を終えてみて改めてどのような現場でしたか。

今回も大河ドラマ独特の現場の空気感があり、少し緊張感がありました。
『西郷どん』の時は方言があり、その方言に慣れるのに時間がかかったのを覚えています。
今回は方言はないものの、べらぼうの物語の中で家斉は重要人物になってきますので、その分プレッシャーもありますし、将軍という今までやったことがない役柄で緊張がありました。演じ方も現代劇とは少し違うので、苦戦する部分がありましたが、その分自分にとって勉強になる部分もたくさんありました。

──まもなく最終回を迎えますが、本作への出演はご自身にとってどのような経験になったと感じていますか。

大河ドラマならではの独特の雰囲気が、より一層の緊張感をもたらしていて、初心を思い出させてくれるような現場でした。
僕の知らない言葉もたくさんあり、その都度勉強になっていましたし、収録一日一日が貴重な時間でした。

──共演者の方から学んだこと、実際にアドバイスを頂いたエピソードなどがあればお聞かせください。

生田さんとのシーンが多かったのですが、お芝居の面で生田さんの目のお芝居に惹かれました。ただひたすら一点を見つめているだけなのにその瞳の奥には何かを企んでいるようにみえ、同じシーンの時は良い意味で怖かったのを覚えています。
それに生田さんのアドリブがすごかったです。
よく演出の方々と「こんな感じに動いても良い」と、どのシーンでもよくアドリブをやられていて、僕も生田さんのように演技の表現の幅を広げられたらと思いました。

また、生田さんはたくさん話しかけてくださって、会話の中で、俺ら顔似てるよね、ほんとの親子みたいと言ってくださったこともありました。
そして何より、名前を呼んでくださった事がとても嬉しかったです。

──本作への出演の前と後で、心情の変化など何か変わったことはありましたか。

緊張していましたが、とても温かい現場でしたし、家斉として参加できたことが何よりも嬉しかったです。
家斉はこれまで演じたことのない性格の役でした。
現場ではもっと家斉は適当で良い、定信の話を全く聞いてなくてめんどくさそうにしてと、演出の方からのご指導がありました。
どうしても演じている時に相手の言葉に自然と反応してしまうので、そういった部分は苦戦したところだと思います。
収録を通して家斉と共に自分自身も成長できたのではないかなと思います。

心に残るような俳優に

──大河ドラマ『べらぼう』では生田斗真さん、『終活シェアハウス』では竹下景子さん、室井滋さん、戸田恵子さん、市毛良枝さんと特に共演シーンが多かったと思いますが、大先輩の俳優の方々と共演してどのような学びがありましたか。

本当に毎日の収録が学ぶことだらけでした。それはお芝居のことに限らず、食事の栄養面、健康のためのストレッチなど、いろんなジャンルのことを教えてくださいました。
『終活シェアハウス』では、声のお仕事をされている方もいるのでとても声が綺麗だなといつも思っていました。
戸田さんからは現場でナレーションのコツを丁寧に教えていただきました。

──今年の後半は大河ドラマ『べらぼう』に続いて、『終活シェアハウス』で主演を務めたり、Netflixシリーズ『イクサガミ』に出演するなど様々な役に挑戦されました。
振り返ってみてどのような1年でしたか。

それぞれが全く違う性格のキャラクターなので演じていてとても楽しかったです。
そしてどの作品も周りの方々やSNSの反響がたくさんあり、いろんな感想をいただくことができました。それがとても嬉しく、これからも家族や友人、応援してくださる方々のためにも頑張っていかなくちゃなと改めて思いました。

──来年の抱負や目指したい俳優像があればお聞かせください。

僕の中で、明確に出てみたい作品ジャンルというのが見えてきました。昔から言っているアクションや、是枝監督の作品のような自然なお芝居で生活を覗き見しているような日常の小さな出来事、人間味が見える作品にも出演していきたいと思っています。
僕自身がそう言った物語が淡々と進んでいき静かで繊細、自然な芝居や生活音を貴重とした作品が好きだからです。
将来の俳優像として人の心に残るような俳優になりたいと思っています。
映画を見るのが趣味でよく観に行くのですが、心に残る俳優さんや作品というのは、いつも自分の生活にも影響しているなと感じています。
誰かの支えになれるように、来年も頑張りたいです。