「私の声で心が動くような瞬間をお届けできたら」世界の歌劇場で喝采を浴びるソプラノ、中村恵理がザ・フェニックスホールで初めてのリサイタル
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すべて見る取材・文:逢坂聖也(音楽ライター)
世界の歌劇場で活躍するソプラノ、中村恵理が、3月5日(木)あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホールに登場する。中村恵理は兵庫県川西市出身。大阪音楽大学大学院、新国立劇場オペラ研修所を経て2008年、英国ロイヤルオペラにデビュー。翌年のベッリーニ『カプレッティとモンテッキ』でアンナ・ネトレプコの代役を務めて一躍、脚光を浴びた。2010年から6年間はバイエルン国立歌劇場の専属歌手として数々の主要キャストを務め、現在はミュンヘンを拠点に各国のオペラハウスに出演を重ねている。

「オペラで歌う時は、仮に主役であったとしても裏方さんを含めて全員がチーム!という気持ちで臨めるのですが、リサイタルは舞台の上には歌手は基本的に私ひとり。その緊張感をいつも感じます。特に今回は大阪で初めてのリサイタルなので、楽しみでもあり、少しドキドキもしています」
公演に先駆けたインタビューで中村恵理はそのように語っている。欧米での活動が中心の彼女だが、近年は日本での活躍も目覚ましい。これまでプッチーニ『蝶々夫人』(新国立劇場)での蝶々夫人、ヴェルディ『椿姫』(新国立劇場)でのヴィオレッタ、プッチーニ『ラ・ボエーム』(藤沢市民オペラ)のミミなど、数々の主要キャストを担ってきた。また関西においても兵庫県立芸術文化センターでのモーツァルト『フィガロの結婚』でスザンナ、びわ湖ホールでのプッチーニ『つばめ』でマグダを歌い、多くの観客を魅了している。スケールの大きなドラマティックな感情表現は、ディーバ(歌姫)と呼ぶにふさわしい。
「私はディーバではないですよ。舞台の上でそう振る舞うことがあっても、自分自身はまったく違います。ただもしそう見えるとしたら、私が歌う役がそう見せてくれるのだと思います。その役を生きている瞬間があるということですから」。中村の歌うことへの実感と情熱が滲む言葉だ。
「こんなことを言うと『プロらしくない』って叱られるかも知れないけれど、批評などでも私の声はゴールデンヴォイスではなくてシルバーヴォイスって言われます。なので自分にはそれほどの"声"はないんだって思っているんです。でも、だからあきらめられないんですね。私の声にもできることがあるはずだって。素晴らしく歌っている方の歌の中には、目には見えないけど心が動くような瞬間があるでしょう? 自分の声でもそれを届けることができたら、どんなに幸せかと思うんです」
今回のリサイタルではイタリア・オペラや歌曲を中心に、彼女のキャリアを振り返るような多彩な作品が選ばれている。「大阪のお客さまにこれまで私が歌ってきたものをお伝えしたい」そう語る彼女の魅力を余すところなく披露するプログラムだ。2026年も国内外で出演作が相次ぐ中村恵理の現在地を示す、輝きに溢れたステージとなるに違いない。
「前半はスカルラッティの『すみれ』で始まって、春らしい緑を感じるような作品を選びました。日本歌曲の中では信時潔の『占うと』が、女性の情念がこもった珍しい作品と言えるかも知れません。後半は私がこれまで歌ってきたオペラを中心に。その中では『カルメン』が新しく歌う作品です。私はヨーロッパでフラスキータ役を10年以上やっていたのですが、2026年2月に群馬(高崎芸術劇場)でミカエラを歌います。この初めての役を、大阪のお客さまにもお披露目したいと思っています」
<公演情報>
「中村恵理 ソプラノリサイタル」
日時:3月5日(木) 19:00開演
会場:あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール
【出演】
中村恵理(ソプラノ)
木下志寿子(ピアノ)
【予定曲目】
スカルラッティ:すみれ
ガスパリー二:あなたへの愛を捨てることは
チェスティ:私の偶像である人のまわりに
中田喜直:たんぽぽ
信時潔:占うと
中田喜直:さくら横ちょう
ティリンデッリ:おお、春よ
ドナウディ:今、緑の香りが戻り
ドナウディ:いつまた君に逢えるだろうか
レスピーギ:霧
レオンカヴァッロ:マッティナータ
グノー:歌劇『ロメオとジュリエット』より “私は夢に生きたい”
ビゼー:歌劇『カルメン』より“恐れるものなど何もない”
プッチーニ:歌劇『つばめ』より
“お金のほかには何もないんだわ!~お嬢さん、愛が花ひらいたよ”
プッチーニ:歌劇『ラ・ボエーム』より“あなたの愛の呼ぶ声に”
ヴェルディ:歌劇『椿姫』より“そはかの人か ~ 花から花へ”
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2531517
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