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ココラシカ・デビュー後の転換期を経て――冬を彩る新曲「白い嘘」制作背景と1月ワンマンを語る

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Interviw&Text:柴那典

今年でメンバー全員が20歳を迎えるギターレス3ピースバンド、ココラシカ。2025年5月のメジャーデビュー以降、精力的に活動を続けてきた彼らが、冬を彩るデジタル・シングル「白い嘘」をリリースした。クリスマスをモチーフにした曲調と共に、思いを伝えられない葛藤を情感たっぷりに歌い上げた本作。制作背景や、メジャーデビューを経たバンドの変化、そして来年1月に控えるワンマンライブへの意気込みを、メンバーのこうき(vo/key)、らな(b)、こた(ds)の3人に聞いた。

── 新曲の話の前に、まずは先日拝見した代官山SPACE ODDでのライブについて聞かせてください。かなりガッツがあるパフォーマンスで、すごくエネルギッシュなライブだったという印象でした。ただ、実は後から機材トラブルがあったと聞きました。何があったんでしょうか?

こうき こたはとにかく焦っていましたね。

こた セッティングの段階で、シーケンスとクリックの音が混ざってしまっていたんです。シーケンスを出しているのは僕なので、僕が一番焦っていました。機材の故障そのものよりも、「ライブができなくなるかもしれない」という心配が大きくて。セッティング中にどうにか回線が混じらないように試行錯誤していたんですけれど、どうしても混ざってしまうということになった。でも、僕以外のふたりは焦りながらも落ち着いていました。

── 結局どう対処したんでしょう?

こうき もともと6曲か7曲ぐらいの予定だったセットリストを4曲に減らしました。シーケンスなしでもできる曲が1、2曲ぐらいしかなかったので、やる曲も変えて。

こた 僕も踏ん切りをつけて「何もできずに格好悪く終わるよりは、何としてでも曲を届けて終わりにしないと」という覚悟を決めて挑んだライブだったので。いい意味で普段と違った気合いの入り方でした。

こた

── 結局シーケンスなしでやったということだったんですね。

こうき 今年はインストアライブを回っていたので、そのときにやっていた曲をやりました。僕らが積み重ねてきたものから引き出せたという。で、こたはその場ではめちゃくちゃ落ち込んでいたんです。自分の機材のトラブルで思い通りのライブができなかったと思い込んでいたので。だからそのときは言えなかったんですけど、僕は逆にものすごく大切な日だったなと思っています。特に今の自分たちはライブハウスでやっているので、シーケンスありきでもどうやってライブらしさを出していくかということに挑んでいかなければいけないと思っていて。その中で自分たちに何が足りなかったかを掴めた日だったと思います。それ以降のライブでも、あの日が基準になったような気がしていて。もちろん、いろんな曲を演奏するためにシーケンスの機材は必要なんですけれど、トラブル補正がかかっていなくても、あれぐらいの熱量を出さないといけない。そうじゃないと「ココラシカのライブはヤバいね」とはならないなと思ったので、この日を基準により良いライブを模索できるようになりました。

── らなさんはどうでしたか?

らな トラブルがあって、やっぱり本来用意してきたものをみなさんに万全の状態で見せたかったのにそれが叶わないという悔しさがありました。でも、その悔しさが「どうしても伝えたい」という思いに変わって、それが演奏やステージングに現れたライブになったと思っています。ただ演奏するのではなく、「伝えたい」という気持ちを全面に出していくことがいかに重要なのかを再認識できた。曲やライブのクオリティを上げるためにシーケンスは活用しつつも、目の前のお客さんに自分たちが伝えたいという熱意を100%込めてやることが大事だと気づけた、すごく意味のある日になったなと思っています。

── 今年のココラシカはインストアライブとかショッピングモールのようなアウェーの場でのライブ経験が多かったですよね。それがなかったらきつかった?

こうき そうですね。アウェーの場でうまくお客さんが集められない瞬間もあったんですけれど、頑張ってそこを乗り越えてきた経験が今ここで活きるんだという実感がありました。それが感慨深くて、苦しい時期があっても頑張っていこうと思いました。

── 2025年を振り返っての話も聞かせてください。メジャーデビューを経て、その後には地道なライブも繰り広げてきた。どんな一年だったと思いますか?

こた 転換期だったなと思っています。5月にメジャーデビューして、その後にもインストアだったり、それまでやらなかったことがたくさんあった。いろんな経験値がそこら中に落ちていて、それを一つひとつ拾わせてもらえた実感がありました。心境が変わる時期も多かったと思います。

らな 私は、地に足をつけて積み重ねてきた一年だったなと思っています。アルバムをリリースしていろんなところでインストアライブをしたり、路上ライブもやって。今までしてこなかったけど、訓練というか、修行になるようないろいろな体験をした。自分たちの底力を上げられた一年という意味で、積み重ねられたなと思います。

こうき 僕は、自分の内面と向き合ってきた一年だったなと思っています。例えばライブにおいても、3月に初めてワンマンライブ『三原色』があって、そこからスキルアップのためにもたくさんライブに出て。その後も制作をやりながら、インストアを回ったりして、自分たちの底力を上げてきた一年でした。楽曲制作においても、今自分がこれを感じているからこれを表現したいとか、今自分がこう思っているからこういう曲が生まれてくるというのを突き詰めてきて。その根本的なところは今までもこれからも変わらないんですけれど、これからはお客さんと向き合うような動き方をしていかないといけないなと考えています。ライブも含めて、よりリスナーに届けるというところを意識してやっていきたい。そう思う上で、今年はすごく自分と向き合ってきた一年だったなと思います。

── 今回の「白い嘘」はどういうモチーフがとっかかりになったんでしょうか。

こうき まず、ものすごく軽いピアノだけのデモがパッと自分の中で浮かんできて。そこにすごくクリスマスの香りを感じたので、クリスマスのタイミングに出せたらいいなというのを提案してリリースに至りました。最初の段階から、自分がこういうサウンドを作りたいなというところから始まっています。

── まずこの6/8拍子のピアノリフがあったということですよね。どうしてそこにクリスマス感を感じたんでしょうか?

こうき 持論なんですけれど、やっぱりキリスト教のゴスペルっぽさがクリスマスっぽさにつながるんじゃないかという認識があります。今回もゴスペルっぽいサウンドのデモだったんです。

── 世の中にはクリスマスソングがたくさんありますが、何かリファレンスはありましたか?

こうき 王道のクリスマスソングを夏終わりぐらいに聴きまくりました。たとえばポール・マッカートニーの「Wonderful Christmastime」とか、古いものも新しいものもプレイリストで聴いて、特にアレンジで参考にした部分が多いですね。

こうき

── アレンジはどんな風に進めていきましたか?

こうき 王道なクリスマスソングを意識しました。変にひねりすぎてクリスマス感がなくなるよりは、クリスマス感をしっかり保った上で、自分たちらしさをどう出していくかという考えで進めていきました。

── スレイベルは使う、と。

こうき はい。この曲のために買いました。

── クリスマスソングって、王道とテンプレがすでに存在するわけですよね。言ってしまえばレッドオーシャンである。世の中にたくさんある。その中で自分たちらしさを出すのは難しいのでは?

こうき 自分たちらしいクリスマスソングを出すというより、自分たちのキャリアの中でクリスマスらしさを出すという考えの方が近かったです。レッドオーシャンの中で戦いを挑むというよりは、自分たちというキャリアの中で、こういう一面を見せてみたいというところを意識して作っていました。

── 自分たちのどういう面を見せようと考えましたか?

こうき 僕は、今回の曲はメロディがポイントだと思っています。サビのメロディの跳躍とか、裏切っていくような展開が個人的には気に入っていて。あくまでガワとしてクリスマスソングを作っているけど、そういうメロディ的なこだわりが詰まっている気がしていて。同じサビのメロディでも場所によってコードを変えていたり、1曲としての濃さが詰まっている曲になっていると思っていて。そういう根幹の部分を保ちつつ、ガワとしてクリスマスソングを演出していくというところが、いつもと違うサウンドになったかなと思います。

── 曲のモチーフとしては、伝えられない思い、やるせなさが描かれていますよね。今ココラシカがラブソングを書くにあたって、こういうもどかしさのイメージが生まれてくるのはなぜでしょう?

こうき 恋愛ソングを求めている人って、好きという気持ちよりも、好きという気持ちの裏にあるもどかしさを代弁することを求めている人が多いと感じます。そこを音と歌詞で表現していきたいというのがありました。もどかしさって「もどかしい」と言葉で言ったって代弁できなくて。だからこそ、まわりくどく、かつ的確に伝えていかなければいけない。そこは音でもサウンドでもこだわっています。

── この曲は後半の展開が聴かせどころになっていますよね。特にブリッジからラスサビに向かってのアレンジは、徐々に階段を登っていくような熱量が表現されている。このあたりはバンドでも意識が共通するところがあったんじゃないかと思うんですが、どうでしょう?

こた この曲はブリッジが落ち着いていて、そこからぐわーっと上がってサビに入っていく展開で。ある種のラストスパートというか、曲としての一番聴かせたいポイントというのがよく分かるサウンド感になっていると思います。機材の話なんですけれど、僕が使っているシンバル類がマイネルの“バイザンス”というシリーズで、それが思いのほかクリスマスという冬のサウンドにマッチしていたんです。雑味がある音なんですけれど、そのノイズみたいなものが、最後のぐわーっと上がっていくところで出ている。それがサウンド的にも、もどかしさとか秘めている思いみたいなものを、際立たせてくれているのではないかなって、ドラマー目線では思っています。

らな こうきの歌とピアノだけになって落ち着くところから、曲の心情としては、今日この時間が終わってほしくない、このまま終わらせたくないという思いが詰まっている場面で。そこから込み上げてくる思いが押し寄せてくる。そういう雰囲気がある場面で、自分たちも一番この曲で熱い思いを込めると決めていました。ベースも高音で柔らかいフレーズをメロディアスに弾きながら、その後みんなでリズムを揃えてどんどんボルテージが上がっていく感じにして。そこからサビで解放するという。演奏のノリ方というか、力加減みたいなものを意識して演奏しました。

らな

こうき テクニック的に上手い人は他にもたくさんいるんですけれど、ふたりの演奏は楽器の歌わせ方がすごく上手いんです。曲の解釈に対しての熱の入れ方とか、そういうところが最初からココラシカの武器だったので。この曲も決して難しいことはそこまでしてないんですけれど、ただ上手に演奏するのではなくて、パッションを込めて、曲に入り込む人たちという感じなんです。そこに3人らしさが出せている。その上でクリスマスソングとしてガワを固められている。そういう感じが、このバンドの強みだと感じています。

── 歌詞については、どういったところを意識して書いていましたか?

こうき Aメロは情景を描写すること、サビではフレーズごとの説得力みたいなものを意識しました。ただ、今回はクリスマスソングの要素を歌詞に出しすぎると、それこそレッドオーシャンに自ら足を突っ込むみたいになってしまう。それはちょっと違うと思って。あくまでクリスマス感はあるけど、冬の恋愛ソングというぐらいの位置付けにしようという中で、クリスマスっぽい感じを演出したらいいなと。なので、これは一晩の出来事として捉えられるような歌詞の内容にしています。

── というと?

こうき 1番のAメロの「灯が騒ぐ 改札前で あなたを待っている」から、2番のAメロの「灯が残る 静かな街で」というのが、同じ夜の集合したときと帰り際を表していて。一晩の中で物語を描いているんです。それがクリスマスの一夜とも捉えられるというか。その中で恋愛のもどかしさみたいなところを軸に言葉を選んでいくところを意識しました。

── 夜更けへと時間が経過していく中でのふたりの気持ちを描いている。

こうき そうですね。最初に「手袋を忘れたよ また嘘を話し出す」という歌詞があって。それが最後に「手の震えさえ気づかないまま」となる。この曲はタイトルにもある通り嘘がテーマなんですけれど、それは相手に本当の気持ちを伝えたいけど伝えられないから嘘ってことにしちゃおうかな、という嘘。それがラスサビや落ちサビで言っていることで。冗談みたいに「手袋忘れちゃったよ」という嘘をついたけれど、でもそれは本当に手袋を忘れたんじゃなくて、手を繋ぎたいから手袋をしてないだけ、という。そういう表現をラスサビまで引っ張ったりしている。そういうストーリー性を意識して描きました。

──「白い嘘」というタイトルは、最初からありました?

こうき そうですね、冗談みたいなところに誤魔化したいということと、冬ってやっぱり息が白くなるから、嘘が白く消えていくみたいな歌詞にしたいなという。そういう大枠のイメージは序盤でありました。

──「白い」という形容詞と「嘘」という言葉を組み合わせることで「きれいな嘘」みたいなイメージを醸し出している感じもありますよね。

こうき 自分も作ってから、後々になって気付きました。「真っ赤な嘘」とも言うよなって。白って「潔白」という言葉もあるし、それが嘘とかけ合わさっているのは面白いなって。

── わかりました。最後にライブについての話も聞かせてください。来年1月にはShibuya eggmanにてワンマンライブが控えています。今年3月の初ワンマンライブ『三原色』からは、だいぶ違うバンドの今を見せられるものになると思いますが、どんな場になりそうでしょうか?

こうき 前回は、ワンマンに向けて自分たちを変えていったところが大きくて。シーケンスがある曲とない曲がバラバラだから、自分たちを一回まとめる作業が多くて。そこから今回のワンマンライブでは、無理にテコ入れをしないイメージで進めています。今までリリースしてきた曲の良さをどう素直に出せるかを意識しているところがあって。あとは、これまで自分の内面と向き合ってきたところが大きいというのは「10代のうちにどれくらいできるか」ということを考えていたんです。アーティストとして、10代という限られた時間の中でどこまで何を表現できるかというチャレンジを自分の中でしていたところがあって。個人的にはそこに区切りをつける節目だと思っています。

らな いろんなライブをやったり、いろんな経験をしていく中で、本当にライブに大事なものって何だろうということがちょっとずつ見えてきて。機材トラブルがあったけどシーケンスなしでも伝わるところがあったり。テクニック的なところもひとつの要素ではあるけれど、それよりも自分たちがお客さんに何を伝えたいのかを、ちゃんと音に乗せて、気持ちを込めてライブを届けることが大切だというのがこの1年間で認識できたんです。だから次のワンマンライブは、ちゃんと自分たち自身が伝わるライブにしたいなと思っています。

こた 前回のワンマンは、個人的には背伸びをしたワンマンライブだったなと思っています。演奏技術的にも「これができたらかっこいい」とか、そういうことにエゴを出していた時期で。そこから少しずつ地に足を着けて立っていくような時期を経たので、そういうワンマンライブになるんじゃないかなと考えています。成人式を絡めた「乾杯」というテーマで、背伸びをするよりも、本当の自分たちをさらけ出したい。今の自分たちを素直に見せて、それがかっこいいと言えるようなワンマンライブにしたいなと思っています。

<リリース情報>
デジタル・シングル
「白い嘘」
配信中

「白い嘘」ジャケット

配信リンク:
https://cocolashika.lnk.to/Whitelie

<公演情報>
ココラシカ 2nd ワンマンライブ『~乾杯~ココラシカ成人式ワンマンライブ』

2026年1月17日(土) 東京・渋谷 Shibuya eggman
開場 18:00 / 開演 18:30

【チケット情報】
前売 3,000円 / 当日 3,500円 / 成人割チケット 2,000円
※ドリンク代別
※成人割チケットは2005年4月〜2006年3月生まれの新成人が対象

ココラシカ オフィシャルサイト

https://cocolashika.com/

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