Diosの全国ツアー『Dance With Your Ghost』が12月9日東京・Zepp DiverCityでツアーファイナルを迎えた。10月にリリースした3rdアルバム『Seein' Your Ghost』をひっさげて繰り広げられたライブは、Diosというバンドが今、とてもいい状態で音楽を鳴らせていることを物語る、とても自由で開放的なものとなった。その模様をレポートする。
と、ここでIchikaが「ササマリ、言いたいことがあるんでしょ?」と水を向け、ササノから結婚の報告。オーディエンスからの祝福の拍手が、会場をあたたかく包み込む。そのムードのまま次の曲へ――とはいかない。「結婚はずっとふたりで連れ添っていきますよって誓いなわけじゃないですか。でも『今日はあなたでもいいんじゃないか』みたいな気持ちで、一晩だけ船にそっと揺られる、みたいな日があってもいいですよね?」というたなかの言葉から披露されるのは「One Night Cruising」。ササノのムーディなピアノを起点に、少し妖艶で大人っぽい世界が広がる。流れるようなたなかのフロウは、まさに海の上で揺れる船のようだ。さらにたなかのソリッドなラップが響き渡る「ラブレス」へ。彼の声に合わせてオーディエンスからも声が上がる。続く「花束」でもシンガロングが巻き起こり、場内には濃密な一体感が生み出されていった。
そういえば最初のMCで「後半に激アツゾーンがある」とたなかは言っていたが、その言葉どおり、ここからライブはどんどん熱を高めていく。音が火花を散らしながらぶつかり合い、転がっていくような「アンダーグラウンド」ではMCで一息ついた空気に喝を入れると、「本格的に踊る時間がやってきました」と「Loopback」へ。ジャジーでトライバルなリズムに会場が揺れ、クライマックスに向けてボルテージはぐんぐん上がっていく。ここで演奏されたのが、たなかが『Seein' Your Ghost』のなかで一番好きだという「醜形の女神」。軽快な二拍子のリズムが醸し出すダークファンタジーなムードに、「誰も愛してくれないから、逆に愛してあげようと思ったんだ」というたなかの言葉どおりの哀愁が滲んでいた。
Ichikaのギターに歓声が湧いた「Virtual Castle」を終えると、「めっちゃ楽しい! みんな、やりますね」とたなか。Ichikaは「だいぶ、ここまで来た感がありますね」と過去に思いを馳せ、ササノも「本当にライブをやっているっていう気持ちです」と手応えを口にする。Diosが結成されてから、来年で6年。その歩みのなかで着実に前進してきた3人の実感が、言葉の端々から伝わってくる。そして次の曲を紹介し始めるたなか。音楽を作るときは「俺じゃない世界を俺の視点で描く」というのが基本だという彼が、ぼくりりとしてデビューして10年を経て、自身の半生を振り返って書いたという、アルバムのタイトル曲「Seein’ Your Ghost」。張り詰めた空気のなか、言葉を紡ぐたなかの姿に、オーディエンスの視線が注がれる。〈名前を捨てようがおれはおれだった 鍵を解いた〉――その境地に辿り着いた今だからこそ、Diosのライブもこれほどオープンな空気を感じさせるものになったのだろう。