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【ぴあテン:ステージ】ぴあ執筆陣が選ぶ2025年のマイベスト

「ぴあアプリ/WEB」ステージジャンルでご執筆・ご出演いただいている皆さまに、2025年のステージ公演から私的ベスト10をあげていただき、特に印象に残った作品についてコメントをいただきました。今年も演劇、ミュージカル、歌舞伎、2.5次元、アイスショーとさまざまなラインナップとなりました。さらに2026年に期待している公演や俳優などについても教えていただいています。今年の振り返りと2026年の鑑賞計画に、ぜひお役立て下さい。

「待ってました」の1年だった。歌舞伎の三大名作『仮名手本忠臣蔵』『菅原伝授手習鑑』、そして『義経千本桜』が歌舞伎座で通し上演された。そして八代目尾上菊五郎が誕生。七代目とふたりの菊五郎が並び立つ時代に。一方で、原作は結構マニアックな内容と思ったが、映画『国宝』が大ヒット。歌舞伎への関心が集まったのはうれしい。松竹座の閉館が発表され、国立劇場の再開場についてはまだまだ迷走が続く。

歌舞伎座で三大名作が通し上演された。前年に定式幕の一色ずつを使った3種の仮・仮チラシが出た時からずっと楽しみにしていた。その三作全てに出演した片岡仁左衛門さんをはじめとするレジェンドから、今脂の乗っているトップランナー達、次世代を背負っていく花形、さらにその次の世代まで、また、この人でこの役を見たい!と思わせる脇を固める腕っこき……そんな皆さんがぶつかりあって受け継がれていく役の数々。それぞれAプロBプロという2パターンの日程が組まれ、「どうする?いつ観る?どちらを観る?」「当然全てだ」「問題は何度観るかだ!」と自問自答した歌舞伎ファンも多いはず。

5月から始まった八代目尾上菊五郎襲名、六代目尾上菊之助襲名、その披露興行。豪華な顔ぶれに華やかな演目も揃って、もういくつ目があっても足りないし何度観ても全然足りない!

そして映画『国宝』。ふたりの売れっ子男優が全身全霊で歌舞伎に向かい合ったその熱量が伝わってくる作品で、その波及効果を劇場のあちこちで感じた。

最後に。片岡我當さんが逝去。我當さんの『沼津』の平作が大好きだった。そして片岡亀蔵さんの突然の訃報。数日後にインタビューさせていただくはずだった。赤っ面の敵役の手強さが素敵で、『野田版 研辰の討たれ』のからくり人形に、息ができないほど笑い転げたばかりなのに。

1月に『双仮名手本三升 裏表忠臣蔵』でスピーディに忠臣蔵の世界を駆け抜け、3月には「大序」から「討入り~引揚げ」まで通し上演。9月にはあまり上演されることのない二段目、重厚な九段目が上演された。これでまた数々の役が次世代に受け継がれたことだろう。歌舞伎だけではなく現代劇にも忠臣蔵ものが多かった。

そして芝居者や芝居好きが思わずグッとくるメタシアトリカルな2本を。11月には東銀座の歌舞伎座で『歌舞伎絶対続魂』、すぐそばの新橋演舞場では『爆烈忠臣蔵』が上演されているのが胸アツだった。『歌舞伎絶対続魂』では『義経千本桜』「四の切」への、そして『爆烈忠臣蔵』では『仮名手本忠臣蔵』への、それぞれ重ための愛をそこかしこで感じた。観客も含め、どうかしているほど芝居がなくては生きていけない者たちへのご褒美のような時間だった。

また『刀剣乱舞 東鑑雪魔縁』では、客席降りした若手の役者たちを見る刀剣女子たちの眼がみるみるハートになっていくのを目の当たりにし、心の中でガッツポーズ。少女マンガ『日出処の天子』の厩戸王子と蘇我毛人が能・狂言でついに3次元となったことにもブラボー!だ。恐るべき二十歳、市川染五郎さんからも目が離せなかった。そんな今年を鮮やかに締めくくったのが師走の歌舞伎座『丸橋忠弥』。尾上松緑さんを軸とする大立廻りの見事な連携プレーに「息もつかせぬ」とはこのことだと。その帰り道、興奮さめやらぬまま3駅分歩いてしまった。

11月歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」『歌舞伎絶対続魂』特別ビジュアル

●2026年のステージはこれに期待!

昭和40~50年代生まれの働き盛りの顔ぶれによる真向勝負の競演・共演がもっと観たい。三代目尾上辰之助襲名披露も待っている。さらに、ここしばらく上演されていない演目をぜひ。例えば
『新薄雪物語』
『網模様燈籠菊桐』
『其小唄夢廓』
『勧善懲悪覗機関』 などなどだ。
いまやコンプラにひっかかりそうなものもありそうだが、そこを何とかクリアしていただいて上演にこぎつけてほしい。「何か観てはいけないヤバい世界を観てしまった」……それぞ歌舞伎の楽しみだと思うので。

昨年同様の書き出しで「今年の演劇界を総括するには観劇数も力も足りない」のは変わらないのですが、その力には“財力”の占める割合が大きいと痛感する昨今。高騰する観劇料金に苦悩し、それにも関わらず完売で人気舞台を見逃す痛恨に身悶えしながらのラインナップです。

アイスショー『プリンスアイスワールド』は2023-24シーズンから菅野こうめいさんが演出を担い、ミュージカルの名曲とフィギュアスケートという抜群の親和性を持つ組み合わせで構成。『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『ジキル&ハイド』などからお馴染みのナンバーを揃え、心ときめく名シーンの数々が氷上の舞台を彩りました。3シーズン目の今年はその集大成でもっと多くのミュージカルファンの方々に観てほしかった……のですがまだ間に合います! 新年1月9〜12日の東京公演にぜひ駆け込んでいただきたい。

韓国版『楽屋』はプロデューサーのキム・テヒョンさんが劇作家の清水邦夫さんから脚色の許可を得て、韓国の小劇場で上演して絶賛された作品。韓国の世相や情緒を取り入れた脚色が斬新で、日韓演劇交流の爽快な一歩を感じた舞台でした。韓国ドラマ好きなら誰もが知る“お母さん役”、ソン・オクスクさんの快演に拍手。

『紅い落葉』はトマス・H・クックの傑作ミステリー小説を原案に、韓国気鋭の劇作家キム・ドヨンさんが脚本を手掛け、白井晃さんが演出したリーディング公演。ひとりの少女の失踪事件によって、ある家族の崩壊していく様をスリリングに描いた群像心理劇です。別所哲也さん、朝海ひかるさん、音月桂さんなどの豪華キャストによる緊迫の掛け合いがラストまで加速し続け、激しく感情を揺さぶられた濃厚な2時間。シアタートラムでわずか2回の上演はあまりに貴重でした。来日した韓国クリエイター陣と白井さんは意気投合、次なる展開が期待できそうです。

あたらしい国際交流プログラム リーディング公演『紅い落葉』(撮影:宮川舞子)

*これも良かった!*

●2026年のステージはこれに期待!

主人公が“60代の女性で殺し屋”ですよ。このパワーワードに惹きつけられずにいられましょうか。原作小説が確かな評価を得ているとはいえ、それを舞台化してしっかり成果を出す韓国ミュージカル界の強気と底力には羨望しかない。で、日本版ははたして!? 花總まりさん主演、一色隆司さん演出のミュージカル『破果』に大注目です。

2025年の演劇界は翻訳劇、ミュージカルに秀作が多く、外国人演出家に圧倒された年だった。日本の演出家では栗山民也、藤田俊太郎が健闘。歌舞伎界では八代目尾上菊五郎、六代目菊之助が誕生。市川染五郎、市川團子、尾上左近という若手が急成長し新風を送り込んだ。

『ラブ・ネバー・ダイ』は主演ファントムが市村正親、石丸幹二、橋本さとしのトリプルキャストだったが、市村が魅力に満ちた。劇団四季での『オペラ座の怪人』から自身の存在の哀しみ、運命に抗う表現を歌に込めて深めていた。クリスティーヌの笹本玲奈も美しさ故の悲劇を好演。そしてサイモン・フィリップスの演出が空間を余すことなく上下左右に埋めてお見事。再演ミュージカルでは2025年のベスト1だと評価している。

『きらめく星座』は井上ひさし氏の傑作戯曲であるのみならず、劇団こまつ座による上演は何回繰り返しても、見るたびに新たな発見がある名舞台だ。出演者全員がガスマスクを被った幕開け。軍を脱走し全国をさまよう長男を必死に隠す工夫を凝らす一家と下宿人。差し入れの卵一個をスキヤキか卵かけご飯で食べるか皆で揉める。舞台がレコード店オデオン堂。市川春代が歌う「青空」の生ピアノ演奏に乗って一家の合唱、ダンスは戦時下でも明るく生きようとする庶民の抵抗なのだ。広大な宇宙、そこに浮かぶ地球、そこに生きる人間たちは争いばかりに夢中ではないか。店の主人の妻・ふじが松岡依都美、憲兵伍長・木村靖司が精彩を放った。栗山民也の演出がむずかしいことをやさしく、やさしいことを面白く、井上氏の真骨頂を送ってくれた。

三月大歌舞伎『通し狂言 仮名手本忠臣蔵』は松竹創業130周年と銘打ち、義太夫狂言の三代名作一挙上演の第1弾。一挙上演は30年ぶりという画期的な企画だった。その中で片岡仁左衛門が国宝級の芝居で沸かせた。Aプロ、Bプロに分かれて歌舞伎俳優がほぼ総掛かりの演出。仁左衛門は昼のAプロで「四段目」の大星由良之助、夜ではBプロ「七段目」と「十一段目」の由良之助。「四段目」は塩冶判官切腹の場、表門城明渡しの場。「七段目」は祇園一力茶屋の場、「十一段目」が討入りの場。仁左衛門は特に「四段目」が素敵にいい。判官の尾上菊之助、由良之助の松緑、平右衛門の松也も大健闘。続く9月の『菅原伝授手習鑑』、10月の『義経千本桜』と好成績。映画『国宝』の人気を追い風に義太夫狂言の通し企画は大きな意義があった、と思う。

ミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』より、ファントムを演じる市村正親

*これも良かった!*

●2026年のステージはこれに期待!

2026年で注目するのは1月(愛知・大阪は2月)にシアタークリエで上演される『ピアフ』上演15周年記念。大竹しのぶが歌う姿は圧倒的だ。歌舞伎なら「團菊祭5月大歌舞伎」尾上左近が三代目尾上辰之助を襲名披露する。「寿曽我対面」の五郎、「鬼一法眼三略巻 菊畑」の虎蔵が襲名演目。急成長の若武者に期待する。

『PLAY』はとにかく自由で楽しくて美しくて客席と舞台が一体となる遊び場が劇場に展開されたことが思った以上に心躍る体験となりました。新国立劇場中劇場の構造も生かされていてあと何回か見たかったくらい。

『鼻血―The Nosebleed―』はアメリカで活動しているアヤ・オガワさんの作・演出舞台。入場の際に鉛筆と紙を渡されて、観客参加型の舞台なのなぁーとちょっと気が重くなったのですが、芝居の途中に観客に問いかけがあったり舞台に上がって手伝ったり、もう会うことのできない大切な人への質問を紙に書いたりしているうちにアヤさんの自伝的作品から完全に自分自身の物語となりセラピーを受けた気持ちになりました。大切な経験でした。

『爆烈忠臣蔵』は劇団☆新感線45周年興行で、古田新太さん、橋本じゅんさん、高田聖子さん、粟根まことさんをはじめとする劇団員と元劇団員の橋本さとしさん、羽野晶紀さん、準劇団員とも言える早乙女太一さん、向井理さんに映像出演の木野花さん。そして主役は小池栄子さんと豪華な顔ぶれ。忠臣蔵、海外ミュージカル、そしてセルフパロディーのシーンに楽曲もたっぷりで思いっきり笑えます! しかし、根底には役者とは何か、なぜ芝居をするのかという熱い気持ちが流れていて新感線の決意表明のようでジーンとしました。

『季節』は劇団普通の新作。他の舞台にはない、思い切ったシンプルな演出に登場人物の心模様が投影されて笑いながらもひたひたと孤独が迫りました。全編茨城弁。居間で繰り広げられる親戚たちの会話が懐かしい自分の思い出を引き出して切なくなることしきり。野間口徹さんの新たな一面を楽しめました。そして、新たな一面といえば中島亜梨沙さん(元宝塚歌劇団娘役の葉桜しずくさん)をまさかの役で起用。すごかった。二度見しました。作・演出の石黒麻衣さん、注目です。

『SIX』は暴君ヘンリー8世の6人の妻、王妃たちによるイギリス生まれのミュージカル。最初にイギリスキャスト、続いてオーディションで選ばれた日本人キャストによる上演がパワフルでかっこよくて痺れました。最後の一曲のパフォーマンスを撮影可にしたことでSNSで火がついたことも成功の一因かと思います。その日本人キャストが本場イギリスで公演する大快挙にも拍手。

『ガラスの動物園』は青年団の俳優、佐藤滋さん主催の滋企画。演出はヌトミックの額田大志さん。色々なバージョンを何回も見ている『ガラスの動物園』ですが、ずーっとなんだかよくわからない家族の話だなぁと思っていたのに、この滋企画版はその家族をすごく近くに感じることができました。すみだパークシアター倉の空間を生かした美術、照明も素晴らしかった。

三谷文楽『人形ぎらい』。国立劇場が閉じてしまい東京で文楽公演を観る機会が減ってしまいそうななか、三谷幸喜さんが三谷文楽第二弾として作った、文楽の初心者から通までが満遍なく笑って楽しめる文楽舞台となりました。文楽人形の可能性は無限大ですね。太夫さん、三味線さんの凄さも存分に味わえました。

『マスタークラス』。この作品、名前は知っていたものの実際に見るのは初めてでした。映像などで黒柳徹子さんのイメージが強くありましたが、今回は元宝塚雪組トップスターの望海風斗さんがマリアカラスで、演出は森新太郎さんになり、構成、演出も一新されました。
登場から半端ない空間掌握力。
オペラもいけるのではと思わせる歌唱力と男役で培ったセリフまわしと存在感で観客の集中力を途切らせることなく走り抜きました。望海さんは『エリザベート』でも遺憾無く実力を発揮。まさにお見事の一言でした。

『われわれなりのロマンティック』はいいへんじの最新作。もし、私が大学生でこの作品に出会っていたら生き方変わったかもなぁと思いました。客層も若い人が多く熱気もありました。(会場となった三鷹市芸術文化センターのシリーズ)「MITAKA“next ”selection」は過去にも優れた劇団を取り上げており、小劇場ビギナーにとって心強い味方。

2025年の片岡仁左衛門さん。
三月『仮名手本忠臣蔵』の大星由良之助
四月『彦山権現誓助剱』の六助
七月『熊谷陣屋』の熊谷次郎直実
九月『菅原伝授手習鑑』の菅丞相
十月『義経千本桜』のいがみの権太
今年も本当に素晴らしい活躍ぶり。どのお役も仁左衛門さんの演出の工夫と役のこころが通い歌舞伎を観る喜びを与えてくださいます。

2025年劇団☆新感線45周年興行・秋冬公演 チャンピオンまつり いのうえ歌舞伎『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』より (撮影:田中亜紀)

●2026年のステージはこれに期待!

2026年注目なのは市川染五郎さん初めてのストレートプレイ『ハムレット』
しかも、演出はデヴィッドルヴォー! ハムレットの母ガートルードに元宝塚花組トップスター柚香光さん! すごい目力の強い親子。染五郎さんのビジュアルが発表になっていますか斬新ですよね。シェイクスピア繋がりでいうと、吉田鋼太郎さんの『リア王』 も注目。『ハムレット』『リア王』の上演が続く演劇界。埼玉彩の国シェイクスピアシリーズで演出を務めた吉田鋼太郎さんを長塚圭史さんが同演出するのか楽しみです。

宝塚OGの方々の舞台はやはり注目。退団後初舞台の礼真琴さんの『バーレスク』は他のキャストの発表も待たれます。三谷幸喜さんの新作ミュージカル『新宿発8時15分』には天海祐希さん。彩風咲奈さんは『天使にラブ・ソングを〜シスターアクト』を森久美子さんとダブルキャストで。意外でした。そして『クワイエットルームにようこそ』がなんとミュージカルに。今年はケラさんの『最後のドン・キホーテ』でも素晴らしかった咲妃みゆさんが今度は松尾スズキワールドへ。楽しみ!

そしてドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』の脚本を担当した劇団アンパサンド安藤奎さんの第69回岸田國士戯曲賞作品『歩かなくても棒に当たる』再演が2月にあります。ぜひ! 演出家稲葉賀恵さん、翻訳家一川華さんのユニット“ポウジュ”にも期待しています。

近年は舞台連動でのドラマが続々と増え、今年もドラマ放送スタート時から『gift』 『UNREAL-不条理雑貨店-』『藤色の封筒』『セラピーゲーム』などの舞台化が発表されました。これまでも『あいつが上手で下手が僕で』など舞台連動ありきの企画はありましたが、これから益々定着していくかもしれません。 梅棒 20th Breakdown『FINAL JACKET』
ダンスエンターテイメント集団・梅棒。2001年より活動する彼らは“踊りは気持ちだ!”をコンセプトにJ-POPにのせて、楽しくコミカルに、ときにシリアスに、ストーリーを表現していくダンスパフォーマンス集団です。セリフも最小限で、わかりやすい例えだとキングオブコント2025のしずるの音楽融合ネタ(「LOVE PHANTOM」)みたいなイメージ。
今作は記念すべき20回公演ということで、ゲストキャストを入れず梅棒メンバーのみの公演も。もちろんダンスも素晴らしいのですが、映像・照明の演出も本当に天才的!!!さらにお客さんも歓声や手拍子で盛り上げる、ショーとしてのエンタメ空間。
2.5次元ではないオリジナル作品ですが、人気楽曲を多数使用しているためアニメの主題歌なども多く、アニメが好きな人もテンションが上がるはず。しかしながら毎回人気のJ-POPばかりで構成されているため配信はおろか、Blu-rayなどパッケージにも残らないという刹那的な作品。劇場でしか味わえないエンタメショー体験になるのです。


ミュージカル「東京リベンジャーズ」#2 Bloody Halloween
リベミュ第2弾作品。「東京リベンジャーズ」はストレートプレイの舞台版もとても熱量が高く丁寧に描かれキャステングも素晴らしいですが、ミュージカル版もワルツのようなダンスなど楽曲が多彩でよりコミカルさなどメリハリを感じられます。
今作は何と言っても圧倒的、場地圭介!!! 圧倒的な場地圭介を感じたかったらこの作品を観てほしい!

原作でも漢気溢れ、強く優しく、東京卍會創設メンバーとして人気キャラの場地。彼を鈴木勝吾が演じるというキャスティングがもう最高。そのビジュアルだけでなく、アクション含め演技力、歌唱力など圧倒的な実力で存在感を放ちます。そしてキーパーソンとなる一虎役を岸本勇太、千冬役を佐藤流司が演じる盤石の采配。ラストの場地と千冬、ふたりで歌う楽曲はミュージカル版ならではの胸が締め付けられる名シーンです。


舞台『文豪とアルケミスト 紡グ者ノ序曲(プレリュード)』
文学書を守るため転生された文豪たちが文学を消し去る侵蝕者と戦うゲームが原案のシリーズ。今作では佐藤永典演じる北原白秋をメインに、彼が戦時中に愛国心や国民を扇動する戦争詩で国に協力し、意図せず多くの命を奪ってしまったことへの罪の意識と苦悩が描かれました。昨年から今年にかけ大きな話題となった「チ。 ―地球の運動について―」でも、本の持つ影響力が描かれていましたが、この作品でも戦争という政治的な動きに巻き込まれ利用されるほど本や文学の影響力を歴史的な事実から感じさせられ、改めて文字で広く伝える、残すという文学や本の存在の大きさを強く感じ、考えさせられる物語となっていました。


『美男高校地球防衛部LOVE!LOVE!』on STAGE
アニメ「美男高校地球防衛部LOVE!」の10周年記念として、10年ぶりにスタッフ&キャストを一新して再舞台化。個人的に原作が好きなので贔屓目評価になりますが、防衛部は本当にスタッフさんの作品愛が素晴らしく、愛の伝播で根強いファンを抱える作品です。

今回の舞台版も村井雄演出らしいゆるいコメディとなっていて、2.5次元作品の重視したい部分は作品として面白いことも大切ですが、それ以上に原作愛だと思います。舞台内容がとてもキレイにまとまって面白くてもキャラや世界観の再現度がおざなりではファンには物足りない。今作ではキャラや原作の空気感がそのまま舞台上に具現化され、客席を巻き込みながら作り上げるヒーローショーのような演出も、まさにみんなで作り上げる愛が溢れる空間となっていました。小劇場のようなアナログ感は逆に新鮮で、特に変身シーンのシルエットの再現には感動!革新的な変身シーンはぜひ確認してほしいです。また、シリーズ初めてステージ上できちんと実現した強羅兄ちゃんと有基のデュエット、VEPPer との歌唱も胸熱。規模感は小さかったですが、舞台化を実現させてくれたことに感謝したいです。

『東京リベンジャーズ』#2 Bloody Halloween より

*これも良かった!*

  • 『ミュージカル「ロミオの青い空」~誓い~』(天王洲 銀河劇場)
    ロミオ役の大薮丘の主人公感! そしてアルフレド役の新里宏太というふたりのタッグが安定感抜群! 和田俊輔氏のさまざまな楽曲も素晴らしく、観劇後も頭の中でリフレインするほど。12月28日まで後編「~絆~」が上演中。
  • 『演劇調異譚「xxxHOLiC」 -續・再-』(シアターH)
    麗しい太田基裕の侑子さん再び……。衣装もステージセットも再現度が高く、妖艶な「xxxHOLiC」の世界に誘われました。
  • 舞台『死神遣いの事件帖 終(ファイナル)』(サンシャイン劇場)
    舞台と映画連動で届ける【東映ムビ×ステ】の5年続いたシリーズ集大成となった本作。シリーズ初めて幻士郎(鈴木拡樹)と十蘭(安井謙太郎)が舞台上で共演。梅津瑞樹の映画版とは異なる意外過ぎるキャラの怪演も衝撃的でした。
  • 舞台『刀剣乱舞』士伝 真贋見極める眼(日本青年館ホール)
    初めて虎徹三兄弟が揃った本作。ラストの三振り揃っての『真剣必殺』シーンも見どころでした。
  • 新ミュージカル「スタミュ」スピンオフ 『MIRACLE REVUE』(天王洲 銀河劇場)
    エイプリルフール企画だった『医療星歌劇』を舞台化。いつもとは違った組み合わせでの歌唱やパフォーマンスが新鮮で、「HEROISM++」など人気楽曲を他のキャラが歌うなど本作だけの楽しみがありました。
  • (番外編:映画)
    漫画実写化でも2.5次元でもありませんが、2025年の舞台関連で外せない大ヒットミュージカル映画といえば『ウィキッド ふたりの魔女』
    日本でも劇団四季版が上演されるなど世界で愛されるブロードウェイ・ミュージカルを元にした本作。どの楽曲も素晴らしく、演出もまるで舞台を観ているかのようなアナログ感あるものから、魔法など映像ならではの表現の融合のバランスがとても良く、まさに映画だからこその完成度!さらに衣装も美術も素敵過ぎる!3時間があっという間に感じるエンタメ体験でした。2026年公開の後編『ウィキッド 永遠の約束』も楽しみです。絶対に映画館で見てほしい!

●2025年のステージはこれに期待!

現在放送中のBLドラマ『セラピーゲーム』(日本テレビ)が1月に舞台化されることが決定しており、同じキャストでどんな物語が展開されるのか楽しみ!
大ヒットした映画『KING OF PRISM -Your Endress Call- み〜んなきらめけ! プリズム☆ツアーズ』も舞台化が決定。謎の少年・神無月アヰの登場シーン、パフォーマンスも気になります。

歌舞伎、劇団四季、宝塚に限って言えば、2025年は新風が吹き込んだ年だったと思います。歌舞伎は社会現象となった映画『国宝』の人気で、新たな観客が急増。歌舞伎座では、松竹創業130周年を記念して三大名作をABふたつのプログラムで通し上演し、加えて野田秀樹、三谷幸喜の作品や超歌舞伎など、硬軟取り混ぜた試みが初めての観客にも好評でした。劇団四季は、日本上演30周年を迎えたディズニーミュージカルのほか、大ヒット映画が原作の新作ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では男性客からも注目を集め、観客層が広がったと思います。また宝塚でも、劇団☆新感線の『阿修羅城の瞳』や、ゲームが原作の『悪魔城ドラキュラ』の上演で、新しい観客、特に男性客が増えた印象です。

八代目尾上菊五郎、六代目尾上菊之助の襲名披露で上演された音羽屋の家の芸『弁天娘女男白浪』は、これまでも七代目菊五郎や、菊之助時代の八代目の弁天小僧で何度も観ていますが、今回の八代目の弁天は、これまで以上に素晴らしかったと思います。大向こうから「たっぷり!」と声がかかった「知らざぁ言って聞かせやしょう」の名台詞も堪能しました。「稲瀬川勢揃い」の六代目菊之助も頑張っていたと思います。坂東玉三郎が加わった3人の花子による『京鹿子娘道成寺』も見応えがありました。

宝塚歌劇花組の『Goethe!』は、珍しいドイツ発のミュージカルで、文豪ゲーテの若き日の恋を、代表作「若きウェルテルの悩み」の誕生と絡めて描いています。全編ほぼ歌で綴られるため、特にゲーテ役のトップスター永久輝せあと、ロッテ役のトップ娘役星空美咲は歌いっぱなしですが、美しいメロディと、演技力に裏打ちされたふたりの歌唱が素晴らしく、胸を打たれました。植田景子の丁寧で繊細な演出も功を奏していたと思います。東京公演初日にドイツのクリエイティブスタッフたちが抱き合って喜んでいたのが印象的でした。

劇団四季『恋におちたシェイクスピア』は、青木豪演出で2018年に日本初演され、今回は再演ですが、前回からキャストがほぼ一新し、ストレートプレイが初めての若いキャストが多かったこともあって、主人公のウィルと相手役のヴァイオラをはじめ、みんなフレッシュで好印象でした。素敵な芝居だと思います。

八代目尾上菊五郎襲名披露 六代目尾上菊之助襲名披露興行「團菊祭五月大歌舞伎」より『弁天娘女男白浪』特別ビジュアル

*これも良かった!*

●2026年のステージはこれに期待!

2026年の注目は、1月の新国立劇場『通し狂言 鏡山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)』と、3月歌舞伎座の『通し狂言 加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ)』が、同じ題材を視点を変えて描いている作品なので、楽しみにしています。3月で『美女と野獣』がクローズする予定の舞浜アンフィシアターでは、8月から『リトルマーメイド』が新たに開幕するのも注目です。半円形の劇場で観る海の世界は、また違って見えるのではないかと思います。

心躍る新作にあまり出会えず、再演や新演出の名作に唸ることの多い1年だった。結局のところミュージカルは、音楽(によって体現された物語)×演出の芸術。素晴らしい音楽は、素晴らしい演出を得て何度でも輝き直すのだ。

ロンドンで観たジェイミー・ロイド演出版『エビータ』はその権化。様々なバージョンで何度も観ている作品だが、今回の演出はいちいち斬新で動悸が止まる隙がなく、ロイド=ウェバーの書いた音符が人格を持って踊り出したかのような振付がとりわけ見事だった。

『レ・ミゼラブル』は、日本版もツアー版も出色の出来。前者では丁寧な演出を受けて各々が真摯に役と向き合ったことがありありと見て取れるキャスト陣が、後者では映像と照明表現の可能性を極限まで追求した新たな演出が、音楽を改めて輝かせた。

三木たかしは、ある意味ではロイド=ウェバーやシェーンベルクにも匹敵するミュージカル作曲家なのではなかろうか。久々に『ミュージカル李香蘭』を観て、その思いを強くした。それだけに、新演出で輝き直すところもそろそろ観てみたい気がするが、それとは別のところで、野村玲子主演による浅利慶太演出版は伝統芸能と呼ぶに値する域にある。

新作では、やはりロンドンで観たディズニーの『ヘラクレス』に最も心が躍った。『レミゼ』『エビータ』のような40~50年選手になれるかどうかはともかくとして、装置と振付と女神たちの描き方が天才的に面白く、いつか日本で上演される日が待ち遠しい。

「ミュージカル『レ・ミゼラブル』ワールドツアースペクタキュラー」より(撮影:岩村美佳)

*これも良かった!*

●2026年のステージはこれに期待!

日本を代表する劇作・演出家である松尾スズキと三谷幸喜が、それぞれの初ミュージカル『キレイ』と『オケピ!』の初演から26年の時を経て、新作ミュージカルを揃って初演する。松尾が宮川彬良と初タッグを組む『クワイエットルームにようこそ The Musical』、天海祐希や香取慎吾ら豪華すぎるキャストが揃う『新宿発8時15分』、どちらも観逃せない。
海外作品では、日本でもやったらいいのにという長年の妄想がついに、しかも信頼する上田一豪の演出で叶う『神経衰弱ぎりぎりの女たち』や、「ついに」と言えばコチラ、2017年にトニー賞を受賞して以来、多くのミュージカルファンが日本版を待ち望んでいた『ディア・エヴァン・ハンセン』の、柿澤勇人と吉沢亮のWキャスト主演という意外な形での実現も楽しみだ。

『千穐楽まで、予定通り公演ができる喜びを、作り手も観客も、決して忘れないようにしたい』

決してまだ完全に収束した訳ではないコロナウイルス、そしてここ数年で一番の猛威を振るうインフルエンザウイルス。実際、具体的な病名や罹患状態は伏せられる形で、「体調不良」と発表されて初日延期や数公演中止になった舞台は幾つもある。もちろん、きちんとした対策を考えないといけないのだが、マスクをして、手洗いをして、今現在やっておくべきことを実行していたならば、それはもう、罹患してしまった人のせいではない。ただ大事なことは、千穐楽まできちんと公演ができる喜びを、作り手も観客も、病気や怪我をしていない時から、決して忘れないようにしたいということである。必要以上に警戒し「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」必要は無い。けれど、座組がきちんと揃って稽古が進み、小屋入りが叶い、初日の幕が開き、千穐楽の幕を降ろすことが出来ることへの有難さを、今一度しっかりと胸にしていけたらと思う。そして観客の側も、チケットを購入したその日のその時間に客席で普通に観劇できる喜びに、今一度思いを馳せたい。幕が開くことは当たり前ではない。予定通り千穐楽に幕を降ろすことも当たり前ではない。何事も無く公演が終わったとしたら、それは僥倖であり、奇跡なんだと思いたい。その上で、その奇跡をくぐりぬけ、素晴らしい舞台を産み落としてくれたカンパニーが数多くあったことに、ただひたすら感謝したい。実際、今回10作品を選ぶのは至難の業であって、選ばせてもらった作品以外にも、泣く泣く候補に上げることを断念した数十の作品があった。改めて、作品作りに挑んだ方々への敬意と、作り手を支える観客の皆様への敬意を、深く表したい。

ウンゲツィーファ『湿ったインテリア』
演劇でしか表現できないアイデアを散りばめつつ、脚本の細部にまで神経を行き届かせ、劇団の持ち味を失うことなく、刺激に満ちた舞台を創り上げていた。特に、産まれた赤ん坊をワイヤレススピーカーで擬人化することを違和感なく成立させた技量と、決して断定的に語ることなく、微妙に散りばめられたセリフの断片の中から「果たして、本当の父親は誰なのか?」ということを、観客の脳裏に少しずつしのばせていき、最後まで想像力を刺激し続けることに成功した戯曲の切れ味と役者の演技はかなり上質であり、舞台の緊張感を途切れさせることのない演出とともに、秀逸であった。

東京にこにこちゃん『ドント・ルック・バック・イン・マイ・ボイス』
国民的人気アニメの主人公の声を担い続けた声優が、その作品を愛するがゆえに(同志であった)他のキャラクターの声優が変更になる(=声が微妙に変わる)ことへの寂しさや、やがて自らも愛し続けたキャラクターの声を降板する日がくることへの強い悲しみを描いた作品であるが、いつしか、声優の物語を超えて、すべての人生が投影できる深みを持った脚本となっていた。例えばそれは「肉親」であったり「夫婦」であったり「家族」であったり「恋人」であったり「親友」であったり「アーチスト」であったり。あんなに好きだったはずの声なのに、なんらかの理由で離れてしまい、今は新しい声に慣れていく。きっと自分が忘れない限り、その声は(その人は)自分の中で残り続けるのだが、悲しいけれど少しずつ薄れていき、新しい声に慣れていく・・・という様をエンターテインメントに昇華させて描き、秀逸な作品となった。また、すべてのことがAIに凌駕されつつある過渡期に立つ現代において、肉声と、AIによって生成されサンプリングされた声の問題について、人間がどういう立ち位置で臨むべきなのかというテーマも、自然な形で描写しており、見事であった。

劇団普通『季節』
何気ない会話にみえて、そのセリフの研ぎ澄まされ方は凄みを帯びており、時に無自覚に一歩下がって発せられたかみえる言葉が確実に他者への強い要望を内包し、一見遜(へりくだ)っているかにみせる言葉が自らに責任が及ばぬための防衛線となっている様を、幾重にも浮かび上がらせていく筆致は見事と言うほかない。その上で特筆すべきことは、語られたセリフによって「劇中では直接言葉にして語られていない会話が、観客の脳内に浮かび上がっていく」ことであり、さらに、会話の間(ま)が、役者の表情が、自然な体の動きが、登場人物の心象風景を炙り出していく演出力も素晴らしかった。そのクオリティの高さは、6月に三鷹市芸術文化センター星のホールで上演された『秘密』においても発揮されており、『季節』と甲乙付け難い作品が生み出されていた。特に母親役を演じた坂倉なつこにおいて、入院中と退院時と退院した後で、足の運びや声の張りを微妙に変える演技でみせたのが白眉であり、そこに父親役の用松亮が、抑制を効かせつつ、年老いていく悲しさを絡めていき、珠玉の舞台を作り上げていた。

劇団普通『季節』より(撮影:福島健太)

*これも良かった!*

●2026年のステージはこれに期待!

「個々人が、個々人として生まれついた、生きていく上で当たり前のこと」への眼差しが、劇的に変わった気がする時と、何も変わらないという絶望が入り混じって交差する昨今、その本質を見つめようとする作品が増えてきた。それぞれの作家が、ぞれぞれのアプローチを見せる中で、扱われる事象の大きさゆえに十分に抱えきれず、致し方なく「青年の主張」のようになってしまった作品も拝見することがあった。人類誕生以来の重要なテーマで有りながら、当たり前のこととして語られ始めてからの年月は、まだとても浅い。それぞれの作家が解き明かしたい人生を、しっかりと咀嚼し消化し得た作品が、数多く生まれていくことに期待したい。また、「一部の人々において、それをハラスメントだとも思わず重ねられてきた様々なハラスメントに対して、現在、そして未来はもちろん、過去においても、当然の指摘がなされる時代にようやく手が届き始めた」ベクトルが、今よりももっと太い幹となって伸びていく年となることは、人間を描く演劇というジャンルに関わるすべての者の責務であると思う。さらに「やりがいに対してしっかりとした対価を支払うという当然のことに」ようやく時代が追い付き始めたのは素晴らしいことであるが、資材費や人件費を含めたすべての経費が上がり、チケット代も高くなって観客の財布を直撃しており、演劇制作の現場は決して安穏としていられる状況ではない。その環境の中で、演劇が支持され続けるためには、とにかく観客を圧倒するような作品が世に数多く生み出され、お客様に「映画もテレビもネットもいいが、やっぱり生の舞台の魅力は素晴らしい」と思ってもらえることしかない。そういう舞台が増えることを願って、2026年も劇場に足を運び続けたい。