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人気の若手歌舞伎俳優たちが新橋演舞場のお正月公演に出演!「初春大歌舞伎」 対談インタビュー

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チケットぴあ

(左から)中村鷹之資、中村福之助、大谷廣松、中村虎之介

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市川團十郎が贈る新橋演舞場でのお正月公演が、2026年で16回目を迎える。團十郎が“挑戦の場”として大切にしてきた公演だけに、これまで新作や古典をアレンジした「通し狂言」が多かった印象だが、今回は昼の部・夜の部共に古典の名作が並んだ。さらに注目は、進境著しい若手の4人が古典の大役を初役で勤めるということ。「これまで父や先輩から(芸や伝統を)預かる立場だった私が、今度は若い彼らに渡す側になったという気持ちから」今回の配役を決めたという團十郎。抜擢となった大谷廣松、中村福之助、中村虎之介、中村鷹之資の4人に、今の心境と意気込みを聞いた。

昼の部の歌舞伎十八番『鳴神』に出演するのは、廣松と福之助、鷹之資だ。物語は至ってシンプル。朝廷への恨みで滝壺に龍神を封じ込め、雨を降らせないようにしてしまった鳴神上人のもとへ、朝廷から絶世の美女・雲の絶間姫が遣わされる。色仕掛けで鳴神上人を陥落させようとする、歌舞伎ならではの大らかなエロスとユーモラスなせりふ劇が楽しめる前半から、騙されたと知った鳴神上人が怒り狂い、豪快な荒事へと繋がる後半まで、歌舞伎ビギナーでも充分に楽しめる演目だ。

大谷廣松

雲の絶間姫を初めて勤める廣松は、「祖父(四世中村雀右衛門)や叔父(当代の中村雀右衛門)が得意としているのを映像や舞台で観て、本当に綺麗だし、面白い演目だなと思っていました。いつかは勤めたいと思っていたのでお話をいただいた時はとても嬉しかったのですが、それだけに緊張もありますし、いろんな感情が入り交じっています。雲の絶間姫は(歌舞伎の姫によくある)悲しい場面はほぼなくて、少しアダルトな場面もあったりして(笑)、面白さもありつつ、構成も本当によく出来ている作品。衣裳など祖父が工夫した部分もたくさんあるので、そういった部分も含めて楽しんでもらえたら」と語る。

中村福之助

鳴神上人を初めて、かつダブルキャストで勤める福之助は、「昨年は新作歌舞伎で自分の気持ちで役を表現することを学び、今年はさまざまな公演で古典の大きな役を勤めさせていただけたので、とても勉強になった1年でした。中でも、自分の短所だと思っていた“陰”の持ち味が長所にもなり得ることに気づいたことは大きかったですね。鳴神上人にしても高貴な高僧の印象ですが、そこからさらに“余白”を作ることでお客様に伝わるものがあるのではないか、そこに僕の“陰”の部分がどう出るかということを今思っていて。まだまだ“役者で魅せる”には難しい部分がありますが、クオリティにこだわって頑張りたいと思います」と意気込む。

ダブルキャストのもうひとりで、同じく初役で挑む鷹之資もうなずきながら、「父(五世中村富十郎)が何度かやっている作品で、僕も密かにいつかはと思っていたのですが、まさかこんなに早く勤めさせていただけるとは、と身の引き締まる想いです。歌舞伎十八番(初代から4代目までの團十郎が初演、得意にしていた18の作品のこと)には、歌舞伎十八番の作品ならではの魅力というものがあって、福之助さんもおっしゃったように“役者の大きさで魅せる”部分があると思います。ユーモアが感じられたり、色気が漂ったり、それらはにじみ出てくるような“大きさ”があってこそ。今の僕がどこまで表現出来るかという難しさはあるのですが、自分自身の課題と思って取り組んでいきたいです」と緊張気味に語った。

中村虎之介

一方、昼の部で時代物の名作『熊谷陣屋』の源義経と、夜の部では歌舞伎十八番『矢の根』で曽我十郎を勤める虎之介。
「義経は音羽屋のおじ様(七代目尾上菊五郎)に初めて教えていただくのですが、古典の大きなお役をいただいたこの貴重な機会に、しっかり学びたいと思っています。義経も十郎も、自分の“ニン”(その役柄に役者の持ち味が合う)と呼ばれるものに近いと思っているので、このふたつのお役を勤められることが嬉しいです。たとえば義経はニンが色濃く出たほうがやはり“大きい”役になりますし、印象的にもなる。それは十郎も同じですし、お客様から自然に『この役はあの人(役者)がやるのがいいよね』と思っていただけるように、ニンに近づけていく努力をしなければと思っています。(曽我五郎を本興行にて最年少で演じる)市川新之助くんと一緒に頑張りたいですね」と笑顔で語った。

日々精進を重ねる若手4人の関係性は

40代でもまだベテランとは呼ばれない歌舞伎界。32歳の廣松や28歳の福之助、27歳の虎之介、26歳の鷹之資は、まさに「これから」大役を初めて勤めることになるであろう年齢だ。大ヒット中の映画『国宝』の主人公と同じく日々精進を続ける中、お互いの印象は?という質問に、「鷹之資くんは、まっすぐで素直。そして声がいい。踊りが上手い」と早速魅力を挙げ始める虎之介。「なんだか恥ずかしいですね」と照れる鷹之資を見守る3人の図は、本当の兄弟のようでもある。

中村鷹之資

「歌舞伎役者って、全員がいわば幼馴染みなんですよ。幼い頃から一緒に過ごしているし、親戚も多いですし。やっぱり不思議な空間で生きているなぁという自覚はあります(笑)」と廣松。

続けて虎之介の印象を問うと、福之助から「虎之介くんは結構、歌舞伎役者の中では異質なんですよ。ファッションや音楽にも詳しいし、現代人が歌舞伎の舞台に立っているという感じ」という答えが。廣松からも「これから歌舞伎を知ろうという方は、虎之介くんを追っていけばすんなり入りやすいかも」と“推し”にオススメする声も聞かれた。

福之助について、「鳴神上人を勤めると聞いてピッタリだと思ったし、自分にはない魅力を持っている人」と語るのは虎之介だ。福之助は「僕たちは同級生なんですが、ニンが全く違うから、同じ役を取り合うことがなくて平和なんですよ」と本音もチラリ。「ただ仲が良すぎるから、一度険悪な仲になってみたい」という福之助に、「やめてください、後輩が困ります」と鷹之資がツッコみ、笑い合うひと幕も。

そんな3人を微笑みながら見ている廣松については、福之助が「僕は(廣松の兄の)大谷廣太郎さんが大好きなんです」と笑顔で語り出すと、虎之介も「廣太郎さんは優しいし、美味しいお店を教えてくれるし」と続ける。廣松が真顔で「それ、ぜんぜん僕のことじゃないのよ……」とボヤくと他の3人が楽しそうに笑うなど、なにげない会話からも、あうんの呼吸が伝わってくる。一方で、これまで新橋演舞場1月公演での團十郎との共演が一番多い廣松なだけに、稽古場などでは3人が折りに触れて廣松に質問をしているのだとか。

「團十郎兄さんはアイディアが豊富で、“こうしたい”もたくさんあるけれど、本筋はシンプル。それを伝えるのが僕の役目かなって」と笑う廣松に、ふと真剣な眼差しになってうなずく“弟”3人。抜群のチームワークで魅せる新橋演舞場の「初春歌舞伎」。この機会を見逃す手はないだろう。

取材・文/藤野さくら
撮影/藤田亜弓

〈公演情報〉
「初春大歌舞伎」

日程:2026年1月3日(土)~27日(火)
会場:新橋演舞場

チケットURL
https://w.pia.jp/t/hatsuharuokabuki/

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